【BL】ゆぎしゅ【赤眼の渇き】

想伊

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『赤眼の渇き』3/3

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それから数日経ったある日。
またいつものように、お昼の時だけ自分の席になるベンチで、シュウと昼飯を食べていた。
「ねぇ・・・癒霧君。」
「ん?」
「もしかして、僕の血を飲んだ?」
ドクン
「なんで?」
「や、何か、何をしてたか思い出せない日があって、気付いたら首筋に小さな傷跡が二つあったから・・・もしかしたらって思って・・・。」
「思い出せないって?」
「あ、番野君に前に聞かれたことがあって、記憶が飛んだ時なかった?って・・・。ヴァンパイアに噛まれると、記憶が消えるらしいんだよって、番野君が教えてくれた。」
「あの馬鹿・・・。」
「それにしても番野君ってヴァンパイアに詳しいよね。なんでだろう?」
「あー、あいつもヴァンパイアだからだよ。」
「え?えぇええええ!?」
酷く驚いた様子で声を上げる。
「だからシュウ、あいつには気をつけた方が良い。何されるか分からない。」
「そう・・・なんだ。」
シュウはパンを頬張りながら呟いた。
「ねぇ、癒霧君、僕は癒霧君に血を吸われる前、何の話をしていたの?」
「・・・さぁね。」
「えー、教えてよ~。思い出せないって何かモヤモヤする。」
「何も無かったことになってるんだから、それで良いじゃん。」
「でも癒霧君の中では何もなかったことにはなってないんでしょ?」
黙り込む。
「ねぇ、癒霧君。僕、癒霧君のこともっと知りた、むにぃ!」
シュウが言いかけているところで、シュウの両頬を掴んで引っ張った。
「にゃにひゅるの?!」
「それ以上言うと噛みつくぞ。」
「もぉーひゃなひへ!」
手を離す。
「あんまり聞かないでよ・・・知られたくないことだってある。」
「・・・記憶を消すために、僕の血を飲んだの?」
黙り込む。
「何かずるいなー。・・・ねえ、覚えてられる方法無いの?」
「知らないよ。俺は吸う側だがら。」
「じゃぁ・・・何で僕に・・・その・・・。」
吃るシュウを見ると、顔を赤くしている。
「どうした?」
「な、何で僕に、キス、したの?」
「別に。からかっただけ。」
「えーうそぉー!?僕本当に初めてだったのにー・・・」
シュウが項垂れる。
「・・・本気だったら?」
「え?」
「本気だったら、どうしてた?」
「本気って・・・。」
シュウの顔がまた真っ赤になる。
「なんてな。そろそろ昼休み終わるし、教室戻るぞ。」

