私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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饅頭怖い? たこ焼き怖い?

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 引っ越しをしてから、いや連れ去られてきてから、あの大切な家族の写真は、なぜか蓮司のベットルームのサイドテーブルに置かれた。
 他の部屋に写真を移動しても、なぜかベットの横に置かれる。

 「なぜですか? 写真は好きなところに置きたいんですけど」
と抗議したら、
 「お前の部屋は、この写真がある部屋だろう? だからお前が間違って他のところに行かないように、これはここに置く。ここはお前の寝室だからな」
と真面目な顔の蓮司に言われた。

 この共同生活に対して、会長は有無言わさせない様子だ。
 まず、ここに一緒に住むこと。
 学校はここから通うこと。迎えは必須。それが嫌なら十人程度のSPが一緒に電車で通うぞっと脅される。
 怖い、怖すぎる。そんな人、電車に乗っていないし、山川さんに嫌味で殺されそうだ。
 あと、他の男には近づくなっと念を押される。特に白石にくっついて行ったら、あいつの命はないとまで言われる。本気の殺気がある目で睨まれ、背筋に寒気が走った。
 え、いつからヤーさんの世界にだろうか。
 なぜか七瀬君については言及されなかった。
 仕事は一応、続行。呼ばれたら来ること。でも、学業を中心に頑張れと言われる。また、これからは仕事の内容が多少変わるかもと言われた。

 「前に、お前、真田に部署の配置がえを望んでいただろう。俺が変えてやるから、心配するな」
と、言われる。

 でも、なぜそこで含み笑いなの? 騙された感がハンパない。
 その後、学校にあの黒塗りの車で登校にまでなってしまう。でも、恥ずかしいので、3ブロックあたりの離れたところでいつも降ろしてもらった。これは頼みこんだ。
 ただ学校に行ったら、全てが普通に戻っていた。歩美も七瀬君も、最初は『大丈夫か?』と心配されたが、別に交際や告白について聞かれることは全くなかった。白石先生も、『ごめん。会えなくなった』っとただ一言残して、消えてしまった。

 お、おかしい。

 何かが起きたのだろうか?

 そして、夕食は一緒のときもあるが、忙しい会長とはなかなか一緒に食べれなくなる。そんな時、真田さんや伊勢崎さんが一緒に食べてくれるので、あまり寂しさは感じなかった。でも、ちょっと物足りないことを感じ、真田さんにお願いする。

「すいません。お行儀悪いんですが、テレビを見ながら食べたいですけど、いいですか?」

 もうあの主人がいないのだから、ちょっとは息抜きをしたかった。隠し引き戸からテレビが出てきた。まあ無難に7時のニュース辺りから見始めた。真田も伊勢崎さんもぽりぽりと美代の特製漬物を食べながらのテレビ鑑賞となった。
 えへへ、あと特製ぬか床は、この豪邸にきても大活躍で、どかんっと、いや、小さいから、ちょこんと厨房に置かせてもらっている。松田さんも関心があるようだ。時々このぬか床ちゃんの面倒を見てくれている。
 そんななか、テレビが一面ニュースを伝えた。

 『国際的詐欺集団が、日本で摘発。日本警察の大金星』
 『アメリカの優良企業が突然の倒産。CEOが行方不明。アメリカ経済混乱』
 『香港でマフィア同士の闘争。ボスを含む多くが死傷。香港最大のマフィア世代交代へ』
 『高知の山林で交通事故、男性3名が重傷』

 などなど世の中には事件がいっぱいらしい。
 うーーむ。世の中、色々大変だね。でもどの話題も暗かった。正直、ご飯がまずくなりそうだったから、
 「あの、チャンネル変えてもいいですか? なんか物騒な話ばっかりで、嫌なんで」
と尋ねる。

 明らかに放心状態な真田が我に返り、
 「ああ、どうぞ、どうぞ、私も楽しいのがいいですね」
と相槌をうった。
 何故かその時、急に思い出して、真田さんに、
 「白石先生の事、何か知りませんか?」
と聞いてみたら、
 「申し訳ありません。また蓮司会長からお話が、あるかもしれませんが、その名前、このお屋敷内では禁句ですから! やばいですよ。絶対に蓮司様の前では言わないように! あのシーツ巻きより恐ろしいことになりますよ」
と、真顔で言われた。

 なんなんだ? 恐ろしい。なに! あの寿司巻きより怖いって何?

 「さ、真田さん、あの寿司巻きより怖いってなんですか?」

 興味本心と怖さが同居する。

 「……知りたいですか? 美代様」
 「え、もうここまで来たら、そうかもしれません」
 「た、タコ焼きです」
 「え?」
 「美代様は女性ですし、蓮司様は絶対にしないと思いますが、ま、周りの者が危険なので、どうぞよろしくお願いします」

 よくわからない。 
 落語で饅頭大好きな主人公が、饅頭欲しさに饅頭が怖いというお題目があるが、たこ焼きバージョンなのか? 真田さん、たこ焼き好きなの?
 あげないよ。じつは私も好きだし!
 だが、急に白石先生が心配になってきた。
 「先生、生きてんですよね?」

 こればかりは聞きたい事だった。

 「……まあ、はい。生きている思います」

 な! ? どういうことなのだろうか?

 「蓮司様は、美代様の事を想われて動いております。ですから、恩人と思われているかたを傷つけるようなことは、しないと思います」
 
 真田は話す。だが、脅す事はあるかもしれませんとは付け加えなかった。




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