私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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忘れ物係は地味女でKYだった

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 っっえーーーいっ!!

 変質者あつかいでもいい! 中に入ってやる! といき込んでドアを開けた。

 部屋の中には大きい楕円状の会議用テーブルを囲んで、あの大女優の有紗とお付きの二人、多分マネージャーぽいハゲ男とちょび髭男がいた。蓮司の前で鬼の形相のような顔をしていた。ハゲ男のマネージャーは明らかに美代の侵入を喜んでいない。もちろん、有紗も同様な感じだった。

 あれ? 国民的大人気のあの天使のスマイルはどこへ?

 「ああ、おれが呼んだ。早かったな」

 蓮司が私を手招きする。
 そして、呼ばれたからにはあの例の物をカバンから差し出した。

「「「!!!!!!」」」

 死ねる! この恥さらしめ!!

 二人のマネージャーと有紗があぜんとそれを見つめる。

 「わかりますか? これが」
 「なんっ。わざわざ!! そんなの証明にならないじゃないの! 」
 ハゲ男も騒ぐ。
 「会長さんよー。こんな地味女が持ってきたものを俺らと何が関係あるんですかねー。うちは大事な商品が傷ついてこまっているんですよー。あの恋愛報道もあるし、これからのイメージが困るんですよね……」

 「…………」

 肩越しにみている蓮司をみている美代だったが、彼の恐ろしい威圧感がこの会議室の全体を包んでいた。

 秘書の矢崎が後ろから出てきて話し始めた。

 「有紗さん。蓮司会長はこの大原財閥の総裁です。彼が身に付けるものは会長の自宅ですべて管理されております。下着などのプライベートなものもすべてです。あなたがそれを間違いだといい、さっきの見せてもらった写真、半裸会長があなたの証拠だというなら、こちらもそれなりの対応をしますよ。この写真の端に写っている下着、完全に違いますよね……こちらと……」
 「そ、そんな………ふざけた話し聞いた事がないわ!!」
 「基本、私は女性には優しくしたい。だが、おれをしてもいないことで脅迫してくるような輩には、慈悲を持ち合わせていない……」

 どうやらこの有紗さん、会長と一緒に寝た証拠に、会長が半裸姿の写真で彼女を抱いているのを写真で撮ってきたらしい。
 ごめん。よくわからん。
 あの恋愛報道はどうなったんだ!!

 「あと、私の会話はすべて、毎日24時間このペンに入っているマイクロフォンからすべて録音されている。だから、簡単にその証言も嘘とわかる」

 会長があのモンブランの万年筆を胸のポケットから出して見せている。

 ええええ!! そうだったの?
 あの曰くの万年筆! やるではないか!!
 スパイ物の映画を見ているようだ。

 「そ、そんな……でも、この女!!なんなの? 蓮司さんでないものをこの地味女が勝手に持ってきただけではないの?」

 あれ、なんか論点がずれている。また地味女って。おかしくないか。名前を変更したい。じみ・なこさんっとか。

 がんっっと強くテーブルを叩く音がこだまする。

「有紗さん、こいつはおれの届け物係だ。喋りかけないでくれ……」

 いつもは社交上では愛想笑いしている蓮司だが、この眼光の鋭さがこの3人を震え上がらせた。
 蓮司は指を軽く促し、秘書の矢崎康夫を前にもっと出させた。

 「オスキーヌプロダクションの皆様、こちらが当方で調べさせていただきました、そちらの所謂、な接待の事実でございます。また、これ以外にも、不正会計の事実もこちらでは把握しております。元社員さんからの証言も取ってありますよ」

 矢崎は、テーブルのまえに、数々の写真と資料を置いた。有紗の横に座っていたハゲ男のマネージャーは、じつはオスキーヌプロダクションの社長だった。置かれた写真と資料を確かめながら、震えている。

 「こ、これは!!! どういうことだ!! 汚いぞ!」
 「佐々木社長。あなたのほうが汚いではないですか? あなたの看板商品を使って、美人局なんて……しかも相手は、大原財閥の総裁とは……ちょっと勘違いも甚だしいですね。その上、うちの会長にプライベートな下着まで証拠にこんな公の場所に持って来させる……これは、証拠以前に侮辱的な行為ですよ。それに、あの熱愛報道も、そちらのやらせですよね」
 いつも柔軟そうな矢崎までが、恐ろしい顔をしていた。

 「いままでこんな行為を会長にして、この世界生き延びた方……わたしは全く存じません」
 矢崎が捨て台詞に近い爆弾を落とす。

 有紗の脇の二人の無様な男が呆然と顔を青くし、震えだした。

 矢崎が呆れた表情を浮かべる。はっきりいって、この先このプロダクションの将来はないと思った。
 蓮司は、飽き飽きした顔を浮かべる。矢崎が指示をして、セキュリティーのものがすぐにやってきた。3人を連れ出そうとしていた。

 「有紗さん!」

 地味なお届けもの係が叫ぶ。

 「お仕事頑張ってください! ファンです!」

 有紗は、美代に向かって呆れたような顔をした。
 「空気よめないのね。地味女は……でも、あんたって、変わっているわね」

 その美女はそう言い残すと、そのドアを閉めると同時に警備員たちと共に去っていった。
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