会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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42話

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Side 大我


「神谷には大体は聞いたんだろ?」
俺の問いにコクリと聖が頷く。
「これ話すと長くなるんだが、俺は中学の時から、拓輝に高校の状況は聞いてたんだ。原因は唯斗にあるんだけど」
「えっ?どういうこと?」
俺の言葉に驚く唯斗。

「それは君が発情の時に自棄を起こしたままだからだよ唯斗くん」
俺の言葉にあって声を上げる。そう、この男は高校に入っても1年ぐらいは自棄を起こしていた。まぁ、中学のようにフラ~フラ~って行かなくはなったが、それでも自棄を起こしたままだったのだ。

「まぁ、だから高校に入ったら風紀に入る気で俺はいたんだ。そこからは神谷に聞いた通りで、風紀の中は殺伐としてた。委員長が愁先輩で、副委員長が吉沼先輩だったんだけど、吉沼先輩はあの頃、本当に自己中だったし、恭先輩とは相性が悪くて、酷くてな。オメガが委員長っていうのも気に入らなくて、メチャクチャ荒れてたんだよ」
自分が委員長になれなかったことも関係していた。あの時は本当に酷かった。しかもあの人、強かったからな。

「ここだけの話、実は愁先輩は意外に風紀の中で人気があったんだ。それを会長である恭先輩が掻っ攫ていったもんだからブチ切れるブチ切れる。そこからはもう阿鼻叫喚のような地獄絵だ。自分たちより弱い奴らに当たりまくりで、愁先輩を囮に恭先輩を陥れようとするわ…恭先輩がブチ切れるわ…」
思い出しただけでゲッソリとしそうだ。

暴君と呼ばれた男の弟である神谷を使って陥れようとするが、暴君の弟が弱いわけがない。あいつ、あの時は擬態してたしな。弱い弟のふりしてたけど、暴君の弟は暴君だっていう。いやぁ、あいつを鍛えなおすのも苦労した。それを言うと三条も酷い状態だったけどな。神谷といい三条といい、なまじ強いから反発しまくって余計に被害にあってたっていうのが真実なんだけどなぁ。ホント、あの2人を抑え込むのは苦労したんだよ。力は力でって奴らだったからな2人とも。

「お互いが気に入らない者同士だからなぁ反発しあうだろ?愁先輩は身体が弱いから内面を抑え込みたくてもすぐに倒れるからできないでいた。それに付け上がってたのがアルファの連中だった。流石に俺も頭に来てたからブチ切れて生徒会と風紀両方をまとめて叩き潰した」
そう、実は内部崩壊は風紀だけじゃなくて、生徒会もまとめて崩壊させたんだ。こっちに関しては表立って出てないだけで…。

「はっ?マジで?そんなことしてたのか?」
俺の言葉に唯斗が驚いてあんぐりと口を開けている。
「イヤ、じゃなきゃ、あの暴君の恭先輩と緑先輩が大人しく俺の言うこと聞かないだろ?」
苦笑を浮かべて言えば、あんぐり口のまま頷いた。

暴君のあの2人が大人しくしてるのは俺はブチ切れて生徒会もまとめてぶっ潰したからだ。恭先輩を先に床に沈めて恭先輩に加担した緑先輩を押さえつけて、吉沼先輩を最後に沈めた。それが一番手っ取り早かったからだ。その後は風紀のアルファ軍団を全員、叩きのめした。いや、そのついでに神谷と三条も床に沈めたけど…。あの2人が入ると余計に話がややこしくなるから大人しくさせるために沈めたともいう。

「その後で、アルファが上位っていうのも気に入らなくて、混乱してる第2の性に関してのことも気に入らなくて、今のシステムを作り上げるために、学校を巻き込んで教師たちに直談判して、風紀委員長に第2の性に関してのすべての権限を一任させたんだ。これはこれで大変だったけどな」
大体の流れはこんな感じだ。


