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第16話 オッサン齢53歳にしてフリーズする。
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ここはダンジョン4階、ゴブリンたちが出るエリアにある小高い丘である。
見晴らしがよく、何かが接近してきたらすぐわかる。
「ハァ、ハァ、ハァ、すまない、こんなつもりじゃ無かったんだが、どうしても我慢出来なくなってしまって」
紅潮した顔彼女に向けながら、荒い息で、可愛らしい女の子に話しかける。
「はい、実は私も欲しくなってました」
彼女もまたほんのりと顔を紅くしていた。
「い、良いんだね」
「はい」
「分かった、じゃあここで休憩しよう!」
「私も喉乾いちゃって、ちょうど良かったです!はい、水!」
「いやぁすまないね、もう少しでレベル上がるのに私がバテてしまって」
レベルが上がってステータスが上がると、その付随として体力も向上する。
ただ、それは俺が思っているよりずっと少なかったようだ。
これまでは、相手の攻撃範囲の外からパチンコで当てて、接近戦も簡易的に作ったブラックジャックもどきで叩くだけの作業だった。
しかし、今は盾術習得の為に2枚のシールドで相手の攻撃を受け止め、慣れない盾で殴りつける。
慣れない事をしているので今までよりずっと手間も体力も使う事になった。
しかも、なまじ2人で戦闘しているせいで多人数相手でも果敢に挑める。
前みたいに相手の人数で撤退という事もないので連戦状態になった。
見栄もあってなんとかこなしていたが、流石に疲れ果ててしまった。
ー20分後ー
「よし!逢真さんのレベル上げちゃうか!」
息を整えたところで、もうひと踏ん張りだ。
「あの、逢真さんじゃなくて、下の名前で呼んで欲しいんですけど良いですか?」
「ん?何かあった?」
「いえ、特に無いんですけど、ちょっと苗字だと距離が遠い感じがして」
「んーよくわからないけど、じゃあ、千紗さんって呼ぶね」
「はい、ありがとうございます!」
よく分からない提案だったけど、ま、いっか。
その後数回戦闘して彼女のレベルが上がった。
「スキルどうだった?」
「あ、はい、聖魔法のフィルターと槍術の連突き覚えました!」
「はーすごいねぇ」
スキルの習得は完全に解明されていない。
一般的には、スキル毎に習熟度があって、それが一定の所まで達したらスキルを覚えたり、スキルから派生する技を覚えたりすると言われてる。
ただ、この習熟度は個人差が激しいらしく、同じ事を同じ量だけやっても覚えない人は覚えないらしい。
適正が無ければ、ひとつのスキルを覚えるのに数年かかるという話もある。
なので、スキルを覚えやすいと言っても、この量のスキルを次々覚えていくのは、かなり特殊である。
「でも、まだ全然実践出来る感じじゃ無いですよ」
「それだけスキル覚えれるなら、すぐだよ。
じゃ、今日はこの辺で戻ろうか」
「はい!」
初日でいきなり4レベルまで上げるのは、結構なパワーレベリングだと思うけど、俺自身のレベルが低いからここからはそんなに急激なレベルアップは見込めない。
帰る途中で出会ったゴブリンから、レアドロップのゴブリンダガーが出た。
ちょうど良いから、千紗さんに渡す。
投擲用のナイフとして使っても良いし、短剣術を新たに覚えても良いし。
そういえば、これが初めてのレアドロップだなぁ。
…あれ?
俺って結構な数オーク倒したのに一回もレアドロップ無いぞ?
受付まで戻り次第、笹かまに聞いてみた。
「俺ってオークでレアドロップした事ないんだけど?」
「そりゃ、上の層に上がって来ちゃってるから無いっすよ。
通常6階以下のモンスターが5階より上に来たら、レアドロップしないっす。
常識っすよ」
「え、そうなんだ、知らなかった」
「だから、そういう現象の起きないF以下のダンジョンにも需要あるし、D以上だとガンガン降りて通常ドロップで稼げるとこまで行くっすよ」
「なるほどなぁ」
為になったねー為になったよー。
今日の戦利品を換金してもらう。
端数は俺がもらう事になってるけど、そもそも全部で2000円に届いてない。
やっぱり明日からはオークを倒そう。
この額じゃ食費もままならない。
「明日からはオークを倒そうと思う。
最初なんで1体でウロウロしてるやつから狙って、良いようだったら徐々に数を増やしていきたい。
良いかな?」
「はい、大丈夫です!」
そうして、初めての2人組での探索を終えた。
俺のアパートまで戻って来て、流石にこのままってわけにはいかないので、部屋のシャワーを彼女にも貸してあげる。
俺は、なんか落ち着かないのでコンビニまで弁当と飲み物を買いに行く事にした。
戻ってくると、千紗さんはちょうどシャワーから上がって、着替え終わっていた。
俺もシャワーを浴びて着替えて、2人で今日の反省や感想をしながら、買って来た弁当を食べる。
「盾スキル覚えないでボス挑戦はさすがに怖いからね、スキル覚えてからって思ってるんだ」
「あれでしたっけ、最初の数分攻撃無効なんでしたっけ」
「うん、それでえらい目あったけらねぇ。
もう少しでなんかスキル覚えられそうなんだよなぁ。」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
「いやぁ、早めにここ抜けないと、だんだん人増えてくるみたいだし」
「そういえば、そんな事言ってましたね」
「うん」
この後もしばらく会話を続けて夜も更けてくる。
「そろそろ寝ようか」
「あの…私もこの部屋で寝ちゃダメですか?」
「え………」
…
…
…
