貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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act22

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フワフワとした意識の中で、唇に冷たいものが当たり薄っすらと目を開けてみたら、氷と一緒に舌が入り込んできて口の中で氷を溶かしていった。冷たい感触にもっと触れていたくて名残惜しそうに舌を追いかけたら、また新しい氷と一緒に入ってきた。何個かそれを繰り返し、氷がなくなったのか今度は冷たい水が少しずつ流し込まれた。俺はそれを少しずつ飲んでいく。冷たい唇が何度も繰り返しキスをしてきた。そんな甘い感触に酔いしれたままで俺はまた深い場所に意識を手放していった。

誰かの話し声で目を覚まして、声のした方を見てみれば上半身裸でスウェットのズボンを履いただけの状態で、ベッドの縁に座って電話をしてる遙の姿が目に入った。
「は…遙…」
俺は掠れる声で呼んでみた。思ったほど声が出ていなかったけど、遙には届いたようで、
「今、目を覚ました。また連絡する。あぁ」
電話を切り携帯をテーブルの上に置いた。振り向いてから何か言いたげな顔で俺をジッと見てくるから
「何?」
聞いてみる。遙はため息をつき
「今回のことだけど…お前が言いたくなきゃ言わなくてもいいんだけど」
すごく言いにくそうに言ってくる。いつもならはっきり聞いてくるくせに。こんな時だけはそんな聞き方するんだな。
「らしくねぇじゃん。全部教えてやるよ。どうせ片付けてぇんだろ?今回のこと?俺以外にも被害者いるから」
俺は小さく笑い言ってやる。俺の言葉に遙が驚いた顔をする。
「なんで知ってんだお前?」
遙はそう聞いてきた。俺ははぁって溜め息をつき
「今日テストだっただろ?俺のクラスにきたのが梶原だったんだ。テスト配られて見てみたら俺の答案用紙になんか挟まってて、それをあいつに渡したら、なんだっけ?カンニングペーパーっていうやつ?だったらしくて、それはびっしり答えが書かれてて…字は完全に梶原の字だった。俺はあいつに全教科テストを受ける権利を奪われ放課後あいつの部屋に来るように言われた。誰にも迷惑かけるわけにはいかないから俺は黙ってそれに従った。で、行ったら変な薬飲まされて散々犯されて薬が切れ掛けたらまた飲まされてまた犯されて…でも途中であいつ職員室に呼び出されたから、その隙に逃げてきた。あいつやってる最中に写真とか撮ってた。…俺のカバン…あいつの部屋から盗んできた携帯のメモリーカードとCDが入ってる。結局…遙には迷惑かけちゃったけど…ごめん」
自分がこうなった全ての出来事を話す。遙は無言で部屋から出て行った。俺のカバンは部屋に戻ってきたときのまま、向こうの部屋に置いてあるはずだから。遙は戻ってくるとロッカーからシャツを取り出し、それを着て
「ちょっと出て来る。すぐ戻るから大人しく寝てろよ」
そう言い残し出て行った。
「…だりぃ…喉が渇いた…って…これ遙のスウェットの上じゃん…なんで俺が着てんだ?それより…喉が渇いた…なんかねぇのかよ…」
俺はブツブツ言いながら見渡すと飲みかけのペットボトルを見つけた。それを取ろうと身体を動かしたのだが、まったくもって力が入らない。
「くそっ」
俺は動かない自分の身体に苛立ちながらも、何度もチャレンジして少しずつ移動してやっと手が届きそうなところで
「う…うわぁ…」
ベッドから落ちた。くそ…動けねぇ…
「何やってんだお前?」
無理やり身体を動かそうとしてたら遙が戻ってきて俺の様子を見て言った。
「喉が…メチャクチャ渇いてて…水…飲もうと思ってあれを取ろうとしたらこの有様」
俺は動くのも諦め言った。遙はそれで気付いたのか俺を抱き上げるとまたベッドに寝かせて、
「わりぃ。近くに置いといてやればよかったな。ほらよ」
ペットボトルを取りそれにストローを差し俺の身体を支え飲ませてくれた。
「もぉ…いい…」
俺がそう言うと遙は俺をまた寝かせペットボトルを置いた。
「一つ聞きてぇんだけどお前さ。あの店にいるとき薬は使ってたか?」
突然そんなことを聞いて来る。
「あの店じゃ薬と中出しはご法度だぜ。薬はらりったり狂ったり拒絶したりする奴がいるといけねぇから。中出しは客から病気を移されると商品として扱えなくなるから。ちなみに月に2回は検査してる。俺はあの店に戻ったとき検査してっから病気はもってねぇ。それとこれとどう関係すんだよ?」
俺はその言葉に聞き返す。遙は溜め息をつき
「じゃぁ。やっぱり薬が原因か。今のお前な40度近くの熱出てんだ。帰ってきたときから身体がかなり熱かったから気にはしてたけどな。一応、座薬とか解熱剤とか使ってみたけど効き目なし。動けねぇの以外になんか異変とかあるか?」
質問した理由を説明してくれる。
「頭が痛ぇ。喉がメチャクチャ渇く。あと…寒くもねぇのに両手が震えてんださっきから・・・つうか俺のことよりお前さ明日もテストだろ?俺のことほっときゃいいから勉強でもすれば?」
俺はそういう。今一番大事な時期に俺に構ってる場合じゃない。
「テストなんか別にほっときゃ大丈夫だ。俺はお前と違うからな」
なんて反対に言われてしまった。
「あ~そうですね」
こいつはそうだよ。頭いいんだった。遙は俺の額に張ってある冷えピタを貼り替え
「頭痛は熱が高いせいも関係してるんだろうな。あのくそやろう。一体どんだけ強い薬使ってやがんだ。菫。お前医者にいくか?このままだと熱が下がらねぇし・・・どうする?」
そう聞いて来る。
「いやだ…いきたくない…あ…でも遙には迷惑だっけか…俺のこと嫌ってるんだもんな…」
俺は遙から視線を逸らし言う。遙は溜め息をつき
「あのな一つだけ言っとく。俺は嫌いなやつなんか自分の部屋に泊めねぇんだ。お前のことは正直どう思ってるのか俺でもわかんねぇ。それだけは言える。まぁ出会った当初よりは嫌いじゃねぇとは言えるな。とにかく…医者に行かねぇなら真澄のコネ使うか。水飲むか?」
そう言われ驚いた。嫌いじゃないって言われただけでドキッと心臓が飛び跳ねた。
「おい。水要るか?」
もう一度聞かれ俺は頷いた。遙は俺に水を飲ませてくれた。数本のペットボトルを俺の枕元に置き
「一応ここに置いとくけど自分で飲めなきゃ起こせ」という。
俺は小さく頷いた。多分起こすことになるかもしれないけど…。
遙は部屋の明かりを消してサイドライトに付け替えて布団に入ってきた。俺は自然と遙にくっ付いてしまう。今までの習慣というのは怖いものだ。それでも遙は何も言わず俺の身体を自分の方に抱き寄せた。
「まだ震えてんのか…。治らなきゃマジで訴えるぞ、あのくそ教師」
遙は小刻みに震える俺の手を握り締め、呟いた。
「熱が下がれば治るんじゃね?俺も薬は初めてだからわかんねぇけど」
俺は遙の呟きにそう答えた。
「お前も客観的だな。自分の身体なのに…まぁいい。寝ろ」
遙は呆れたように言って俺の頭を撫でた。最近なんか寝る前によく撫でられるんだよ、俺。でもそれが気持ちよくて寝ちゃうんだけどさ…

この熱…マジで下がるのかな?

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