それからしばらく、日が暮れると、この中庭のベンチで女子の血をもらった。
シュウを思い出しては、目を真っ赤に染め、美味しいと感じない女子の血を飲んだ。
「番野。」
放課後、帰宅しようとする番野に声をかける。
「俺、昨日、2組の子からもらった。」
「お。そうか。了解。じゃぁ俺次4組の子からもらうつもりでいるから。じゃあな。」
嫌々ながら、番野との情報共有も続いている。
「も、もらうってもしかして・・・。」
突然後ろから声がして振り返る。
「うぉ、シュウ・・・いつの間に・・・どうした?」
「あ、いや、委員会のことで癒霧君に伝えたいことがあってきたんだけど・・・それよりさっきの。」
「え?あぁーまぁ・・・そういうこと、かな。」
「ほ、本当に番野君も・・・なんだ。」
人に聞かれないよう、ヴァンパイアという言葉を口にせず言った。
「癒霧君も、ちゃんともらえてるんだね。」
黙り込む。
「あ、ごめん。こんなとこで話しちゃいけなかったね。午後にたまたま早乙女さんとすれ違って、委員会、今日は違う教室で集まるからって言われて、それで癒霧君にも伝えとこうと思って。あ、ちゃんといつもの教室には黒板に書いてきたよ。」
「そっか。教えてくれてありがと。じゃあ一緒に行こう。」
「うん。」
廊下を歩きながら、随分と陽気なシュウを見る。
「・・・何か嬉しそうだね。」
「だって、癒霧君元気そうだから、良かったーって思って。」
「そんなこと?」
「そうだよ。」
「お気楽なやつ。」
「な、なんでよー!」
怒るシュウを笑いながら、いつもと違う教室へと向かった。
「あ、梛原君、黒板に書いといてくれてありがとう。」
早乙女さんがシュウに声をかける。
楽しそうに話す二人を見て、何となく目線をそらした。
委員会の作業を一人黙々とこなし、時々女子に話しかけられながら、気付いたら時間が過ぎていた。
帰る前に、いつもの教室へ大きめの荷物を運ぼうとした。
「あ、癒霧君。僕も手伝うよ。」
「良いよ。話、してな。」
「え?」
「早乙女さんと、話してなよ。」
声を小さくして、シュウに言った。
「ううん。良い。僕も荷物運ぶよ。」
そう言うとシュウは荷物を半分持ってくれた。
「どうしたんだよ。良いのか?」
いつもの教室に着き、荷物を下ろす。
備品を元の場所にしまう。
「良いの。癒霧君、心配だし。」
「お前は俺の親か。」
「そう、良い子に育ってね~。」
シュウが得意げに言う。
「からかうとその口また塞ぐぞ。」
慌ててシュウは手で口を押さえた。
顔が真っ赤だ。
「ははっ。お前反応がいちいち面白いな。」
「か、からかわないでよ!」
ガタン!
シュウが怒って机の上に手をついた、その時だった。
グサッ!
変な音が聞こえると同時に、嗅覚が反応する。
「いったっ・・・」
荷物箱から取り出したハサミの上に手をついたのだ。
「シュウ・・・。」
シュウは慌てて傷ついた手のひらをもう片方の手で押さえる。
「だ、大丈夫、ちょっと切っちゃっただけ・・・いたたっ。」
「保健室・・・行かないと・・・。」
上手く言葉が出てこない。
上手く、呼吸が出来ない。
「ゆ、癒霧君・・・?」
シュウがこちらを見る。
もう、眼が赤いのは自分で気付いていて、隠す余裕も無かった。
無意識にシュウの手を掴む。
傷から流れる血を、見つめる。
呼吸が荒くなる。
良い匂い・・・綺麗な色・・・舐めたい・・・飲みたい・・・。
「癒霧君・・・僕の血で良かったら、飲んで。」
その言葉にハッとする。
傷口をぎゅっと手で押さえ、シュウの身体を寄せ、もう片方の手で抱きしめる。
「・・・そういうこと言わないで・・・飲み干してしまいそう・・・。」
「癒霧君・・・。」
鼓動が早くなる。
目の前にシュウの首筋がある。
駄目だ・・・噛んだら駄目だ。
そっと抱き寄せていた手を離し、目線を他へ向ける。
「保健室・・・一人で行ける?俺この眼のままだと行かれないから、ごめん。」
目線をそらしたまま言う。
血のにおいが充満して、頭がクラクラする。
シュウは黙っている。
「お願い・・・早く、行って・・・。」
ギュっと目をつぶる。
するとシュウは何か意を決したかのように、目の前に怪我をした手のひらを差し出してきた。
「癒霧君に僕の血を飲んでほしい。飲んで。」
「やめてくれよ・・・。」
声が震える。
手で顔を覆って耐える。
「あ、もしかして、飲み溜めとかそういうのは出来ない感じ?」
いきなり突拍子も無いことを聞いてきた。
「・・・お前本当に天然だな。」
気が緩んだのか、顔を上げてシュウの傷を見てしまった。
見つめてしばらく黙り込む。
大丈夫・・・大丈夫・・・。
そっとシュウの腕を手に取る。
「血が垂れてる・・・勿体ない。」
「地味に痛いよ今・・・。」
「シュウ・・・俺が噛みそうになったら、引っぱたいて逃げて。」
牙を立てないように、そっと優しく、舌でシュウの血を舐めた。
ペロっ・・・ちゅっ・・・ペロっ・・・。
「う・・・。」
痛いのか、くすぐったいのか、シュウは目を細めて声をもらした。
美味しい。やっぱりどの血よりも美味しい。
息が荒れ、ますます鼓動が早くなる。
舐めながら、赤くなった瞳で真っ直ぐシュウを見つめる。
「ゆ、癒霧君・・・。」
頬を赤らめながら、俺の名前を呼んだ。
牙を・・・立てたい。
もっと欲しい。もっと飲みたい。
噛みつきたい。噛みついて飲み干してしまいたい。
このまま・・・全部・・・。
「癒霧君!!!」
名前を呼ばれ、我に返る。
慌てて手と顔を離す。
「ごめん・・・大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。」
シュウの手のひらを見ると、小さく噛みかけた赤い跡だけがあった。
「ごめん・・・本当に、ごめん・・・。」
頭がクラクラする。
まだ、眼は赤いままだ。
血のにおいも充満してる。
「大丈夫だって。意識も失ってないし。それに」
言い終わる前に力強く抱きしめた。
「俺シュウのことが好きなんだ・・・だから傷をつけたくない。」
「え?」
沈黙のまま、しばらく抱きしめていた。
「・・・ごめん。・・・俺今何って言った?」
自分で言ったことを聞き返す。
「え、えっと・・・。」
抱きしめていた腕をほどいて、そっぽを向き、頭を掻いた。
「ごめん・・・何か変なこと言ったかも知れないけど、忘れて。」
「え?」
「今まだ血のにおいがしてて、頭がクラクラするんだ。」
「そうなの?保健室行って休む?」
「・・・換気。換気する。」
そう言って窓を開けた。風が気持ちいい。
「はぁー。」
深いため息をつく。
「・・・シュウ・・・さっきの、忘れたい?」
「え?」
シュウの方へ向き直る。
「俺が牙を立てて血を吸えば、何も無かったことになるよ。」
「でももう、眼、赤くないよ。」
「お前相手ならすぐまた赤く染まるさ。」
「そ、それって・・・。」
シュウの顔が赤くなる。
「あ~あ。なんで言っちゃったんだ。隠すためにやってきた今までのことは何だったんだ・・・。」
「え?僕を好きってことを隠すために僕の血を吸ったの!?」
手で口元を覆い、目線をそらす。
「・・・癒霧君が顔赤いの初めて見たよ。」
「うるさい。口塞ぐぞ。」
「・・・良いよ。」
「は?」
思わず聞き返す。
「何か、僕も癒霧君のこと気になっちゃって・・・男同士だし、好きとかそう言うのなのかよく分かんないんだけど・・・何か・・・癒霧君に何かされても、嫌じゃ、ないんだよね・・・。」
余計に鼓動が早くなる。
「だから・・・さ。その・・・癒霧君がそうしたいなら・・・・・・あれ?また眼が赤くなってるよ。え?血、吸うの?」
「いや、そうじゃない。ごめん。ドキドキしちゃって・・・。」
手で顔を覆う。
「何か癒霧君、可愛い。」
「可愛いのはどっちだよ。」
そう言ってシュウに軽く口づけた。
シュウは慌てて離れ、手で口元を覆っている。
顔が真っ赤だ。
「ほ、本当にしてきた・・・!」
「して、良いんだろ?」
赤い瞳のまま、ニヤリと笑う。
「カッコいい・・・。」
「そりゃどーも。」
シュウの手を取る。
「シュウ・・・嬉しい。拒否んないでくれて、ありがと。」
「僕の、大事な人だもん。」
もう学校には生徒は誰も残っていないようで、シュウと手を繋いで帰った。