色々あったなぁ~なんて思いに耽りそうだ。


「じゃぁ、俺が会長になったのは?」
少しだけ膨れっ面で聞いてくる。
「あー、それは唯斗を守る為かな。役職に就けておけば俺といる時間が増えるし、責任感で自棄になってフラッていなくなるのもなくなるだろうって思ってさ。本当に唯斗を守るためだけに恭先輩と緑先輩に協力してもらった」
本当にそれだけの理由だった。

聖唯斗ただ一人を守っていくためだけに、先輩たちに協力してもらって生徒会長という椅子に座らせた。本当にそれだけで他に理由なんてない。

後はオメガでも生徒会長としてやっていけるんだっていうのを周りの奴らに見せつけるために決めた。


「はぁ」
って唯斗はおっきな溜め息をついた。これはあれだな、怒ってるな。
「しょうがねぇだろ?俺は唯斗のことになるとバカになるからな。お前が守れるのならどんな手でも使ってやるぞ」
そうこれは本当のことだ。唯斗を守る為ならどんな汚い手でも使ってやる。

「あー、もう!」
俺の言葉を聞き唯斗が怒り始める。これはちゃんと聞かないとダメなやつだな。
「なんですかね?」
俺は小さく息を吐き唯斗を見た。

「大我のバカ!バカバカバカ!!!…もぉ…本当にバカだよ…俺の為だけにこんな…こんなことして…でも…ありがとう…」
怒ってたなって思ったら今度は泣きそうだ。


これは…あれだな…感情の起伏が激しくなってるからソロソロかな。


なんて俺はのんびりと思う。唯斗自身はきっと気がついてる。自分が危険分子だというのを…。だから、ずっと、素っ気ない態度で、俺に甘えないようにしてるんだ。甘えてしまえばそれが導火線になるから…。


まぁ、あの2人がなんのために1週間も休みを取らせたか気付いてないんだろうなぁ。俺を休ませるためだって思ってるだけなんだろうな。そうじゃなんだけどな。

まぁ、疲れがまだ残ってるから、もう少しだけ爆発しないでいてくれると俺的には嬉しいけどな。今の状態で、唯斗が発情すれば俺は間違いなく理性を保つのが危うくなるからな。


なんて、ぼんやりと考えれるようになったってことは、普通に思考回路は回復したってことだな。


「俺は唯斗を幸せにするのが目的だからな。あれやこれやと唯斗の為に手を回したし、ある程度の目標は達成したし、残りはゆっくりと唯斗とデートしまくることかな。だから早く隠居したいです唯斗さん」
唯斗の頭を撫でながら言ってやれば、驚いた顔をしながらも
「イヤ、だから隠居はまだ無理だから。それは俺が許さない」
ハッキリと言い切った。


まぁ、本当に隠居できるとは思ってないからいいんだけどな。


引継ぎはしたし、間宮たちに任せてはおけるが、他のヤツらが許さないのはわかってる。


だから、休みが明けたら復活するんだけどな。間宮にもそれは告げてあるし。


間宮を信用してないわけじゃない、信用してるからこそ、こんな無茶に付き合ってもらったんだ。


「ゆーい、悪い、少し寝てもいいか?眠くなってきた」
なんか色々考えながら話したら眠くなってきた。やっぱり疲れがとれてないからなんだろうな。
「大我はちゃんと休まなきゃいけないんだから寝ろ!」
なんて返事が返って来て笑ってしまった。

「じゃぁ、唯斗は抱き枕な。傍にいてくれ」
唯斗の身体を抱き寄せて頭を撫でれば
「どこにも行かない。俺も一緒に寝る!」
なんてガッツポーズを作ったのは爆笑してしまった。


俺は唯斗を腕の中に抱きしめたまま、もう少し寝るためにそっと目を閉じた。


「ありがとう、大我。今は少しでもゆっくり休んでくれ」
そんな唯斗の言葉を聞きながら俺は眠りの中へ落ちていった。


次に目が覚めた時は大変なことになりそうだけどな…


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