貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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act31

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自分の仕事を終えた俺は遙を連れてマンションに招き入れた。

「何か飲みますか?」
そう聞いてみる。遙は着ていたコートを脱ぎ
「いや。いい」
そう答える。俺は
「皺になるといけないから…好きな所に座ってください」
遙からコートを受け取り壁にかけてあるハンガーに掛けた。遙は今まで見たこともないようなラフな格好だった。正直俺はどうしていいのかわからなかった。遙はソファに座り
「お前も座れよ」
そう言われ迷った結果俺は遙の隣に座ることにした。緊張する。

長い沈黙が流れる。

「手を出せ」
突然そう言われ訳がわからないまま俺は手を出す。遙はそんな俺の手にキレイに包装された小さな箱を乗せてきた。
「これは?」
俺は箱をみながら聞いてみる。
「クリスマスプレゼント」
そう言われ今日がクリスマスなのだと気がついた。
「開けてもいいですか?」
俺はそう聞いてみる。
「好きにしろ」
そう言われ俺は包装紙を取り箱を開け中から出てきたケースを取り出し蓋を開けて驚く。そこには俺の誕生石が嵌められた指輪。そしてそれは見覚えのあるデザイン。
俺は勢いよく立ち上がり壁際に飾ってあるボードに近づき言葉を失う。
何故ならそれは俺が高2の時から毎年クリスマスになると送られてきたアクセサリーと同じデザインのブランド物だった。俺が卒業してからも毎年必ずここに差出人不明で『MerryChristmas』のカードと一緒に送られ続けてきたものだ。

「もしかして…これ…全部…兄さんが?」
俺は少し震える声で聞いてみる。遙はジッと一点を見つめたまま
「あぁ。そうだよ。俺がずっとお前に送ってた」
そう答える。俺はケースをボードの前に置き
「どうして?何で?俺のこと嫌いなんでしょ?」
遙の傍に戻り聞いてみる。余りにも突然すぎで頭がついてこない。そもそもなんで遙が此処の住所を知ってるのかも…
「はじめはな…お前のことなんか認めてやるもんかって思ってた。だけど…お前といると本当の自分が晒せ出せて凄く落ちついてて…クソ教師に薬漬けにされたとき俺はマジで頭に血が上った。あいつを殺してやりたいとさえ思った。そこで気が付いた。俺はお前のことが好きなんだって。だけどその感情を知られたくもなかったし認めたくもなかった。お前が死にそうになったときはじめてお前を失うのが怖いと思った」
遙が俺のことを好き?
「…俺の過去がどんなだったか知ってるでしょ?…嫌だと思わなかったの?」
聞き違い?俺の都合のいい夢?
「お前の事情はお前の口から聞く前から知ってた。どういう経緯で家に来ることになったのかも…正直…俺自身もかなり悩んだ。俺から嫌いだって言っておきながらお前が好きだなんていっても聞き入れないだろうなって…卒業と共にお前が家を出て、俺は留学の話があったから少し距離を置いて自分の気持ち整理をしようと思った…」
遙はそこまで言うと黙ってしまう。

また長い沈黙が訪れる。

「俺はお前が好きだ。この気持ちは嘘じゃないし騙すことも出来ない」
遙がはっきりと言い切る。俺はどうすればいい?俺の気持ちを口にしてもいいのだろうか?
「悪い。嫌だよな。邪魔したな」
遙はそういい立ち上がり自分のコートを取る。俺はそんな遙の背に抱きつき
「自分の気持ちだけ一方的に告げて俺の返事も聞かずに帰るのかよ!」
そう叫んでいた。遙の動きが止まる。
「お前にとっては迷惑だろ?」
遙は静かに告げてくる。俺は遙に抱きつく腕に力を込め
「好き勝手言うだけ言って逃げんなよ。俺でいいのかよ…俺は実の父親に売られて売春夫として生きてきた人間なんだぜ?そんな俺でいいのかよ?お前の経歴に泥塗るようなことになっちまうんだぜ?」
聞いてみる。ここで拒まれればそれでいい。
「バカヤロ。過去がなんだ?俺はお前だから好きになった。お前だから惚れたんだよ」
遙がはっきりと言い切る。俺はグッと唇を噛み締めた後で深呼吸をして
「聞いて驚けバカヤロ。俺だってずっとお前が好きだったよ。誰から送られてくるのかわからねぇプレゼント毎年楽しみにしてたんだよ」
その言葉を口にした途端ビクリと遙の身体が反応する。遙は俺の手を離し持っていたコートも下に捨て俺をジッと見つめる。
「本気でいってんのか?」
遙が静かに聞いてくる。俺は遙の顔をジッと見返し
「こんなこと冗談で言えるか!俺だって学生の頃から好きだったんだよ。不良たちにやられた時だって、喜一さんにやられた時だって、クソ教師にやられた時だって、半分諦めてた。俺の人生こんなもんだって。だけどいつもお前が俺のこと世話してくれて、文句言いつつもちゃんと俺のこと気にしてくれてて、それが凄く嬉しかった。お前より俺のが先にお前に惚れてんだよ!」
勢い任せに自分の中に隠してきた思いをぶちかます。その瞬間、物凄い勢いで抱き締められ唇を奪われた。
何度も触れあい舌が忍び込み絡み付いてくる。

…っ…こいつ巧いんだった…

キスだけでもどうにかなりそうだ。
久し振りに与えられるディープキスは、俺の頭をクラクラさせるには十分なものだった。遙の手が俺の服の中に入ってくる。俺は慌ててそれを止め
「ちょ…待った…」
遙を止める。
「なんだよ?」
遙の口から不満げな声が聞こえる。わかってる。気持ちが通じ合ったから抱きたいってのは理解できる。
「せめて…ベッドで…」
俺はそう提案する。流石に立ってるのも辛いし、かと言ってソファなんて狭いし、床なんて言語道断。俺だって久し振りなんだし…せめてそれぐらい考慮してほしい…遙は俺を抱き上げ
「部屋は?」
そう聞いてくる。俺は遙の服に掴まり
「出てすぐ」
そう答える。遙はリビングを出てすぐの部屋の扉を器用に開け、そのままベッドの傍まで行き、俺をベッドに押し倒す。
「好きだ」
俺の顔をジッと見て遙が呟く。
「ん。俺も好き」
俺も小さく返事をした。

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