それから一週間した昼時、毎日中庭のベンチでシュウと過ごしていたが、その日は何故かシュウがそわそわしていた。
「なー、お前どうした?さっきから変だぞ。」
「や、ここなら誰にも見られないかなと思って。」
「ん?」
「あれから一週間経ったでしょ?誰かからもらってる?その・・・そろそろ欲しくなる頃かなと思って。」
「あー・・・チューして良いって意味?」
「ち、違います!」
シュウが顔を真っ赤にして言った。
「そ、それもまぁそうだけど・・・じゃなくて、その・・・血のこと。」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがと。」
「・・・誰からもらってるの?」
「誰からももらってないよ。」
「え。大丈夫なの?」
「ん~。まぁ、欲しくなったらちゃんと自分で狩りをするくらい出来るから。気にしないで。」
「そ、そっかぁ・・・。」
何だかシュウはガッカリしているようだった。
「どうしたの?」
「ねぇ・・・血をもらうのは、僕だけじゃ足りない?」
「え?」
「その・・・僕だけだったら良いなって、思っちゃう・・・。僕だけ見ててくれたら良いのになって・・・。」
思わずシュウを抱きしめる。
「そういうこと言われると・・・理性吹っ飛ぶから・・・。」
「え?」
「ほら、シュウのせいで眼が。」
腕をほどいて、シュウを見つめて赤くなった眼を見せる。
「わ、赤い~。本当綺麗だね。ずっと見てたくなる。」
「俺はつらいけどね。」

シュウの言うとおり、そろそろ誰かから血をもらわないといけない。
「杉谷~。番野君の今日の報告をしまーす。」
嫌な声だ。
「おい、無視すんな。報告しろっつったのはお前だろ。」
番野に腕を引かれ、非常階段へ連れて行かれる。
「誰からもらった?」
「シュウちゃん。」
一気に頭に血が上る。
ガタン!!!
腕を背中側へ捻って、押さえつける。
「いででで!ばっか!折れる!折れるだろが!!!」
「あいつに手出すなって言ったよな。」
「冗談!じょーだんだよ!」
手を離す。
「いって、お前マジいてぇ・・・手加減くらいしろよ・・・。」
番野を睨みつける。
「本当にあいつには手出してないんだろうな。」
「あー出してねぇよ。生憎、俺は女の血しか好まないんでね。誰が何の理由も無く男の血を飲むかよ。つーかお前すぐ眼真っ赤にし過ぎだろ。」
「お前がそういう態度取るからだろ。」
「はいはい。」
「で、誰から?」
「3年の~、瀧江先輩!ヤバいな!!!マジ、超美味かった!」
「あっそ。」
「あれ?お好みじゃなかった。俺は美味しいと思ったんだけどな。お前とは味覚が違うんだな。」
「一緒にすんな。じゃーな。」
番野を残して教室へ戻る。
だが番野は、何か閃いたように怪しい笑みを浮かべていた。

