魔法使いの少年と学園の女神様

龍 翠玉

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24.女神様の耳掃除

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 夕食後、母さんは明日も仕事らしく帰っていった。
 二人で並んでこたつに入りながら、同棲についての話をする。

「なぁ、穂香。どこから話す?」

 こたつの上の珈琲に手を伸ばし、喉を潤して穂香の返事を待つ。

「そうね……おばあちゃんの事から話すね。結論から言うと、おばあちゃんは、ユウ君ならいいよって」

 うん?俺は穂香のおばあちゃんに会ったことないぞ?それなのにいいとはどういうことだ?

「ユウ君、おばあちゃんに会ったことないのに何で?って顔してるね」
「ああ、よくわかったな」
「ユウ君はね、おばあちゃんに何回も会ってるのよ。このマンションの管理人って言えばわかる?」 
「え?じゃあ……」

 これはなかなか衝撃的な事実だ。世間は狭いと実感させられる。
 このマンションの管理人のばあちゃん――と言っても、まだ六十代だと思うが、初めて会ったのは入居してすぐだ。

 引っ越しやらなんやらで運動不足気味だったからランニングしていた時だった。近くの公園のベンチで、足を捻挫して歩けなくなってた、ばあちゃんがいた。
 その日に限って携帯を家に置いたまま出てきて、誰にも連絡とれずにいたようだ。そんな時、たまたま通りがかった俺がおんぶして、近くの病院に連れていったのだ。帰りもおんぶして帰ったのだが、その場所がこのマンションだった。

 帰ってからは、孫にみてもらうから大丈夫って言ってたけど、今考えたらそれが穂香か。
 ばあちゃんとは、それ以降、話し相手になったり、植木を植え替える手伝いしたりしたこともあった。
 お菓子もらったり、夏場はスイカ一緒に食べたりしたこともある。そのばあちゃんが穂香のばあちゃんだったとは……。

「そう。おばあちゃんにユウ君の事を言いに行ったら、逆におばあちゃんからユウ君の事を聞かされて……ユウ君は私だけじゃなくて、おばあちゃんも助けてくれてたんだ、って。それでね、おばあちゃんからは、たまには一緒にご飯食べてほしいって」
「ああ、もちろん。穂香と三人でな」
「うん、ありがと。私、その話聞いた時、思わず泣いちゃったんだから」

 そう言うと、俺の胸に身体を預けてきた。
 優しく頭を撫でてやると、次第にとろんとした表情になってくる。そのまま、どちらからともなく、お互いの唇を啄む。穂香の唇は上品な和菓子のような瑞々しさと弾力があって、いつまでたっても飽きることがない。

「ん……んむ…………あ、そうだ!」

 穂香が突然何かを思い出した様に身体を起こした。
 何だ?何か料理中で放置してたのかと思ったが、

「ほら、ここに頭乗せて。耳掃除してあげる」

 足をのばして座ると、太股を叩いて誘導してきた。もちろん断る理由もないし、密かに楽しみにしてたので、遠慮なくしてもらうことにする。
 生地の厚いズボンをはいているので太股の感触はあまりわからないのは残念だが、頭を身体で包み込まれる様な感覚はいいものだ。

「う~ん、ユウ君、ちょっと起き上がって」

 なかなか始まらないと思ってたら、なぜか起きてくれと言われた。言う通りにすると、いきなりズボンを脱ぎ出す。

「え?穂香?」

 何で脱ぐんだと思ってたら、生足になって「はいどうぞ」ときた。穂香の気遣いに感謝だ。
 こういうのは恥ずかしがらないんだなと思いつつ、太股に頭を乗せる。頬から伝わる感触と、耳掃除の気持ちよさにウトウトしてしまってた。

「えへへ……気持ちよかった?じゃあ反対向いて」

 夢心地のまま、言われた通り反対向くと、当然穂香の身体の方を向くわけで。目の前には下腹部が存在している。下着着けているとはいっても、眠気を一撃で吹き飛ばしてくれた。

