会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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25話

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Said 大我

「いいのかあれ?あいつ完全に誤解したぞ?」
聖が部屋から完全にいなくなった後で恭先輩が聞いてくる。
「今はそれでもいいです」
俺は溜め息混じりに答えた。

本当は抱き締めてやりたかった、腕の中で安心させてやりたかった。

だが、今の俺はそれが出来ない。


「永尾健汰、生徒会長及び書記、会計への暴行により1週間の謹慎処分を言い渡す」
俺は目の前で、恭先輩に殴られたままの体勢でいる永尾に告げた。

「…っ…接近禁止の次は謹慎ですか。随分と委員長もお偉いんですね」
口許を拭いながら言う永尾はまだ自棄になったままだ。

「永尾テメェ」
恭先輩がまた永尾に殴りかかりそうになるが
「恭先輩、あなたも副会長に手を上げたんだ3日間の謹慎です」
そう告げる。

「…っ…わかった」
恭先輩は反論し掛けるがグッと堪えた。

俺は永尾の胸ぐらを掴み
「お前の考えなしの愚かな行動で3人もの人間を不幸にするところだったんだ。1週間1人でよく考えろ。じゃなきゃお前の欲しい答えは一生手に入らねぇよ」
その顔を睨み付けながら告げ手を離す。

「謹慎部屋へ運べ」
その場に待機している風紀委員に告げれば永尾を連れて出ていった。一瞬だけ永尾が何かを言いたげに俺を見たが俺はそれを気付かないふりした。

「恭ダメだよ、神尾くんの仕事をこれ以上増やしたら」
俺の背をポンポンと叩きながら愁先輩がいう。
「わりぃ、考えるよりも先に身体が動いた」
恭先輩も珍しく素直に謝った。

「まぁ、恭が動かなかったら間違いなく永尾くんは死んでたけどね」
苦笑を浮かべる愁先輩に
「そうですね、それに関しては感謝します。後少し遅ければ危なかったんで。ですが、3日間は謹慎してくださいよ」

賛同はしつつも謹慎だけはしてくれと告げた。

「大丈夫だよ神尾くん、ちゃんと監視しておくからね」
愁先輩が笑いながらいってくれた。まぁ、恭先輩がこの人に逆らえないのはわかってるからいい。

「イヤ、俺のことはいいんだ。自業自得な行動をしたからな。神尾お前は大丈夫なのか?聖はあのとき完全に誤解したぞ?」
恭先輩は俺と聖のことを心配して聞いてくる。

確かにあの時、俺は初めてみんなの前で聖を拒絶したんだ。自分の感情を抑え込むためだとはいえあの男を拒絶した。

「大丈夫です。俺のことは心配しなくてもいいです。いくら安定期だとはいえ愁先輩は体調がよくないんだから早く帰って休ませてあげてください」

俺は深い溜め息をつき傍に立つ彼の背を押し恭先輩に渡す。

愁先輩も、恭先輩もそんな俺に何か言いたげな顔をするけど

「わかった。ムリだけはするなよ。行こう愁」
「ムリはダメだからね」
2人はそれだけ言い残し部屋を出ていった。

「ムリか…。ムリしないと片付けられないからムリするするしかないんだ。あの男を守るために…」

思い浮かべた顔は酷く傷付いた顔。永尾に傷つけられた時の顔だった。

「クソッ」
握りしめた拳は深く爪が食い込み生温い液体がこぼれ落ちている。

「その手、使えなくなる前に手当てさせてくれないかな委員長」
後ろからそんな声がして振り返れば困ったなって顔をした三条と柳川が救急箱をもって立っていた。

「戻ってたのか」
溜め息混じりで聞けば
「小泉と絹笠は気絶しただけで、大きな怪我はなかった。まぁ、殴られてる部分が腫れてるぐらいですんだよ」
三条が強引に俺の握ってる拳を掴み指を開かせ報告してくる。

「あぁ、もう、ほら、完全に皮膚が切れてんじゃん!」
俺の掌を見て柳川がキレた。

「柳川、捕まえてるから今のうちにやっちゃって」
そんな柳川に三条が言えば
「もちです!」
と答えて手早く傷の手当てをした。

「お前ら地味に痛くしてるのは苛めか?」
そんな2人に俺が聞けばニヤァ~ってイヤな笑みを浮かべた。

「神尾に八つ当たりしてもしかたないんだけどな」
「八つ当たりしてもへこたれないってったら神尾だけだし」

ブツブツ言う2人。この2人は2人で永尾の行動に苛立ってたということ。それと同時に俺の苛立ちを抑えるためにこんなやり取りをしてるということ。

「さてと、報告書を書かなきゃいけないから風紀委員室に戻るぞ」
そんな2人に声をかければ
「了解ボス」
なんてふざけた返事が返ってきた。

俺は小さく笑って三条と柳川の背を軽く叩き生徒会室を出て風紀委員室へと向かった。


後で、時間を作ってあの男のところへ行かなければ…。


抱き締めて慰めるために…



俺じゃなきゃダメなことだから…



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