「シュウ~ちゃん。いるー?」
3組の教室に番野がやってきた。
手招きをして人気のいないところへ誘う。
「ば、番野君・・・僕、癒霧君から聞いたんだよ。ば、番野君も・・・ヴァ、ヴァンパイアだって。」
かなりの距離を置いてタジタジになりながらシュウが言う。
「あ、マジ?あいつやり返してきたな~。やーバレちゃ~仕方が無い。そう、俺も、何を隠そうヴァンパイアなんです。噛みつかれたい~?」
「遠慮しておきます。」
おどける番野に反し、シュウは即答した。
「っでさ、俺からビックニュースがあるんだけどさ。」
番野がシュウに近づき手で口元を覆いながら言った。
「え、何?」
「杉谷ってさ・・・ゲイっぽいんだよな。たぶんシュウちゃんのこと好きだぜ。」
シュウは顔を真っ赤にする。
「あれ?シュウちゃんももしかして杉谷のこと好きなの?」
「え、や。えーっと、ほら、ちょっとビックリして。」
顔を手で仰いでほてりを冷まそうとする。
「あーでも残念だね~。シュウちゃん、杉谷はシュウちゃんの血が目当てなんだと思うよ。」
「え?」
「だってシュウちゃん、すっごく美味しそうだもん。」
慌ててシュウは番野との距離を取る。
「あー大丈夫だよー。俺は手出さないから。」
番野がおどけて両手を挙げる。
「しかしつまんないなー。叶わぬ恋だと思ってたのに、君ら相思相愛なのか?」
「え、あ。いあ。その・・・。」
「シュウちゃん、君は天然な上に分かりやすいね、もの凄く。」
「うぅ・・・。」
ぐうの音も出ない。
「まぁでも、シュウちゃんにとっては儚い恋だと思うよ。シュウちゃんより美味しい血の女の子が現われれば、きっと杉谷はそっちへ行く。ヴァンパイアなんてそんなもんさ。あ、男もそうか、他にもっと良い子がいたらそっちへ行くよな。」
シュウは黙ったままだった。


週末、初めてシュウの家に遊びに行った。
どうしても来てほしいと言われて、とりあえず遊びに行った。
「いらっしゃい。」
笑顔で迎えてくれる。
シュウの部屋は意外と男らしくてあまり物が無く、ちょっとビックリした。
「癒霧君・・・」
「ん?」
名前を呼ばれたかと思うと、シュウが寄り添ってきた。
「ど、どうした?」
グリグリと頭を埋めてくる。
「やめろって。・・・眼が赤くなる・・・。」
慌ててシュウを引き剥がし、目線をそらす。
「僕だけにして・・・。」
「ん?なにを?」
「他の人からもらっちゃヤダ。血を吸うのは僕だけにして。」
涙ながらに訴えられた。
「シュウ・・・どうした?」
「・・・不安なんだ・・・。」
「なんかあった?」
「・・・番野くんに・・・言われた。」
「またあいつか・・・。シュウ、あいつと関わんない方が良い。何言われても気にすんな。」
「うぅ・・・だって・・・癒霧君が、他に美味しい血の子を見つけたら、その子のとこへ行っちゃうって・・・。」
「は?」
「僕、血が目的でも構わないよ。だから、僕だけにして。」
「シュウ・・・。」
バチンっとシュウの顔を両手で挟んだ。
「むにっ!」
「誰が血目的なんて言った?!それは番野の考えだろう。俺はそうは思わない。」
「ゆ・・・癒霧君・・・。」
「シュウ・・・。」
「・・・手、離して。」
「あー、ごめん。」
シュウの顔を挟んでいた両手を離す。
「ね、癒霧君、本当に誰からももらってないの?」
「もらってないね。」
「じゃぁ、そろそろ血を飲まないと、また身体に良くないんじゃない?」
「お前、やたらと飲ませようとしてくるな。」
「だって、どれくらい飲むものなのか、どれだけ飲まなくても耐えられるものなのか、僕から見ただけじゃ分かんないんだもん・・・。」
「まぁ、確かにそうだな。」
「ね、飲むなら、良いよ!どうぞ。」
そう言って姿勢を正し、俺の前で目をつぶった。
軽くため息をつく。
そして優しく抱きしめた。
「シュウと話したこと、今のこの時間、無かったことにしたくないから。だから吸わないよ。」
「癒霧君・・・。」
抱きしめていた腕をほどく。
「その代わりに・・・してほしいことがあるんだけど。」
真っ直ぐ見つめて言う。
「な、なに?」
しばらく見つめ合って沈黙が続く。
「・・・・・・目、つぶって。」
「え!」
驚いたようにシュウの身体がピクッと反応する。
「意味分かる?」
シュウの顔が真っ赤になっていく。
「え、えっと・・・。」
そのままうつむくシュウの頬にそっと手をやった。
うつむいたまま目をつぶっている。
「それじゃぁキスできないよ。」
「で、でも・・・。」
「嫌?」
「は、恥ずかしくて・・・。」
また優しく抱きしめる。
「じゃぁしばらくこれで・・・。」
そう言って抱きしめた腕を伸ばし、シュウの頭を撫でた。
「あ、ねぇ、癒霧君。」
「なに?」
抱きしめた腕をほどく。
「僕も一つお願いしても良い?」
「良いけど、なに?」
「その・・・牙、見ても良い?」
「え?見てどうするの?」
「や、何か、見てみたいなーって思って。」
「見てもしょーもないよ。」
そう言うもシュウは目を輝かせてこちらを見てくる。
少しため息をついて、口を開いた。
「ここ・・・見える?」
手で牙の位置を指差す。
「わー!本当だ!凄い!!!かっこいいー。」
「・・・・・・。」
そんなことを言われたのは初めてだ。
「ね、触っても良い?」
「い、良いけど・・・。刺さらないようにしてね。」
そう言って目をつぶり、もう一度口を開けた。
シュウの指が、優しく牙に触れてくる。
ドクン・・・。
鼓動が早くなる。
少し息が荒くなって吐息がもれる。
瞳を開く。
「あ、ごめん。」
赤くなった眼に気付いたのか、シュウが手を離した。
「良いよ。すぐ戻ると思うし。」
手で口元を隠し、目線をそらした。
目をつぶって収まるのを待つ。
「何かカッコいいねー。凄いなぁ。」
「別に・・・俺にとっては普通のことだし。」
「そっかー。僕もヴァンパイアだったらどうなってたのかなー。」
「シュウがヴァンパイアなら俺に噛みついてって、俺もシュウと同じように言ってたと思うな。」
「へへっ。」
シュウが嬉しそうに笑った。
「ね、癒霧君。血が足りない時は言って。」
「分かったよ。・・・じゃぁ、明日、いつもの昼の時間に、もらっても良い?」
「本当?うんうん。良いよ、僕の血をいっぱい飲んで。」
「いっぱいは駄目だ。シュウが貧血になっちゃう。」
二人で笑い合った。
手を握り合ったり、他愛も無い話をしたりして、幸せな時間を過ごした。