そのまましばらく待っていたのだが、

「やっぱりダメ……ユウ君、身体ごと反対向いて。恥ずかしくて手元狂いそうだから……こっち向くの禁止」

 と、言われてしまった。結局反対向いたのだが、またウトウト眠ってしまったのは言うまでもない。
 ふと目を覚ますと、目の前に穂香の顔があった。仰向けでひざまくらされているようだ。そして、いつも通り髪をいじられる。

「短くなったから触り応えないだろ?」
「そんなことないよ。ユウ君の髪だからいいの」

 そんなものなのかと思っていたら、昼間の事を思い出した。

「髪と言えば……今日、浩介と菜摘に会ったけど、菜摘にはどこまで話してあるんだ?」

 ピタッと穂香の手が止まり、顔を見ると目が泳いでいる。穂香はこういう話をすると、非常にわかりやすい反応をしてくれる。
 菜摘とか女友達と話すときもバレバレで、隠し事なんてできていないだろう。
 そんなところも可愛くていいのだが、常にノーガード状態でだだ洩れなのは少し困るかもな。

「それは……その……ユウ君としちゃったってこと……くらいしか言ってないよ」

 まぁ、直接会って話してるわけじゃないからそんなものか。

「そうか、それならいいんだ」
「何かあったの?」
「ああ、あいつらのプレゼントを早々に使い切ったことを言ったら驚かれてな」

 それでわかったのか、なるほど~みたいな感じだったが、何かを思い出したかのように笑顔になった。

「ユウ君ってさ……普通の人より……えっちだよね」

 穂香は笑顔だが、これは悪い笑顔だ。下手に答えると失敗するので、穂香の次の言葉を待つことにした。
 こういう時こそ会話の基本だ。相手の話をしっかり聞く。大事なことだ。

「あのね、他の人は初めての時、どんな感じだったのかなって思って、ネットの体験談とかそういうの見てたの。友達には聞きにくいし、聞いたら聞かれるしね。それでね、痛かった~とか、全然痛くなかったとかの感想は……まぁいいのよ。問題はね、回数と時間なの。特に初めての時なんて、一回で終わるって人が多かったんだけど、それについて何か弁解はあるかしら?」
「いや……それは……」
「初めてなのに朝まで寝かせてもらえなくて、リアルに立てなくなったなんて……なっちゃんにも言えないに決まってるじゃない……それとも言ってもいいの?」

 その時の事を思い出したのか、顔を赤く染めて言ってきた。
 だが、菜摘に知られるのはマズイ。あいつにそんなネタを提供したら、何かあるたびに弄られそうだ。

「それは勘弁してくれ。あの時は、穂香とそうなれたのが嬉しくて……頑張りすぎた。その、穂香も拒まなかったし……」
「私は、初めてでよく知らなかったから、そういうものなのかなって思ってたの!」

 ぷりぷりしてる穂香の顔を引き寄せ、唇を重ねた。卑怯かもしれないが、ここは逃げさせてもらう。

「ん……はぅ…………んん……もう……いきなりはズルい……」
「嫌か?」

 離れた唇を耳元へ移動させ、囁き、更に耳たぶを甘噛みする。

「ひぁっ!い、嫌なわけない……けど……耳はダメ……」

 穂香の反応が可愛くて堪能していたが逃げられてしまった。

「もう!弱いのわかっててしてるでしょ。む~、後でユウ君にも同じことするんだからね」
「わかった。その勝負、受けて立とう」

 上手く話が逸れてくれたが、この勝負は俺の勝ちが確定している。俺はくすぐられたりするのには滅法強い。対して穂香はというと、見ての通り弱い。
 年の瀬に何をしょうもないことをしてるんだ、と思われるかもしれないが、たまにはこういうじゃれ合いもいい。
 そして、勝負はもちろん、俺の完全勝利で終わった。
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