私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

文字の大きさ
8 / 200

忘れ物お届け係 契約する

しおりを挟む
 「美代様。あの突然で申し訳ありませんが、当家で働いてみませんか?」
と、目の前のインテリ男に言われて、驚きのあまり一瞬声が出ない。

 寝不足から、きっと幻聴なのではないかと思ってしまう。
 「え? どういうことですか? いまお仕事の話しています?」
 「そうです。お仕事の話です。わたしも伊勢崎もあなたを大変気に入っております。しかも、最近、美代様自身が当主を助けていただきました。最近、ある問題点がございまして、それに対して解決策を考えていたのですが、あなたがそれを解決してくださる様な気がいたします」
 「はぁーー、お話はありがたいですが、わたしの様なものが、このようなお屋敷に役にたつのでしょうか? あ、でも掃除全般はお任せください。得意ですよ」
 「ふふふっ。美代様の特技ですね。いいですね。でも、そういうことではありません。うちの当主の魅力に呑まれ込まれない自分を持った人員を探していたのです」
 「はあ?」

 どうやら、補佐の真田さんに言わせると、当主の身の回りの世話役に頼むのだが、みな蓮司の財力やら外見の魅力に取り付かれ、ストーカーになったり、脅迫者になったり、とにかく影響力の反動がすごいらしい。しかも、その当人が仕事は優秀だが、プライベートではかなり抜けているらしく、真田でさえ全部サポートできずに困っていたというのだ。

 「だから、そう、あなたの様に女子力が少なく、権力やお金にも無欲な人を探していました」

 ちょっとけなされているか? 私? と思うが、まあ確かに女子力はないな。

 「あの真田さん、勘違いされていますけど、私、お金には興味ありますよ。稼がないと生きていけませんし……」
 「ははははっ。そうですよね。当たり前ですね。では、一応お給料を決めましょうか?」
 「いや、すみません。やっぱりお断りします。どう考えても、ちょっとですね……」
 「え、なにがご不満な点がありますでしょうか?」
 「いや、なんというか……私、そんなお役に立つことが考えてみても……」

ーーどう考えても、おかしいではないか? あの大原の財閥の総裁である大原会長の為のサポート役だなんて……ただの大学生だ、自分は……。

 「私、ただの大学生ですし、正直、そのサポートできるような大層なものではないので」
 「いや、美代様のような方がいいです。あ、そうですね。忘れ物お届け係ということです」
 「はぁ? 忘れ物お届け係?」
 「あの蓮司様は、意外と抜けているところがありまして、忘れ物が多いんです。それを届けてもらう専門の係です」
 「すいません。そんなくだらない係……いるんでしょうか?」

  このふざけたこと言っているインテリ男をジッと睨む。

 「いります。この会長補佐の私が申しております。必要なんです。美代様」
 眼力にもの言わせて、この男が睨んでくる。その殺気? が、ちょっと怖い。なにか周りを固められているような気迫さえ感じる。
 「あああ、わかりました。正直、ちょうど仕事がクビになって困っていたところです。少しでも収入があると助かります。でも、まあ一応、すこし様子見て本当に私が必要かどうか検討してください」
 真田は美代の言葉を聞いて、苦笑する。なぜなら、これじゃー、雇用主と雇用者の言葉が反対ではないか……。

 ますます気に入った。

 眠たさが、ちょっと美代を傍若無人にさせた。本来なら、もっと真剣にその本意を探っていただろう。だが、もう眠気がどうにでもなれーーと思わせた。
ーー必要っていうんだから、やってやろうじゃないの!とまで思ってしまった。

 真田さんとの話し合いにより、学業を優先しながら、サポートすることでオッケーとなる。まあ、本当にこんなのでいいのかと疑問を持ちながら、雇用契約を結ぶ。話が美味しすぎて、ちょっと怪しいと思うだけだ。まあ、雑用係っぽいから、いざとなればやめればいいなと気楽に考えていた。そんな事を思っていた自分を今は叱りたい。

 そして、先ほどの携帯口パク任務となる。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

処理中です...