【完結】密告

九時せんり

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旅行

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人生は旅だと言いますが、私はそれを良く体現していたと思います。
全国各地の交通は網羅していたし駅弁や空弁にも詳しくなりました。
美しい渓谷や流れる川。大海原や砂丘。
神は良くこの小さな島国にここまで詰め込んだなと思うほど日本中を回りました。

この頃の貴女は小説家として人生を歩み出していました。
私は今度こそ貴女を娶る。その覚悟で後進の育成に励みました。

そして貴女に久しぶりに会いました。
この日、私は都内で仕事をしていました。いつものホテルに帰るところで電車が緊急停止しました。私の乗っていた車両ではイライラした男性がぶつぶつと文句を言い出したので私は隣の車両に移りました。
そこに貴女がいたのです。
貴女は、過呼吸を起こし隣の女性が大丈夫ですか?と何度も話しかけていました。
私はそっと貴女に歩み寄り、なるべく穏やかに話しかけました。
貴女は私が何を話しているのかは分からないようでしたが静かにうなづき涙を流しました。
私は今すぐにでも貴女を連れていきたい。その気持を抑えて次の駅で降りました。
まだだ。あと少し後進が育てば。
そう思うと私も静かに泣いていました。
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