私で染まった辺境伯さまに、虹色魔力を添えて

稲山裕

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第1話



 私は、女神ルネ。

 まだ生まれて二百年くらいで、神々の皆からはポンコツと言われているけど……そこまで気にしていない。

 なぜかと言うと、「あなたは女神の中でも可愛い方だから、きっと立派な男神様と結婚できるわよ」と、姉妹のように過ごしている女神達には褒めてもらえるから。

 いつか本当にそうなって、のんびりと暮らしたい。

「それって今と何が違うの?」と、皆からつっこまれても気にしない。

 男神様から愛されて一緒に過ごすという点が、違うのよ。

 問題なのは、まだ好きだとか愛するというのがピンとこないところ……。

 それを言うと、「あんたにはまだ独り身がお似合いよ」と笑われる。



 神界――主神と、それに従う神々が住む楽園。

 神々は何かしらの仕事をしつつ、そして楽しく穏やかに暮らしている。

(私は……いろいろとまだ上手く出来なくて、お荷物扱いではあるけど)

 昔は、魔神と争いが絶えなかったらしいのだけど、永らくそんな事件は聞かなくなった。

 お互いに不毛だと思っていた事と、結局のところ、終わりが無いと分かったからだという。

 ……だって、神同士で力の比べ合いをしても、決着なんてつくはずがないわよね。

 双方全力を出し切ったところで、お開きになったという。



 たまに人間界にちょっかいをかけ合っては、それはズルいだの反則だのと言いながらも、自分達同士ではぶつからない。

 人間に受肉する場合はその限りではないけれど、あえて今よりも弱くなってまで、人間界に落ちようという神は居なかった。

 力の強い神ほど比べたいのが性分らしく、稀に決闘のために受肉し合うこともあったらしいけれど……それも疲れるからと飽きたらしい。

 自分の子を修行させようと、生まれた直後に落とすのが流行っていたのも、かなり前のことだ。

 神々というのは時に、暇なのかなと思う遊びをする。



 ――そういうものだと教わっていたけれど、まさか本当にそんなことをするなんて。

 姉妹のような女神達と過ごす小さな湖では、その噂話で盛り上がっていた。

 近所では有名な美人三女神と、ポンコツだけど可愛い私を入れた四女神。



「そういえば聞いた? 主神様が生まれたてのお子を人間界に落としたらしいわよ」

「えー、残酷教育ぅ」

「ねー。いまどき信じられない」

「そうじゃないみたいよ? なんでも、人間界をちょっと調整するために落としたんだってさ」

「あ~。英雄かぁ」

「なるほどねぇ。神の子は人間界じゃ英雄になるらしいし」

「昔は結構落としてたみたいよね」

「でも大変そ~だし、やっぱ可哀想よね~」



 彼女達は、私が口を挟む間もないくらいに、矢継ぎ早に会話を繰り広げていく。

 テンポがかみ合わなくて、私が何か言おうとした頃には誰かがしゃべってしまうのだ。



「それで? ルネはチャンスだとか思ってるワケ?」

 諦めて聞き入っていたら、急に振られてしまった。



「えっ? チャンス?」

 落とされたお子と、チャンスという言葉が結びつかない。



「そうよ。人間界で仲良くなったら、玉の輿じゃん」

「主神のお子と人間界で添い遂げたら、こっちに戻った時も結婚してくれるんじゃない?」

 そういう計算が大切なのか……などと感心してる場合じゃない。



「うそ? 一緒に落ちろって言うの?」

 人間界なんて、恐ろしくて落ちたくない。



「でも、そのくらいしかポンコツのあんたに結婚の、それも玉の輿なんてありえないから」

「ひどぉ……」

 と、非難はしたものの、少しは事実だからいつも反論できない。



「行ってみなよ。私たちはヤだけど。絶対」

 絶対嫌なところに、落ちろと言うのか。

「それを何で私に勧めるのよ」



「皆が嫌がることだから、きっとあんた以外誰も行かないわよ?」

「……それはたしかに、一理あるかも……」



 同じ神同士だから、人間界ではなんとなく繋がりを感じたりとか、割と上手くいくのかもしれない。

 そう思ったら、やってみようかなと思った。

 上手くいけば、主神様のお子と結婚……なのだから。

 愛されのんびり生活が、モヤモヤっとしたイメージの中で繰り広げられた。



 かくして私は、主神様に許可を頂いて、数日遅れで人間界に落ちた。

 一度は「本気か?」と聞かれたけれど、たまに希望する神が居るそうで、そこまで強くは止められなかったし、不思議なことでもなさそうな反応だった。



 ということで……受肉する先は、同じ国で似た地位の、貴族の娘にしてもらった。

 天界で数日ずれた分、人間界には年単位でずれるけど問題はなかろうとのことだった。

 この時は、「男性が年上の方がつり合い取れるかも?」なんて、呑気なことを考えていた。

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