貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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act29

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それは突然やってきた。教科書やノートに落書き。

突然呼び出されたと思えば
「目障りなんだよね」
「どっか消えちゃいなよ」 
そんな心ない言葉が、次々と浴びせられた。言葉とともに振るわれる暴力。

あぁ。これが世間で言う苛めってやつなのか。俺は密かにそう思う。

二日に一回の割合で教室から連れ出され人気のないところに連れてこられ何度も殴られ蹴られる。
今更そんな暴力を振るわれようとも痛みなんて感じない。あの店で受けてきた暴力はもっと酷いものだったから。

俺は自然と薄ら笑いを浮かべてしまう。こんな事してもしかたないのにね…。

遙と赤の他人だってバレて、それでもなお、俺が遙と一緒にいるから、みんなは気に入らないんだろうな。
遙はこの学院の生徒にとって特別な存在。神に近いのかもしれない。だからこそ、俺が傍にいるのが気に入らないんだろう。

1ヶ月が経つ頃には苛めもなくなっていた。俺が何の反応も示さないからだ。飽きたのだろう。
暴力で俺をどうにかできると思ってるなら間違いだ。俺は何も感じないのだから…。
生きた人形は感情を表さないんだよ。それに…暴力という名の痛みは子供の頃から幾度となくこの身体に受けてきたのだ。
殺さない限りどんな酷いことをされても文句を言えないそんな環境で育ってきたのだから、俺に暴力なんて意味がない。

俺は一人薄ら笑いを浮かべた。


「お前。このままでいいのか?」
急にそんなことを遙に問われる。
「何がですか?苛めのことですか?俺は平気ですよ?今更あんなことされても何も感じません」
俺は茶碗を片付けながら答える。
「だから…本当にそれでいいのか?」
遙が俺の両腕を掴み声を荒げ言う。
「いいんです。兄さんは兄さんのままでいてくれれば、それでいいですから。俺は赤の他人ですから…。お気になさらずに…」
俺は俯き答える。俺と遙は別世界の人間。俺に関わることなんてない。
「頑固者。わからずやだな」
遙かは溜め息をつき呟く。俺は小さく笑い
「貴方たちご家族にこれ以上のご迷惑をかけるつもりはありません。俺は卒業とともにあの家を出ます。それが俺の選んだ選択です」
はっきりと告げる。そう、本来なら使わないと決めていたあの金を使ってでも東條家から出ることを決めた。
俺がいれば迷惑になるだけだから…。
「勝手な言い分だな」
遙がいう。
「今まで喜一さんから送られてきたお金には一切手をつけてませんから。そのままお返しします。携帯だって何もかも…俺には必要ないものですから…」
遙かは諦めたのか
「好きにしろ」
そう言って俺の腕を放した。俺はそのまま自分の部屋へと戻った。


「俺は…どこに行くんだろう…」
ドアに凭れ床を見つめ呟く。遙の進路は決まってるはず。きっと大学に進学するんだろ。会社を任されてるぐらいだから…

俺は…やっぱり俺には何もないよな…

あと1年…この学院で地味に過ごしてあの家を出て俺は一人で…一人で何をするんだろ…。

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