11 / 12
月光に煌めく金のたてがみ-10年目の再会と約束-
act 8
しおりを挟む
タマキはミズキと話したくても話せる状況ではなく、引き裂かれるように第二王妃やその取り巻きの女性に引っ張りだこだった。
「タマキ王子、花嫁候補にこの子たちはいかがですか?」
第二王妃が取り巻きの若い女性たちを紹介しようとする。
「断る」
タマキはそんな取り巻きなどには興味がなかった。やっと自分姿と声でミズキと話をしようと決心していたのに邪魔をされて苛立ち始めていた。
「そんなことを言わずにね。この子たちはいい子なんですよ」
第二王妃はなおもタマキに喰いつく。
「悪いが断る。俺には10年前からちゃんと決まった相手がいるんで。そんなにいい子なら王妃の息子に紹介してやってくれ」
タマキは自分の気持ちを抑えながら言い放ち離れようとした。
「何をおっしゃってるんですか。あの子にはもっと違う子を選びますわ。この子たちは王子に相応しい子たちだから紹介してるんですよ」
第二王妃の言葉にキレそうになる。
「それはそれは、さぞいい子たちなんでしょうな。だが、残念だが息子にはちゃんと婚約者がおるので、この子たちを紹介してもらわんでもいい」
「そうですね。どこの馬の骨かわからぬような娘を王子の嫁に迎えるわけにはいかないわね」
タマキの後ろからそんな言葉が飛んできて、タマキが振り返れば国王と王妃が弟を抱いて立っていた。
「こ、これはキルズワーヌ王国、国王と王妃様。どこの馬の骨だなんてこの子たちはちゃんとした国の王女ですわ」
第二王妃は焦り気味に答えるが
「そう。でも残念だけどこの子の嫁はあの子以外認めないわ。その証拠に見なさい。弟のこの子がその子たちを拒絶してるわ」
王妃がきつく睨みながらいう。抱かれているヒナタ王子は彼女たちを見ないどころか怯えていた。
「タマキ、行ってやりなさい。あの子は一人で待ってるから」
国王の言葉に
「ありがとう」
素直にお礼を言ってその場を離れた。
「ミズキ」
探し回ってやっと見つけたミズキにタマキが声を掛ける。
「もう、いいのか?」
今夜の主役はタマキだからそう簡単には放してもらえないだろうと思っていたミズキが聞けば
「あぁ、今夜はお前に合うのが目的だったからな」
タマキはミズキの隣に立ち答える。その言葉を聞きミズキの口元に小さな笑みが浮かぶ。
「さっきよりもいっそう紅くなったな」
ミズキの耳元の髪を梳きながらかき上げる。
「うっ、あっ」
ドクリと心臓が脈を打ち鼓動が早くなる。直感的にミズキはヤバいと思った。
「あっ、おいミズキ」
タマキが慌てて声を掛ければミズキはタマキの腕の中に倒れこみその意識を失った。
「おい、ミズキ、おい」
その身体を抱き寄せ軽く頬を叩くが反応がない。
「心配をしなくてもいい」
少し焦りだしたタマキに後ろから国王が声を掛ける。
「どういうことですか?」
ミズキを腕に抱いたまま国王に問いかければ
「それは発情期の前兆だ。この子にとって一番厄介でとてつもない強い発情期。次に目覚めるときこの子にそれが起きる。君に出会って、君の男としての色香に当たられ誘発された」
タマキの眉間に皺が寄る。自分と逢わなければ起きなかったであろう発情期。
「君に覚悟はあるか?覚悟がないままでこの子に逢えば君はこの子にのまれる。この子の色香にのまれ自分の意思とは関係なくこの子の欲するがままにその身を委ねるだろう」
国王の言葉にますます眉間に皺が寄る。
「君に覚悟がなければ数日間はこの子に逢わぬことだ。そうすればこの子の発情期は治まる。この子にとって発情期は君を受け入れるための期間だ。それを生かすも殺すも君次第だよ」
タマキの腕の中で気を失っているミズキを優しい眼差しで見つめる国王。そっと優しく頭を撫でていく。
「国王…」
タマキの呟きに国王は小さく笑い
「君が本気でミズキを欲してるから、ミズキはそれに答えた。だからこの大きな発情期が起ころうとしてる。君の中で答えは出てるんだろう?この子は本気でこの10年間、君だけを想って待ってたんだよ。その答えを君はこの子に差し出せばいい」
同じようにタマキの頭も撫でていく。
「…っ…ありがとうございます」
ミズキを抱きしめたままタマキは深々と頭を下げる。10年前の子供同士の約束をこの人は、この人たちは冗談だとは思わずにずっと待っていてくれたのだ。成人を迎える20歳までの期間、本気で考える時間をちゃんとくれたのだ。
「あと数時間で目覚めるだろう。その時に君はその姿で逢う覚悟があるなら、このままパーティーを抜けてこの子の部屋に行くといい」
国王はちゃんとミズキと向き合う時間をタマキにくれたのだ。タマキは迷うことなくミズキを抱き上げると
「俺が獣の姿でいたのは決心がつかなかったからです。こいつの…ミズキの気持ちがわからなかったから…でも、俺は本気でこいつが欲しい。俺の嫁はミズキしかいない。だからもう迷わない」
あの日、ミズキの部屋で言いかけた言葉を国王にはっきりと告げた。
「強い眼差しだ。ミズキとちゃんと向き合ってあげなさい」
国王の言葉に頭を下げタマキはミズキを連れてパーティーが開かれている宮殿を後にした。
「タマキ王子、花嫁候補にこの子たちはいかがですか?」
第二王妃が取り巻きの若い女性たちを紹介しようとする。
「断る」
タマキはそんな取り巻きなどには興味がなかった。やっと自分姿と声でミズキと話をしようと決心していたのに邪魔をされて苛立ち始めていた。
