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第五章 生徒Xからの挑戦状編
第四話 放送部へ
しおりを挟む放送室は西棟の三階にある。放課後、僕たちトレジャーハンター部は四人揃ってやってきた。まだ、部員の人たちは来ていないらしい。
「放送部ってなにしている?」
待っていると倉野さんが尋ねてきた。
「えーと、学園祭の司会をしていたのは放送部だったよね。それから、お昼の放送」
僕の説明に水上くんも頷く。
「うん。普段は十二時十五分から四十五分まで、ラジオのDJみたいに音楽をかけたりしているね。大体、生徒のリクエストらしいよ」
「ふーん、そうなんだ」
「僕らはあんまり音楽に興味ないからね」
「ないわけじゃないですよ、津川先輩」
そんな話をしていて、約十分。僕らは薄々感づいてきた。
「もしかして今日は活動日じゃないんじゃ」
そう。僕らトレジャーハンター部には、活動日など存在しない。
大体、毎日昼休みに温室に集まって話をしているだけだ。もし放課後に集まりたければ、適当に連絡して集まっている。
だから、他の部活には活動する曜日があることを失念していた。
「また日を改めて、帰ろうか」
津川先輩がそう言ったときだ。
「あれ? 放送室になんか用なん?」
聞き覚えのある声だと思った。振り返ると、襟足の長い無造作ヘアーの不良にも見える男子生徒が立っている。制服の学ランもかなり着崩していた。
ただ、不良が全寮制の孤立した学園などにいるわけない。
「えっと、僕らトレジャーハンター部で、挑戦状のことで来たんですけど」
「なんや! やっと来たんか!」
僕は不良っぽい生徒に肩を勢いよく掴まれた。
「もしかして、放送していた?」
「せや。俺は放送部のエース、二年の持田澄雄や」
「よ、よろしくお願いします」
勢いに押されたけど、悪い人ではなさそうだ。
「それで、挑戦状の件やね」
持田先輩はガチャガチャと放送室の鍵を回す。
「挑戦状のせいで、わたしたちの評判悪くなった」
「べっぴんさんが、そないなむくれた顔をするやないで。ほんでもって、評判が悪くなったのは挑戦状のせいやない」
放送室に持田先輩は入っていく。僕らは中には入らず、顔だけで中をのぞいた。
あまり広くない部屋で、音楽室のように防音がされている。マイクやスイッチなどの放送のための器具や壁際にはたくさんのCDが並んでいる。きっと、ずっと受け継いできたのだろう。
持田先輩が一枚の紙を持って戻ってきた。
「これが放送部に送られてきた投書や」
受け取って読んでみる。
「こっ! これは!」
『トレジャーハンター部の四人へ。
わたしは生徒Ⅹ。これは君たちへの挑戦状だ。昼休みの間、わたしはある場所で動かずにその場所にいる。トレジャーハンター部よ。わたしを捕まえてみたまえ。わたしがいる場所は昼休みの十分間の記録の中だ』
確かに挑戦状はこんな内容だった気がする。内容も気になるけれど、いま重要なことはそれではない。倉野さんがポツリとつぶやく。
「これ、絶対に女の子」
そうなのだ。内容に反して、手書きの文字は丸みを帯びた可愛らしい文字なのだ。文章の口調からして、男だと思い込んでいた。
「ちなみに彼女の正体に気づいている人らは、ぎょーさんおるみたいやで。女の子には優しくしたってな!」
女の子を待たせて無視している。そんなの絶対に評判が落ちることは間違いなかった。
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