死痕

安眠にどね

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 ……デスクの中には何か役に立ちそうなものはなかった。というか、物自体、なにも入っていない。
 まあ、よくよく考えれば、警察が事件を捜査した際に全部回収しているだろうから、おじさんのように、事件後に持ち込まない限り、なにもないのは当然だ。
 依鶴の方を見たが、彼女も首を横に振った。むこうもなにも見つからなかったらしい。
 困ったな、と思っていると――。

「うわっ!」

 バサバサバサ! という、何かが落ちる音と、晴海くんの驚いたような声が聞こえる。

「だ、大丈夫?」

 驚いて彼の方を見れば、彼の近くにひっくり返った段ボールと、ファイルが散乱していた。どうやら、棚の上にあった段ボールを取ろうとして、ひっくりかえしたらしい。

「怪我はない?」

 わたしの言葉に、盛大なくしゃみと咳で晴海くんは返事をした。

「だ、だいじょうぶで――っくし! すみません、埃っぽくて……げほっ」

 確かに、落ちた衝撃で埃が舞ったようで、晴海くんの制服や髪にはかなり埃が付着していた。怪我がなかったのならいいけれど、でも、これだけ頭から汚れてしまえば、よかった、と声に出すのは、ちょっとはばかられた。

 わたしは晴海くんと一緒に、ファイルを拾う。A4サイズの紙をしまえるタイプのファイルが数冊。誰かが持ち込んだのだろうか? 結構埃が付着しているから、かなり前からありそうだ。あのおじさんの生活圏は保健室みたいだったから、ここに置くとは思えないけど……。
 ぺらぺらとファイルをめくってみるが、半分以上が空。しかし、中には新聞記事がファイルされているものもある。
 日付は――十五年以上前。事件より前の記事だ。

 見出しには、××分校廃校決定、と書かれている。ここの分校が廃校になることが知らされる記事が、何枚かあるだけだったが、わたしは気になる文面を見つけた。

「……行方不明事件?」

 どうやら、この分校が廃校になったのは、生徒数の問題ではなく、行方不明事件があったからのようだ。……かなり前だな。日付で言えば、三十年以上前。まだわたしが生まれる前の話――どころか、たぶん、××分校デスゲーム事件の犯人が生まれたかどうかくらい昔の話。
 なんでこんなものがここにあるんだろう。

 不思議に思いながらも、わたしは記事を読む手を止めることができなかった。
 こんな昔の記事、デスゲーム事件に関係あるとは思えないのに、何か情報がないかと、希望を持ってしまったのだろうか。
 それは晴海くんも同じらしい。わたしの隣で、黙って一緒にファイルを見ている。

 わたしと晴海くんが記事を読んでいたからか、全員が調べる手を止め、わたしたちの周りに集まってきた。
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