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ただいま電話に出られません
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目の前のインテリ男を見据える。
「ええ? 改装ですか?」
美代はまた真田の言ったことを聞きかえす。
「そうなんです。相当ガタが来ているようで、当社としてもきちんとした社宅を社員に提供したくですね……まあ来年の春あたりの話になります」
「え、ちょっと待ってください。改装のことも疑問がいっぱいありますが、それ以前に私、一応、バイトではなかったですか?この前の社宅の話、ちょっとおかしいなと思ったんです」
「あ、そうなんです。最近の美代様の目覚しい働きに私どもや蓮司会長もひどく感心しておりまして、今回思い切って、正社員になりませんか?というお話です」
えええっ。
ちょっと待ってくれ。
いままで考えていたドアとかブラとかの質問が全てふっ飛んだ。
真田さんはともかく、あの蓮司会長まで感心とは……。
どういうこと? あのティッシュの山が効いたのか? こんどはコンテナごと送るべきかちょっと真剣に悩んだ。それとも、ペンが、もしくはあのパンツ事件だろうか???
いやいやそういうことではない。
「あの学生のうちに正社員とは、あの色々問題にならないのでしょうか?」
「あー、法律的にはまったく問題ありません。美代様はすでに18歳以上ですので、労働基準法第56条にはもう当てはまりませんし、正社員になることで厚生年金や健康保険の加入などがありますが、それ以上に福利厚生や先ほどの家賃のことも補助がでますのでだいぶお得ですよ」
ええ、そんな正社員になるのにお得ですよって、八百屋が安売りでキャベツ売るんでないんですから……。
「………真田さん、実はですね……」
今まで話したことをなかったことを真田さんに話す。なぜなら、ここで正式に雇ってもらう場合に、これは話す必要があるかもしれないと思ったのだ。
実は自分の両親が多額の借金をしていた事。そして不慮の事故で二人とも帰らぬ人になってしまったこと。自分には相続を全て放棄することで借金を負わずに済んだが、幾つかの闇金が自分を狙っていたこと。自分の両親がそこまで追い詰められたいたことなんて全く気がつかなかった美代は未だに、助けられなかった両親に対して負い目を感じている。でも、そちらも当時の弁護士さんと救済グループによって助けられたこと。だから、今だに自分はちょっとその狙われた経験から、人前に素顔を出すのが苦手なこと。でも、このへんなお届け係をすることで自分に人前に出て行く度胸がついてきたこと。まあ地味女がもっと地味女になっただけの話だ。
だから、有紗が事務所の人と恐喝もどきに会長に迫ったとき、矢崎が美人局という言葉を言った時にドキっとした。
まえにヤクザっぽい男に言われたのだ。
「あー、まあお前なら、いい美人局の餌になるなー」
そいつが舌をぺろっと舐めた仕草が気持ち悪くて一生忘れられない。
あのテレビで見た有紗はとても生き生きとして芯の強い女性にみえた。演技だと言われればそれまでだが、あの会議室で見た有紗は何かが違うと思った。
有紗の目だった。
目の奥に、彼女の迷いの色が見えたと思った。もしかしたら、前の自分のように脅かされているのかもしれないと思ったのだ。
本当だったら自分の身元について最初に雇われた時にいうべきだったけど、怒涛のように過ぎていったし、いろいろ新しい環境に自分が慣れていくのが嬉しかったのだ。
「……美代様」
「ごめんなさい。なんか辛気くさい話で……」
「でも、どうして今その話を私にされるのですか?」
「なんでだろう。自分でもよくわかりません。ただ、またあのような輩が、こんな自分に親切にしてくれている人たちに迷惑をかけたくないですし、蓮司会長も忘れ物大魔王でかなりの変人だと思いますけど、自分の仕事を見ていてくれて私自身がもしからしたら嬉しいのかもしれません……でも忘れ物には頭にきますけど……えへっ」
「美代様、大丈夫ですよ。ご心配なさらないでください」
「……真田さん」
「なんたって、美代様の直属の上司は、大原財閥の蓮司会長ですし……」
「え、やっぱり正社員になっても、直属は蓮司会長なんですか?」
「それが、ご不満ですか?」
「あ、いえ、どうお答えしていいのか……」
「どうぞ、いまだけお聞きしますよ。ご要望を……」
「え? いいんですか? それだったら、やっぱり色々な経験をしてみたいので違う部署なんかで働いてみたいです。でもまだ学生なんで、なにもできませんけど」
「あーそうですか。色々なところでの経験がしたいと……」
「はい、そうです」
「わかりました。そのように手配します」
「ええええ! いいんですか??」
「もちろんです。美代様のご要望を叶えるのも私の仕事の一端です」
ええ? いつもと違う真田の笑みがなんか怖いぞ。
違うタイプの寒気が体を駆け抜けた。
その後、正社員のことについて良く考えますと言って館を後にする。改装は春かららしいからまだちょっと時間があるしね。体調を考慮して、一度家に帰る。あー、また伊勢崎さんに送ってもらう。本当に申し訳ない。
アパートに帰ってから気が付いた。聞きたい質問、全部ぬけていた。
もういいや、電話で聞いてみよ。あのドアとかブラのこと。もう恥もないや!
真田さんに電話する。
ツーーーーっ。で、出ない!!
ツーーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、
ワンコールっで、でない!!! 待ってみた!!!
鳴り響く呼び出し音。
ツーーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ
カチャ
『ただいま電話に出ることが出来ません。メッセージを残すかまたお掛け直しください』
ええーーーーーー留守電!!
居留守でしょ! 絶対!真田さん!! 絶対そう!!