それからしばらくはシュウだけに血をもらって日を過ごした。
心配してくれて毎日のように飲む?っと聞かれるのには少し困ったが、定期的に血をもらえるのは有り難かった。
それもとてつもなく美味しい血だ。
毎度飲み干してしまいたい衝動を抑えるのに必死だ。
「何だよ。シュウちゃんからもらったのは報告無しなのか?報告は女限定ってこと?」
「なにが?」
体育の授業中、番野にヒソヒソと嫌みを言われる。
「最近顔色も良いみたいだし?何なら肌のキメも整ってるみたいだし?」
そう言って顎クイされる。
「触んな。」
そのまま見下ろして睨み付ける。
周りで見ている女子達がキャーキャー騒いでいる。
「つまんねぇな~。仲良くなっちゃったみたいで。俺は一生懸命正体隠して、もらってるって言うのにさ・・・。」
「次お前の番だぞ、早く走れ。」
無視して体育の授業に急かす。
はいはいっと言いながら去って行った。

体育の授業を終え、教室に戻る時だった。
「どうしたのー?梛原君!?」
声を聞いて、慌てて駆けつけた。
「どうしたんですか?」
「え?杉谷君!?」
周りに居合わせた女子達が驚く。
「だ、大丈夫。ちょっと立ちくらみしただけだから。」
フラつきながら壁に手をついてシュウが歩いている。
「大丈夫かお前、保健室行こう。」
「大丈夫だよ。」
「だーめーだ。保健室、行くぞ。」
そう言って保健室へ連れて行った。
「ごめんね。」
「いや、俺の方こそ・・・ごめん・・・俺のせいで・・・。」
「癒霧君のせいじゃないよ。大丈夫。」
「俺のせいだろう、どう考えても。最近ちょっともらい過ぎた・・・ごめん。」
「気にしないで。僕が好きで飲んでもらってるだけだから。」
シュウは微笑む。
「ほら、少し休みな。先生に言っとくから。」
「ありがとう。」
そう言うとシュウは静かに寝入った。

