私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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大晦日1

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 大原家の大晦日。

 さぞかし大掃除で忙しいと思いきや、案外静かである。この広大な邸宅ではいつも掃除が行き届いているらしいので、この大晦日のためにわざわざの大掃除はないらしい。蓮司総裁はあまり自宅でパーティーをしないということで有名らしい。だから、あの労い(ねぎらい)クリスマスパーティーが如何にびっくりの行事だったかということを後で松田さんから教わった。でも、『絶対に俺が美代ちゃんに教えたって秘密ね!』と言われた。そんなに秘密なことなんだね。よくわからないけど。

 今朝けさ方、こちらにお泊りセットを持って伊勢崎さんに送ってもらってきた。

 「今年の大晦日は賑やかになりますね~」
 と老齢の紳士の伊勢崎さんに言われ、
 「いえいえ、おとなし~くしてますので、大丈夫です」
 と受け答えた。あの邸宅で賑やかにするほど、たぶん、わたし、うるさくないと思います。
 案内された部屋は、ぎょっとするほどの豪華さでありながら、趣味の良いアンティークの調度品であふれていた。

ーーさ、さすが大原家。贅を尽くしていると思われるのに、なぜかこの嫌味のない家具たち。だ、だけど、サイコーに落ち着かない……。

 そんなわけで、部屋にちょこんと着替えのボストンバックを置いて、キッチンへと向かっていった。しかも、よく考えてたら、忘れ物チェックできるのは1月2日の朝だけだと気がついた。一日は一応、仕事休みらしい。ただ、来客などの急なことはしょっちゅうあると言われた。

 先ほどの一連の芸能騒動を見終えた後、真田がこれからのスケジュールを教えてくれる。

 「美代様は基本的にお休み扱いですので、どうぞゆっくりしていらしてください。今晩はたぶん蓮司様も大晦日ですので、早くおかえりになると思います。ただ、明日の朝ですが、こちらのダイニングルームに9時にいらしていただけますとありがたいです。そちらで、新年のお祝いをささやかながら内輪でいたします」
 「え、でもわたし、全然白シャツと紺色ズボンしか正装の服ありませんが、大丈夫ですか?」
 「洋服の問題なら心配ありません。こちらに多少用意してありますが、まあそれは美代様の好きなようで構いません」
 「あと、元旦は初詣に蓮司様いかれるのですか?」
 「……あ、それですか? 実は蓮司様は昔からきちんとそれだけは欠かしません。美代様も一緒にいかがですか?」
 「え? 真田さんも行かれます?」
 「えええ? どうでしょう……まあその時に決めさせていただきます」
 「あ、美代様、重要なこと2点言うのを忘れておりました。大晦日の夜はこの使用人休憩室のあたりの電源は落とされます。一応、節電のためです。ですから、紅白などのテレビを見られる場合は、こちらの別館のリビングルームでずっと見られますので、どうぞそちらをお使いください」
 「え、別館ですか? わたし入ったことありません」
 「大丈夫です。あと、別館の入り口付近にわたしの私室もありますので、なにかありましたら、お呼びください。」
 「はい、わかりました」
 「あと、もう一個大変重要ですが、これを美代様のお部屋のドアの外にお貼りください」
ーーええ? これなんですか? オカルト? やっぱりあの都市伝説は本当なの?
 「あの、真田さん……このお札みたいな紙に、悪霊退散、煩悩消滅って書いてあるんですけど……」
 「一応、大晦日なので縁起を担いでですね……」
 「まったく意味がわかりませんが……」

 真田が真剣な眼差しを美代に向ける。

 「いいですか? 美代様。この館にはかなり恐ろしい亡霊が住んでいるという噂です。とくに黒縁めがねっこが狙われやすいと統計が出ていますので……十分お気をつけてください。」
 「ひぃぃ。真田さん……じゃー、なんでわたしを呼んだんですか? しかも、その統計ってなんですか?」
 「え? まあ、そのぐらい余興があったほうが、美代様も滞在が楽しくなりませんか?」
 「な、なりません!!!」
 「でも、そのお札!忘れないでくださいね」

 はああーーーー、やっぱりぼろアパートに戻りたい。恐怖の館だなんて、嫌です。
 ちょっと判断を誤ったかなと考えた美代でした。
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