いやまて……
トイレtime?
「ええ? 改装ですか?」
美代はまた真田の言ったことを聞きかえす。
「そうなんです。相当ガタが来ているようで、当社としてもきちんとした社宅を社員に提供したくですね……まあ来年の春あたりの話になります」
「え、ちょっと待ってください。改装のことも疑問がいっぱいありますが、それ以前に私、一応、バイトではなかったですか?この前の社宅の話、ちょっとおかしいなと思ったんです」
「あ、そうなんです。最近の美代様の目覚しい働きに私どもや蓮司会長もひどく感心しておりまして、今回思い切って、正社員になりませんか?というお話です」
えええっ。
ちょっと待ってくれ。
いままで考えていたドアとかブラとかの質問が全てふっ飛んだ。
真田さんはともかく、あの蓮司会長まで感心とは……。
どういうこと? あのティッシュの山が効いたのか? こんどはコンテナごと送るべきかちょっと真剣に悩んだ。それとも、ペンが、もしくはあのパンツ事件だろうか???
いやいやそういうことではない。
「あの学生のうちに正社員とは、あの色々問題にならないのでしょうか?」
「あー、法律的にはまったく問題ありません。美代様はすでに18歳以上ですので、労働基準法第56条にはもう当てはまりませんし、正社員になることで厚生年金や健康保険の加入などがありますが、それ以上に福利厚生や先ほどの家賃のことも補助がでますのでだいぶお得ですよ」
ええ、そんな正社員になるのにお得ですよって、八百屋が安売りでキャベツ売るんでないんですから……。
「………真田さん、実はですね……」
今まで話したことをなかったことを真田さんに話す。なぜなら、ここで正式に雇ってもらう場合に、これは話す必要があるかもしれないと思ったのだ。
実は自分の両親が多額の借金をしていた事。そして不慮の事故で二人とも帰らぬ人になってしまったこと。自分には相続を全て放棄することで借金を負わずに済んだが、幾つかの闇金が自分を狙っていたこと。自分の両親がそこまで追い詰められたいたことなんて全く気がつかなかった美代は未だに、助けられなかった両親に対して負い目を感じている。でも、そちらも当時の弁護士さんと救済グループによって助けられたこと。だから、今だに自分はちょっとその狙われた経験から、人前に素顔を出すのが苦手なこと。でも、このへんなお届け係をすることで自分に人前に出て行く度胸がついてきたこと。まあ地味女がもっと地味女になっただけの話だ。
だから、有紗が事務所の人と恐喝もどきに会長に迫ったとき、矢崎が美人局という言葉を言った時にドキっとした。
まえにヤクザっぽい男に言われたのだ。
「あー、まあお前なら、いい美人局の餌になるなー」
そいつが舌をぺろっと舐めた仕草が気持ち悪くて一生忘れられない。
あのテレビで見た有紗はとても生き生きとして芯の強い女性にみえた。演技だと言われればそれまでだが、あの会議室で見た有紗は何かが違うと思った。
有紗の目だった。
目の奥に、彼女の迷いの色が見えたと思った。もしかしたら、前の自分のように脅かされているのかもしれないと思ったのだ。
本当だったら自分の身元について最初に雇われた時にいうべきだったけど、怒涛のように過ぎていったし、いろいろ新しい環境に自分が慣れていくのが嬉しかったのだ。
「……美代様」
「ごめんなさい。なんか辛気くさい話で……」
「でも、どうして今その話を私にされるのですか?」
「なんでだろう。自分でもよくわかりません。ただ、またあのような輩が、こんな自分に親切にしてくれている人たちに迷惑をかけたくないですし、蓮司会長も忘れ物大魔王でかなりの変人だと思いますけど、自分の仕事を見ていてくれて私自身がもしからしたら嬉しいのかもしれません……でも忘れ物には頭にきますけど……えへっ」
「美代様、大丈夫ですよ。ご心配なさらないでください」
「……真田さん」
「なんたって、美代様の直属の上司は、大原財閥の蓮司会長ですし……」
「え、やっぱり正社員になっても、直属は蓮司会長なんですか?」
「それが、ご不満ですか?」
「あ、いえ、どうお答えしていいのか……」
「どうぞ、いまだけお聞きしますよ。ご要望を……」
「え? いいんですか? それだったら、やっぱり色々な経験をしてみたいので違う部署なんかで働いてみたいです。でもまだ学生なんで、なにもできませんけど」
「あーそうですか。色々なところでの経験がしたいと……」
「はい、そうです」
「わかりました。そのように手配します」
「ええええ! いいんですか??」
「もちろんです。美代様のご要望を叶えるのも私の仕事の一端です」
ええ? いつもと違う真田の笑みがなんか怖いぞ。
違うタイプの寒気が体を駆け抜けた。
その後、正社員のことについて良く考えますと言って館を後にする。改装は春かららしいからまだちょっと時間があるしね。体調を考慮して、一度家に帰る。あー、また伊勢崎さんに送ってもらう。本当に申し訳ない。
アパートに帰ってから気が付いた。聞きたい質問、全部ぬけていた。
もういいや、電話で聞いてみよ。あのドアとかブラのこと。もう恥もないや!
真田さんに電話する。
ツーーーーっ。で、出ない!!
ツーーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、ツーーーーっ、
ワンコールっで、でない!!! 待ってみた!!!
鳴り響く呼び出し音。
ツーーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ ツーーーーっ
カチャ
『ただいま電話に出ることが出来ません。メッセージを残すかまたお掛け直しください』
ええーーーーーー留守電!!
居留守でしょ! 絶対!真田さん!! 絶対そう!!
いやまて……
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