やっぱり一人からもらい続けるのは限界があるのだろうか。
もう少し、血をもらう頻度を減らして、調整していかなければならない。
「すーぎーやくん。」
放課後、またしても番野が絡んできた。
「聞いたよ~。シュウちゃん、保健室へ運んだんだって。仲良し~。」
肩に腕を乗せられる。
「退け。」
「まーまー。ちょっと面貸せよ。」
そう言ってまた人気の無い非常階段へ連れて行かれる。
嫌な予感がする。
「俺さー、思ったんだよね。ここでもし、シュウちゃんの血が尽きてしまったらって。」
「飲み干しはしないさ。」
「もらってることを認めたな。」
黙り込む。
「まぁ良い。単刀直入に言う。」
真っ直ぐ見つめられる。
「何だよ。」
「杉谷、俺と付き合え。」
「・・・・・・・・・は?」
「お前ゲイなら俺ともいけるだろ?俺さ、お前みたいなやつ好きなんだよねー。・・・シュウちゃんに手出されたくないんでしょ?」
ドクン。
嫌な汗がつたう。
「飲み干すのは何もお前じゃ無くたって出来るわけよ。あんだけ血の量が減った状態なら、わけないさ。」
番野につかみかかろうとする。
「おぉっと、脅しても無駄だぜ。もうあそこまで弱ってて俺が手出しちまったら時既に遅し、だ。」
強く拳を握る。
「なー。杉谷くーん。仲良くやろうや。」
「断る。だいたい、付き合うって何だよ。お前男好きなのか?」
「男好きはお前だろ?」
「俺は男が好きなわけじゃない。好きになったのがたまたま男だったってだけだ。」
「お、パンセクシュアルってやつか?まー良いよ。付き合えってのは冗談さ。・・・・それより杉谷君、俺の眼にそろそろ気付かないのかな?」
番野の眼を見て、後ずさりする。
番野の眼は真っ赤に染まっていた。
「何を考えてる?」
「シュウちゃんに手出されたくなかったら、自分で飲み干せや。人の血を吸う、ヴァンパイアってのはそういうい生き物だ。」
逃げよう振り返った時、番野が掴みかかって来た。
「止めろっ・・・離せ!・・・・・・いっ!!!」
ドクン・・・!
ジュルッ・・・
自分の首元で鈍い変な音がする。
後ろから首元めがけて牙を立てられた。
「は、なせ・・・!」
番野の頭を掴み、無理矢理引き剥がす。
ボタボタっ。
自分の血が滴り落ちた。
傷口を手で覆う。
「はぁ・・・はぁ・・・ヴァンパイアに噛みつくとか・・・馬鹿かお前・・・。」
「へぇー男のなのにお前結構美味いなー。」
赤く染まった口元を拭いながら番野が言う。
頭がクラクラする・・・だいぶ飲まれた・・・。
「・・・お前ばっか脳天気に過ごしてるのが気にくわない。つまんねーんだよ。愛しい人なんかどうせ先に逝っちまう。俺たちはヴァンパイア同士、仲良くやってかなきゃいけないわけ。人間に現を抜かして俺らの本質を忘れたら後で痛い目を見るって、俺は大事なお友達に警告してるわけよ。」
「大事なお友達なら噛みつきゃしないと思うがな。」
「じゃーお前はどうなんだよ。」
ドクン。
「愛しい人に牙を立てることに罪の意識は無いわけ?下手したら殺しちまうかもしれないのになぁ。」
ドクン・・・
「まぁ相思相愛らしいから?儚く切ない恋心を燃やして、一時の感情でうっかり」
しゃべり続ける番野の首筋に、思いっきり牙を立てた。
「ぐっ・・・おま・・・んにすんだ・・・!」
ジュル・・・ジュル・・・。
番野がぐったりと力なく膝をつく。
「お前、まっず・・・。」
口元を拭って言った。
「や、やり返したってとこか・・・。それにしちゃ随分飲んでくれるじゃねぇか。」
「お前はあんだけ彼女がいるんだから良いだろ。好みの子に沢山もらえ。貴重な血をお前になんかにやらん。一滴たりともな。」
そう言い捨てて、その場を去った。
「首って痛ぇな。こりゃ記憶消えなきゃトラウマになるわ。」
首を押さえながら、ブツブツと呟いた。


ジュルッ・・・
ジュルッ・・・
暗闇の中、鈍い音がする。
口の中に広がる格別の味・・・柔らな舌触り・・・。
辺りに漂う血のにおい・・・。
<ゆ・・・ぎり・・・く・・・。>
美味しい・・・美味しい・・・。
ジュルっ・・・。
ジュルッ・・・ジュル・・・。
シュウの腕がだらんと力なく垂れた。
ジュッ・・・ズズッ・・・ズッ・・・。
あぁ、美味しかった。
<あれ・・・?シュウ・・・?>
シュウの顔を見ると真っ青になっていて・・・呼吸を、していない。
<シュウ・・・?>
自分の手を見ると、真っ赤に染まっている。
気付いたら、辺り一面も真っ赤に染まっていた。
それを見て、飲み干してしまったとに気付く。
<シュウ・・・シュウ!!!>
「シュウ!!!」
焦って名前を叫ぶ。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
勢いよく起き上がると、気付くと辺りはいつも通りの自分の部屋。
「また・・・この夢か・・・。」
頭をグシャグシャと掻き乱し、両手で顔を覆う。
汗をぐっしょりとかいていて、呼吸がしばらく落ち着かない。
寝起きだというのに眼は真っ赤だ。

