嘘つきカウンセラーの饒舌推理

真木ハヌイ

文字の大きさ
44 / 68
4章 アフターケア

4 - 13

しおりを挟む
「先生、今日はどうしたんですか? いつもと違って、すごくまともな仕事しちゃって」

 帰り道、灯美は尋ねずにはいられなかった。相談者がこの男に涙を流してお礼を言うなんて、初めて見る光景である。驚かずにはいられない。

「何言ってるんですか、灯美さん。僕はいつだって、まっとうに仕事をしているつもりですよ」
「いや、いつもは違うでしょ。口からでまかせで、相談者をだまして陥れるのが先生のやり方じゃないですか」
「だます? ああ、そうですね。今回だけはやってしまいましたね、それは」
「え?」
「まあ、真実をそのまま伝えるわけにもいきませんからねえ」

 ウロマはやれやれといった感じで、ため息をついた。

「どういう意味なんですか?」
「よく考えてみればわかることですよね。二十五歳の男性が、同居している婚約者の女性に中身を見られないように、パソコンにパスワードを設定している理由なんて。そんなの一つしかないですよねえ」
「え? え?」
「あの、サユリダイダイスキというパスワードは、ゆうべ僕が新しく設定したものなんですよ。本当のパスワードは kyonyu dai dai suki でした」
「きょ、巨乳大好き?」
「巨乳大好きではなく、巨乳大大好きです。好きが足りない」
「い、いやそうじゃなくて!」

 なにその卑猥なパスワード。なんでそんなもの設定して……。

「まさか、あのパソコンに保存されていたデータって――」
「はい。実にわいせつなものばかりでした」

 どきっぱり。力強く言い切るウロマであった……。

「え、でも、さっきはそんなのどこにもなかったじゃないですか?」
「そりゃあ、僕が一晩かけて、ヒロセさんが生前収集されたであろうお宝画像やらお宝動画やらを掃除したからに決まってるじゃないですか。もちろん、ただれたブックマークも健全仕様にしましたよ。壁紙も、ローカルに保存されていた二人の思い出の写真に変えました。もともとは胸の大変大きな女性の、かなりきわどい露出の水着写真でしたからね」
「まさか先生はそのためにパソコンを持って帰ったんですか?」
「もちろんです。故人の尊厳は守られるべきですからね。当然のアフターケアですよ」

 ウロマはにやりと笑った。

「それに、それらの画像や動画は、胸の大きな女性のものばかりでした。ヒロセさんが本当はそういう女性を好んでいたことを、清川さんが知ったらどう思うでしょうか? 彼女はあんなに華奢で、平坦な体つきなのに?」
「ま、まあ、さぞや複雑な気持ちでしょうね……」

 言いたいことはわかるが、どさくさに小百合へのセクハラまでかますウロマである。

 やはりこの男、まったく信用できない。油断できない。いつだってうそつきで、でたらめだ。改めて、ウロマへの評価を下げに転じる灯美であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...