この日、人は本当にフリーズする事があるという事を知った。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方はお気に入り登録していただけると作者が喜びます。
見晴らしがよく、何かが接近してきたらすぐわかる。
「ハァ、ハァ、ハァ、すまない、こんなつもりじゃ無かったんだが、どうしても我慢出来なくなってしまって」
紅潮した顔彼女に向けながら、荒い息で、可愛らしい女の子に話しかける。
「はい、実は私も欲しくなってました」
彼女もまたほんのりと顔を紅くしていた。
「い、良いんだね」
「はい」
「分かった、じゃあここで休憩しよう!」
「私も喉乾いちゃって、ちょうど良かったです!はい、水!」
「いやぁすまないね、もう少しでレベル上がるのに私がバテてしまって」
レベルが上がってステータスが上がると、その付随として体力も向上する。
ただ、それは俺が思っているよりずっと少なかったようだ。
これまでは、相手の攻撃範囲の外からパチンコで当てて、接近戦も簡易的に作ったブラックジャックもどきで叩くだけの作業だった。
しかし、今は盾術習得の為に2枚のシールドで相手の攻撃を受け止め、慣れない盾で殴りつける。
慣れない事をしているので今までよりずっと手間も体力も使う事になった。
しかも、なまじ2人で戦闘しているせいで多人数相手でも果敢に挑める。
前みたいに相手の人数で撤退という事もないので連戦状態になった。
見栄もあってなんとかこなしていたが、流石に疲れ果ててしまった。
ー20分後ー
「よし!逢真さんのレベル上げちゃうか!」
息を整えたところで、もうひと踏ん張りだ。
「あの、逢真さんじゃなくて、下の名前で呼んで欲しいんですけど良いですか?」
「ん?何かあった?」
「いえ、特に無いんですけど、ちょっと苗字だと距離が遠い感じがして」
「んーよくわからないけど、じゃあ、千紗さんって呼ぶね」
「はい、ありがとうございます!」
よく分からない提案だったけど、ま、いっか。
その後数回戦闘して彼女のレベルが上がった。
「スキルどうだった?」
「あ、はい、聖魔法のフィルターと槍術の連突き覚えました!」
「はーすごいねぇ」
スキルの習得は完全に解明されていない。
一般的には、スキル毎に習熟度があって、それが一定の所まで達したらスキルを覚えたり、スキルから派生する技を覚えたりすると言われてる。
ただ、この習熟度は個人差が激しいらしく、同じ事を同じ量だけやっても覚えない人は覚えないらしい。
適正が無ければ、ひとつのスキルを覚えるのに数年かかるという話もある。
なので、スキルを覚えやすいと言っても、この量のスキルを次々覚えていくのは、かなり特殊である。
「でも、まだ全然実践出来る感じじゃ無いですよ」
「それだけスキル覚えれるなら、すぐだよ。
じゃ、今日はこの辺で戻ろうか」
「はい!」
初日でいきなり4レベルまで上げるのは、結構なパワーレベリングだと思うけど、俺自身のレベルが低いからここからはそんなに急激なレベルアップは見込めない。
帰る途中で出会ったゴブリンから、レアドロップのゴブリンダガーが出た。
ちょうど良いから、千紗さんに渡す。
投擲用のナイフとして使っても良いし、短剣術を新たに覚えても良いし。
そういえば、これが初めてのレアドロップだなぁ。
…あれ?
俺って結構な数オーク倒したのに一回もレアドロップ無いぞ?
受付まで戻り次第、笹かまに聞いてみた。
「俺ってオークでレアドロップした事ないんだけど?」
「そりゃ、上の層に上がって来ちゃってるから無いっすよ。
通常6階以下のモンスターが5階より上に来たら、レアドロップしないっす。
常識っすよ」
「え、そうなんだ、知らなかった」
「だから、そういう現象の起きないF以下のダンジョンにも需要あるし、D以上だとガンガン降りて通常ドロップで稼げるとこまで行くっすよ」
「なるほどなぁ」
為になったねー為になったよー。
今日の戦利品を換金してもらう。
端数は俺がもらう事になってるけど、そもそも全部で2000円に届いてない。
やっぱり明日からはオークを倒そう。
この額じゃ食費もままならない。
「明日からはオークを倒そうと思う。
最初なんで1体でウロウロしてるやつから狙って、良いようだったら徐々に数を増やしていきたい。
良いかな?」
「はい、大丈夫です!」
そうして、初めての2人組での探索を終えた。
俺のアパートまで戻って来て、流石にこのままってわけにはいかないので、部屋のシャワーを彼女にも貸してあげる。
俺は、なんか落ち着かないのでコンビニまで弁当と飲み物を買いに行く事にした。
戻ってくると、千紗さんはちょうどシャワーから上がって、着替え終わっていた。
俺もシャワーを浴びて着替えて、2人で今日の反省や感想をしながら、買って来た弁当を食べる。
「盾スキル覚えないでボス挑戦はさすがに怖いからね、スキル覚えてからって思ってるんだ」
「あれでしたっけ、最初の数分攻撃無効なんでしたっけ」
「うん、それでえらい目あったけらねぇ。
もう少しでなんかスキル覚えられそうなんだよなぁ。」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
「いやぁ、早めにここ抜けないと、だんだん人増えてくるみたいだし」
「そういえば、そんな事言ってましたね」
「うん」
この後もしばらく会話を続けて夜も更けてくる。
「そろそろ寝ようか」
「あの…私もこの部屋で寝ちゃダメですか?」
「え………」
…
…
…
この日、人は本当にフリーズする事があるという事を知った。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方はお気に入り登録していただけると作者が喜びます。
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