最近どうも夢見が悪くてならなかった。
「おはよー、癒霧君。」
登校中、シュウと会った。
「おはよう。」
「なんか・・・顔色悪いけど、大丈夫?・・・いる?」
シュウが自分の腕を差し出し、もう片方の手で指を立てて指し示す。
「いや、大丈夫だよ。」
笑顔を見せて言う。
飲み干したくない。できることならもう飲みたくない。
相変わらず、その葛藤の思いが続いていた。
お昼休みには、いつもの中庭でシュウからしつこく聞かれたが、いらないよと断った。
フッと、何時ぞや番野に言われた言葉を思い出す。
「・・・飲み干す・・・。」
 <愛しい人に牙を立てることに罪の意識は無いわけ?
下手したら殺しちまうかもしれないのになぁ。>
「あいつ・・・本当嫌なこと言うな・・・。」
頭を掻きむしり、机に突っ伏した。
午後の授業もあまり頭に入ってこなかった。
放課後、1組の女子に呼び出され、実習室へ行った。
「なに?」
「す、杉谷君・・・好きです。付き合ってください!」
勢いよく頭を下げられる。
小さくため息をつく。
「・・・ごめんね。俺、他に好きな人がいるんだ。」
女の子は顔を上げた。泣きそうな顔をしている。
「そう・・・だよね。私の方こそごめん・・・。」
うつむく姿・・・フッと白い首筋が目に入る。
「・・・・・・・・・。」
「あ、ありがとう。聞いてくれて。・・・それだけだから。」
「待って。」
去ろうとする女子の腕を掴む。
「え?」
「・・・一つ、お願い聞いてもらっても良い?」
そう言って、目を赤く染めた。

昼休み、いつもの中庭、いつものようにシュウと2人で昼食を取る。
「ゆ、癒霧君・・・。」
シュウがじっと俺の顔を見てくる。
「なに?」
「・・・な、なんでもない。」
「なーんーだーよ。」
「ひゃぁあ!」
シュウの両耳を掴んでグリグリといじる。
「・・・耳、弱いの?」
シュウの耳を掴んだまま、手を止めて尋ねる。
「そ・・・そんなこと・・・うっ・・・。」
先程よりも優しく撫でるように触る。
「うぅうう・・・。」
目をぎゅっとつぶり顔を真っ赤にして、うつむきたそうにしながらシュウが声をもらす。
手を離して、シュウの顔をのぞき込む。
「・・・可愛い。」
「い、意地悪しないで!」
「で?なに?なんか俺に聞きたいことあったんじゃないの?」
「な、なんでもないって・・・。」
「また耳触るぞ。」
「ひっ、止めて!」
そう言うと慌てて両耳を手でガードしてきた。
可愛い。
シュウが何かを気にしている様子だったが、それ以上のことは聞かなかった。

放課後、今日は理科室で人を待った。
前に血をもらったことのある3年・・・瀧江先輩だ。
「杉谷君!ごめんね、待った?」
「いえ、さっき来たとこです。」
「用ってな~に?」
「お願い、聞いて欲しくて。」
「え・・・あたしに?」
瀧江先輩は顔を赤くする。
「はい。」
長い髪を撫で、背中の方へ回す。
白い首筋に、小さな傷跡が残っている。
「・・・番野に、やられたんですか?」
「え?ど、どうして・・・」
「まだ傷治ってないのに・・・ごめんなさい。」
「なにが?」
瀧江先輩の疑問に答えず、そのまま白い首筋に牙を立てた。

