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シルフ編
第73話 まさかの再会
しおりを挟むわたしとイオとエルメラは数日間、島を調べて回った。
果物がなっているのを見つけて食べてみたり、魚釣りをして塩焼きにしたり。日差しが暑い日は川で水遊びもした。
「あははは! ユメノ、それー」
「やったな、エルメラ! えーい!」
わたしとエルメラは、パシャパシャと水をかけあって遊ぶ。イオは足だけを水につけて、大きな葉っぱで自分を仰いでいた。
「あはははは。楽しいなぁ! て! ちがーう!!」
わたしは急に我に返る。
「どうしたの、ユメノ?」
「わたしたち、ウキウキキャンプをしに来たんじゃないよね!? シルフを探しに来たんだよね!?」
「そうだけど……、全然見つからないんだから」
「精霊も襲ってこないから、ついのんびりしてしまったな」
イオまで締まりのない顔をしている。
のんびりするにも過ぎた。わたしは早くシルフを見つけて、ウンディーネを見つけて元の世界に帰る手段を見つけないといけないのだから。
「この島には何もいなさそうだな。明日、サラマンダーに次の島に連れて行ってもらおう」
「「うん!」」
わたしとエルメラは大きく頷いた。
そのときだ。
「きゃあああああ!!!」
突然、森から悲鳴が聞こえてきた。
「え!? な、なに?!」
「誰かいるみたいだな」
イオが杖を持って警戒する。
「精霊が暴れているのかな」
「どうだろう。これまで、どいつも大人しかったが。それより、あれは人の悲鳴だった」
人がここに居ること自体が珍しいことだ。
わたしたちは急いで服を整えて、悲鳴がした森の奥へと向かった。
ひんやりした空気の森の中を慎重に歩く。
「もしかして、精霊使いかな」
「その可能性が高いだろうな。この島に来られる人間自体限られている」
それもただの精霊使いじゃない。
人を乗せてこんな上空まで飛べるなんて、強い精霊の証だ。以前出会ったシュルカさんはひとっ飛びだろうけれど、Sランクぐらいの、それも風の精霊使いじゃないとここには来られない。
そんな強い精霊使いが、悲鳴をあげる事態なんて……。
わたしはぎゅっと杖を握りしめる。
しばらく歩くと、また何か叫んでいる声が聞こえてきた。
「――うッ! ――て、――ユ!」
なにか一人で叫んでいるみたい。精霊に襲われている雰囲気ではない。
わたしたちは、さらに近づいていく。森の間に人が立っているのが見えた。
緑の衣装で――。
「あれ? どこかで見たことがあるような……」
「もう! 何か言いなさいな! ミルフィーユ!!」
一人の女の子がプンプンと怒って、目の前の小鳥に話しかけていた。
「え。あなたは!」
ハーフアップにした髪に二つのお団子頭。
その子が振り返った。こっちを向いて、あんぐり口を開けている。
「あなたは、ど素人さん! どうしてこんな所に!?」
「どうしてこんな所にはこっちのセリフだよ。ルーシャちゃん」
そう。そこにいたのは、サラマンダーに会いに行く前に知り合った、精霊使いルーシャちゃんだった。
わたしがまだ精霊の解放のことも知らなかった頃に、いろいろと教えてもらったのだ。勝手に技術を盗んだともいうけれど。
「な、なな、何でって、ここに居る以上、あなた方と同じ目的だと思いますことよ?」
何だか知らないけれど、すごく動揺している。
でも、確かにこんな所に精霊使いがいる以上、目的は同じはずだ。
「ルーシャちゃんも、シルフを鎮めに来たんだね」
「そ! そうですことよ! あなた方には無理でしょうけれど!」
サラマンダーとノームが味方にいる、わたしたち以外には難しいんじゃないだろうか。
そうは思ったけれど、ルーシャちゃんも、ここまで来られるほどの精霊使いだ。
以前も、わたしのことを助けてくれたし、きっと精霊ギルドのランク以上に実力があるのだろう。
後ろにいたイオが前に出て来る。
「ユメノの友達だったか。前に何度か会ったことがあるな。俺はイオだ」
そういえば、ちゃんと紹介したことはなかったかもしれない。
「わたしは風の精霊使いのルーシャですわ。ど素人さんの保護者ですのね。浮島は油断するとあっという間に飲み込まれますことよ。お気をつけなさい」
わたしは、ん?と思った。
何だか詳しいような言い草だ。初めて来たって訳じゃなさそう。
「それで、あなた方はどこにキャンプを張っているのかしら? お呼ばれされてもよくってよ」
でも、すぐに相変わらず、ルーシャちゃんはルーシャちゃんだと思う。
疑問に思ったことをすぐに聞きそびれて、ルーシャちゃんを滝の近くに張ってあるキャンプ地へと案内した。
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