かれん

青木ぬかり

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実りの秋

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 ひとしきり構内を満たした祭りの熱気がようやく落ち着いてきた10月下旬、真琴は島田と二人、部屋のベッドにいた。
 時刻はもう昼に近い。

 携帯電話がメッセージの着信を告げたので、真琴はそれを開く。

『なあ、清川理沙ってどんなヤツなんだ?』

 それは隊長、伊東京一からのメッセージだった。
 真琴はすこし首をかしげ、しばし考えてから返信を打つ。

『アホです。……けど、バカじゃないです。でも、どうしたんですか隊長、いきなり理沙のことなんて』

『いきなりってな……。それを言いたいのはこっちだ。なんだか急に店に入り浸るようになってな、猛烈アプローチに遭ってるんだよ、俺』

 …………は?
 なにそれどういうこと?
 理沙が、隊長にアプローチ?

 突拍子もない報せを受け、真琴は伊東とのやり取りを適当に済ませ、すぐさま理沙にメッセージを送る。

『アンタ、今度はなに企んでんのよ。なんでもっすの先輩にアタックしてるワケ?』

 返事はすぐに来る。

『なんか悪い?』

 いや、悪くはないけど……。
 でも、島田くんと3人でもっすに行ったときに1回会っただけでしょ?

『悪くはないけどなんなのよ? アンタと先輩になんの繋がりがあんのよ』

『だからこれから繋がるんだよ、真琴のえっち』

 ……ダメだ。
 理沙の方が一枚上手……。
 でも、なんで隊長なの?

『だから、なんで伊東先輩なのよ』

『真琴に惚れるような男なんでしょ? だったら間違いないよ』

 …………。
 もういいや、なにを言ってもムダだ。
 それに……あんがい相性いいかもね。
 二人とも大人だし。

 軽くため息を吐いた真琴を見て、寝ぼけ眼の島田が口を開く。

「マコりん、どうした?」

「ううん、なんでもないよ。それよりどっか遊びにいこ、なおくん」

「ん、そうだな。……紅葉狩りにでも行こうか」

 紅葉狩り……か。悪くないな。
 散る前の彩り……。

 真琴はなぜかカレンを思い出す。

 カレンの件……。いろんなこと考えさせられて、いろんなこと知ったけど、結局私は、というかみんなもそんなに変わらなくていいような気がする。

 私たちは大学生として全力で学び、若者として全力で遊ぶんだ。
 結果は自分に返ってくるんだし。
 だから文句を言っていいのはせいぜいお父さんとお母さん……。第三者にとやかく言われる筋合いはない。

 そこまで考えてから、真琴は島田に返事をする。

「いいね、紅葉狩り。大切なのはムード……だね?」

「そそそそ、それそれ。じゃ、まずは服着ようか」

「は~い」

 真琴は、ベッドの脇に落ちている自分の脱け殻を手に取った。


    - 完 -
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みんなの感想(2件)

おだてぶた
2020.07.15 おだてぶた

ストーリー展開が素晴らしく、つい読入ってしまう。
そのストーリーを更に面白くしているのが、主人公の『真琴』を取り巻くキャラクターたち。
真面目なキャラからおちゃらけキャラまでさまざま。
そのキャラクターたちがそれぞれ活躍する場面もあり、サブキャラも主役級。
そんな『かれん』は読み応え抜群!
沢山の人にぜひ読んでいただきたい作品です。

解除
2019.08.07 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2019.08.07 青木ぬかり

 これまで「硬い」ものばかり書いてきたので、私なりに「笑える」おはなしを書こうとしたら、ダラダラと長くなってしまいました。
 なんとか完結しましたが、作風を模索しながら書いた……。そんなかんじです。
 そんな拙作に感想をありがとうございます。

解除

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