貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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act6

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学院に行けば注目の的。その原因は遙が一緒だからだ。俺は遙の一歩後ろを歩いてるんだけど、目立つんだよね。この学院の王子様は…。俺としたら遠慮したんですけどね。
しかも、俺と遙は同じ学年なわけ。クラスは違うけどさ。だから必然的に同じ階に行かなきゃいけないわけで、非常に気まずい。俺が義弟だとは誰にも言ってないから余計に居づらい。

「昼休憩になったら迎えに来てやるから準備しとけよ」
遙はそうとだけ言い残しさっさと自分のクラスへと入っていった。
「はぁ~」
俺は盛大に溜め息をつき自分のクラスへと入った。
「おはよう」
なんて声をかけてみるものの誰からも返事は返ってこない。まぁ、こんなものかね。俺にはよくわからないや。俺はそのまま自分の席へ行き座った。誰からも相手にされないのは別に平気だ。元々俺は一人だったんだから…。
俺はボーっと窓の外を見た。遙の行動や考えてることがわからない。俺を嫌ってるはずなのに…。

ボーっとしてる間にHRが始まり、新しい1日が始まった。


やっぱり、俺は遅れている。授業でついていけないところがある。今日もそれをチェックしていく。特に数学と英語がわからない。このままじゃダメなんだろうけど、今のクラスじゃ誰も教えてくれそうにない。何とかしないと。


「菫くんはいるかな?」
なんて声がして、一気に教室の中が騒がしくなる。その騒がしさに驚き顔を上げれば遙がいた。気が付けば昼休憩の時間になっていたのだ。俺は急いで荷物を持って
「す、すみません」
謝りながら遙の所に走り寄る。
「じゃぁ、行こうか」
遙はそう宣言してから歩き出した。俺はそんな遙の一歩後ろをついていった。


あぁ、どこへ行っても注目の的なんだな。


「入れ」
短い言葉。ホントに二重人格者め。俺は小さく息を吐いて中へと入った。
「広!マジでここが生徒会室かよ!」
俺は思わず叫んじまった。
「うるせぇな。いちいち騒ぐな。先に飯を食え。それからだ」
遙はそういいながら部屋の一角にあるテーブルの方へ行き椅子に座った。そこには昼食が用意されていた。俺はソファの上に荷物を置いて遙の方へ行く。そして、躊躇いながら椅子に座った。
「い、いただきます」
俺は恐る恐る箸をつけた。


大体、なんで俺はこいつと一緒に飯を食ってるんだ?


会話なんてない。ただ一緒に黙々と食べてるだけ。息苦しい。味なんてわかったもんじゃない。それでも何とか食べた。先に食べ終えていた遙は俺の持ってきていた荷物を見ていた。

オイオイやめろよ。頼むから。

「御馳走様でした」
俺は箸を置いた。一先ずお茶を飲もう。それからあいつにバカにされればいい。

おし!

俺は溜め息をつき席を立つと遙の方へと向かう。
「あ、あの…」
恐る恐る声をかければ
「ここに座れ」
遙は自分の隣を指さした。うぅ、地獄だ。俺は言われたとおりに遙の隣に座った。遙は教科書を机の上に置き、ノートを開いた。うぅ、本当に地獄だ。
「バカじゃねぇんだな」
そんな言葉が飛んできた。それは意外な言葉だった。だって貶されると思ってたから。
「えっと…喜一さんの所で少しだけ勉強してたから…でも全然ついてけないから…」
俺はしどろもどろにいう。
「基本はあってる。お前がわからない場所は応用だ」
遙はノートも同じように机の上に置いて説明してくれる。応用?
「応用って?…あっ…初めに言っとくけど…俺がちゃんと勉強を始めたのは喜一さんの所でお世話になってからだから…それまでは…勉強なんて出来なかったから…」
詳しく話せる内容じゃない。だけど、これだけは言っておいた方がいいのかもって思った…。
「ふぅん。その割にはバカじゃねぇんだな」
褒めてるのか、貶されてるのかよくわかんねぇ~。
「えっと…それで…どうすればいいんでしょうか?」
チクショ―!だからなんでここまで低姿勢にならなきゃいけねぇんだよ!
「だから、この場合はこの公式を使うんだ。やってみろ」
なんて言われ、俺はそれを見ながら解いていく。


えっと、この式を使うってことは…これをこうして…こうやって…


「こんな感じ?」
自分で解いた問題を見せて聞いてみる。
「あぁ、そういうことだ。せ、この下の式も今の式と同じだ。このページの問題は全部それで解いていける」
意外だ。もっと怒られるかと思ったけどまともに教えてくれてる。意外だ。
「えっと、これをこうして…あれ?」
あれ?えぇっと…これをこうして…あれ?…
「バカかお前は。これはこれをこっちに持っていくんだ」
うっ、怒られた。えっと、だから…これをこうして…
「こんな感じでしょうか?」
解いた問題を見せながら恐る恐る聞いてみる。
「その通りだ。っと、時間か。残りは放課後にでも教えてやる」
遙は時計を見て言ってくる。
「あっ、ありがとう」
俺は教科書とかを片付けながらお礼を口にした。遙が驚いた顔をした。
「なっ、なんだよ」
驚いた顔をしたままでなにも言わない遙に聞いてみた。
「イヤ、まさかお前がお礼を言うなんてなって思ってな」
クソッ、やっぱりか!
「俺だってお礼ぐらい言うわ!!」
俺は思いっきり叫んだ。
「お前の事だからイヤイヤだろうと思ったんだけどな。まぁいい。先に戻れ。みんなに聞かれても余計なことは言うなよ」
ククッて遙が笑う。クソ~!やっぱりヤなやつ!
「なんだよ余計なことって」
それが何のことを意味してるのか聞いてみる
「あぁ?俺たちが兄弟だってことだ。めんどくせぇからな。勉強を教わってたって言っとけ」
あぁ、やっぱりね。
「口が裂けても言わねぇよ!」
俺はそれだけ言い残し部屋を出た。

やっぱりあいつはムカつくヤツ!

俺はそのまま教室へと戻った。


この日から俺は生徒会室ではるかに勉強を教えてもらうことになった。寮に戻ってもあいつは文句を言いつつも俺に勉強を教えてくれた。

それでもあいつの言葉と行動は俺を悩ますには十分すぎるものだった。

優しいのか?冷たいのか?

一体どっちかわからない。よくわからないまま俺が転入してから早くも1ヶ月が過ぎようとしていた…


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