赤い眼が戻るのを待って、教室を出た。
「よぉ。杉谷。」
階段を降りると、廊下で番野と出くわした。あいつももらった後か。
「ちょーど良いとこにいんな。お前ももらった後か?」
「あぁ。」
「番野君は今日、5組の子から頂きました~。」
番野が手を上げ、おどけて言う。
「お前はまたシュウちゃんからもらってんの?そろそろ飲み干しちゃうんじゃない?」
「もらってない。」
「あら、そーなの?なんだ、やっぱ俺の忠告ちゃんと聞いてるんだな。お前って意外と素直なの?」
黙り込む。
「そんで、誰からもらった?ちゃんと報告してくださーい。」
「3年の・・・瀧江先輩からもらった。」
すると何故か番野が黙り込んだ。
「聞いてる?」
「あー・・・そう。」
「どうした?」
「あのさ、ヴァンパイアに噛まれて、そのことを覚えてるやつって今までいた?」
「いないよそんなやつ。お前に噛まれたことはよく覚えてるけどな。」
番野を睨む。
「だよなー・・・。」
「なんだよいきなり。」
「や、なんでも。」
いつものようなおどけた様子のない番野を不思議に思ったが、気に留めはしなかった。
「じゃーな。」
そう言って立ち去ろうとする。
「あー、ちょっと待って。」
「なに?」
振り返って怪訝そうな顔を向ける。
「俺、さ・・・ほら、前に超美味いやつがいるって言ったじゃん。」
「誰?」
「だから、ほら、そのー、あれだ。お前がさっき飲んできた・・・。」
「瀧江先輩?」
「そう!俺凄い好みの味でさ~。」
「あっそ。」
どうでもいい話だと思い、向き直って帰ろうとする。
「まー、待て待て。最後まで聞けや。」
腕を掴まれ、止められる。
「・・・俺、瀧江先輩を飲み干そうと思ってる。」
「は?!」
振り返って番野を見たが、いつになく真剣な表情だ。
「なんでそんなことする必要がある?」
「お前には関係ない。」
眉をひそめ怪訝そうに見る。
「だから・・・瀧江先輩に手出すな。」
「・・・お前、瀧江先輩に惚れてんの?」
「いやいや。そういうわけじゃないさ。ただ、好みの味は飲み干したいくらい美味いってことよ。」
「ふぅーん。どうでも良い。」
「くぁ~!また出たよ!それ!超ムカつく!!!」
「・・・じゃーな。」
掴まれた腕を振りほどいて、帰ることにした。


学校を終えて、今日はシュウと2人でカラオケに行くことになった。
シュウの唄声はとても綺麗で、さっきからシュウにばかり歌わせている。
「ね~、癒霧君も歌おうよ。」
「俺は歌うよりピアノ弾く方が・・・。」
「癒霧君の歌聞きたい~。」
せがまれて一曲歌うことになった。
「う、歌ってる時もカッコいい・・・何か悔しい・・・。」
歌じゃないところの感想をもらった。
「失礼しまーす。」
店員さんが入ってきて、何故かパフェを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞー。」
シュウはパフェを見て目を輝かせている。
「シュウ・・・いつの間に頼んだの?」
「うん!食べよ。」
笑顔で言われると、それ以上何も言えない。
「じゃあ。はい・・・あーん。」
スプーンでアイスクリームの部分を取り、シュウの口元へ運ぶ。
「え?じ、自分で食べれるよ。」
「ほら、アイス垂れるぞ。早く。」
シュウは顔を赤くしながら、アイスを頬張った。
「美味しい?」
「は・・・はい・・・。」
うつむいている。
「じゃあ俺も・・・。」
そう言って口を開けて、指差した。
「ほわぁー・・・。」
シュウは俺の口をのぞき込んで牙を眺めている。
「・・・・・・シュウ、牙を見ろとは言ってない。」
「あ、ごめん。」
2人で笑い合った。

「・・・ねぇ、癒霧君?」
「なに?」
「番野君に何か言われたの?」
「なにが?」
「・・・最近、僕から血をもらってくれない・・・。」
シュウが寂しそうに言った。
そっとシュウを抱きしめる。
「シュウ、俺は血をもらうためにシュウと一緒にいるんじゃない。」
「うん・・・。」
抱きしめながら続ける。
「血をもらう代わりはいくらでも効くけど、大事な人の代わりは効かない。シュウの代わりは誰もいないんだよ。」
腕をほどいて、シュウを見つめる。
「シュウが倒れて、これじゃいけないって思った。だからシュウだけからもうらうことはもうしない。」
「僕だけにしてって、言ったのに・・・。」
シュウはうつむく。
「無理だよ・・・シュウの身体が壊れちゃう。」
「良いよ!それでも良い。」
顔を上げて真っ直ぐ見つめてきた。
「良いわけないだろ。」
また強く抱きしめる。
「だいたい、俺より寿命が何十年も短いんだぞ。・・・失いたくないんだ・・・分かってよ・・・。」
シュウは黙ったまま。
「血は他の人からもらうから・・・一緒にいて。シュウと一緒にいられれば俺はそれで良い。例え美味しい血のやつと出会っても、どんなやつからもらっても、他のやつのとこには行かないよ。ずっとシュウの側にいる。側にいたいんだ・・・。」
「癒霧君・・・。」
「・・・それに・・・お前に牙を立てて俺といたことを忘れてほしくもない・・・一秒たりとも。」
しばらく抱き合ったまま、愛しい時を過ごした。

カラオケを出て、手を繋いでシュウを家まで送る。
「今日はありがと!楽しかった。」
シュウが笑顔を見せてくれた。
それだけで嬉しい。
「俺も。楽しかった。」
笑顔を返す。


「・・・今この時を、シュウと一緒に過ごせるのが嬉しい。」

例えこの時が永遠に続かなくても。ただただ今を大事にして生きていたい。
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