「そんなことを言わずにね。この子たちはいい子なんですよ」
第二王妃はなおもタマキに喰いつく。
「悪いが断る。俺には10年前からちゃんと決まった相手がいるんで。そんなにいい子なら王妃の息子に紹介してやってくれ」
タマキは自分の気持ちを抑えながら言い放ち離れようとした。
「何をおっしゃってるんですか。あの子にはもっと違う子を選びますわ。この子たちは王子に相応しい子たちだから紹介してるんですよ」
第二王妃の言葉にキレそうになる。
「それはそれは、さぞいい子たちなんでしょうな。だが、残念だが息子にはちゃんと婚約者がおるので、この子たちを紹介してもらわんでもいい」
「そうですね。どこの馬の骨かわからぬような娘を王子の嫁に迎えるわけにはいかないわね」
タマキの後ろからそんな言葉が飛んできて、タマキが振り返れば国王と王妃が弟を抱いて立っていた。
「こ、これはキルズワーヌ王国、国王と王妃様。どこの馬の骨だなんてこの子たちはちゃんとした国の王女ですわ」
第二王妃は焦り気味に答えるが
「そう。でも残念だけどこの子の嫁はあの子以外認めないわ。その証拠に見なさい。弟のこの子がその子たちを拒絶してるわ」
王妃がきつく睨みながらいう。抱かれているヒナタ王子は彼女たちを見ないどころか怯えていた。
「タマキ、行ってやりなさい。あの子は一人で待ってるから」
国王の言葉に
「ありがとう」
素直にお礼を言ってその場を離れた。
「ミズキ」
探し回ってやっと見つけたミズキにタマキが声を掛ける。
「もう、いいのか?」
今夜の主役はタマキだからそう簡単には放してもらえないだろうと思っていたミズキが聞けば
「あぁ、今夜はお前に合うのが目的だったからな」
タマキはミズキの隣に立ち答える。その言葉を聞きミズキの口元に小さな笑みが浮かぶ。
「さっきよりもいっそう紅くなったな」
ミズキの耳元の髪を梳きながらかき上げる。
「うっ、あっ」
ドクリと心臓が脈を打ち鼓動が早くなる。直感的にミズキはヤバいと思った。
「あっ、おいミズキ」
タマキが慌てて声を掛ければミズキはタマキの腕の中に倒れこみその意識を失った。
「おい、ミズキ、おい」
その身体を抱き寄せ軽く頬を叩くが反応がない。
「心配をしなくてもいい」
少し焦りだしたタマキに後ろから国王が声を掛ける。
「どういうことですか?」
ミズキを腕に抱いたまま国王に問いかければ
「それは発情期の前兆だ。この子にとって一番厄介でとてつもない強い発情期。次に目覚めるときこの子にそれが起きる。君に出会って、君の男としての色香に当たられ誘発された」
タマキの眉間に皺が寄る。自分と逢わなければ起きなかったであろう発情期。
「君に覚悟はあるか?覚悟がないままでこの子に逢えば君はこの子にのまれる。この子の色香にのまれ自分の意思とは関係なくこの子の欲するがままにその身を委ねるだろう」
国王の言葉にますます眉間に皺が寄る。
「君に覚悟がなければ数日間はこの子に逢わぬことだ。そうすればこの子の発情期は治まる。この子にとって発情期は君を受け入れるための期間だ。それを生かすも殺すも君次第だよ」
タマキの腕の中で気を失っているミズキを優しい眼差しで見つめる国王。そっと優しく頭を撫でていく。
「国王…」
タマキの呟きに国王は小さく笑い
「君が本気でミズキを欲してるから、ミズキはそれに答えた。だからこの大きな発情期が起ころうとしてる。君の中で答えは出てるんだろう?この子は本気でこの10年間、君だけを想って待ってたんだよ。その答えを君はこの子に差し出せばいい」
同じようにタマキの頭も撫でていく。
「…っ…ありがとうございます」
ミズキを抱きしめたままタマキは深々と頭を下げる。10年前の子供同士の約束をこの人は、この人たちは冗談だとは思わずにずっと待っていてくれたのだ。成人を迎える20歳までの期間、本気で考える時間をちゃんとくれたのだ。
「あと数時間で目覚めるだろう。その時に君はその姿で逢う覚悟があるなら、このままパーティーを抜けてこの子の部屋に行くといい」
国王はちゃんとミズキと向き合う時間をタマキにくれたのだ。タマキは迷うことなくミズキを抱き上げると
「俺が獣の姿でいたのは決心がつかなかったからです。こいつの…ミズキの気持ちがわからなかったから…でも、俺は本気でこいつが欲しい。俺の嫁はミズキしかいない。だからもう迷わない」
あの日、ミズキの部屋で言いかけた言葉を国王にはっきりと告げた。
「強い眼差しだ。ミズキとちゃんと向き合ってあげなさい」
国王の言葉に頭を下げタマキはミズキを連れてパーティーが開かれている宮殿を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
オメガな王子は孕みたい。
紫藤なゆ
BL
産む性オメガであるクリス王子は王家の一員として期待されず、離宮で明るく愉快に暮らしている。
ほとんど同居の獣人ヴィーは護衛と言いつついい仲で、今日も寝起きから一緒である。
王子らしからぬ彼の仕事は町の案内。今回も満足して帰ってもらえるよう全力を尽くすクリス王子だが、急なヒートを妻帯者のアルファに気づかれてしまった。まあそれはそれでしょうがないので抑制剤を飲み、ヴィーには気づかれないよう仕事を続けるクリス王子である。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる