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第1部
僕、16歳だから
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「ナオ様、私も挨拶をしてもよいでしょうか」
梛央の、涙をいっぱいにためた微笑みに見惚れながらヴァレリラルドはおずおずと申し出た。
梛央は小さく頷く。
「私はこの国の王太子のヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルクです。後ろに控えるのが私の護衛のケイレブ、近衛騎士のイクセル、クルームです。この3人と、他に4人の近衛騎士がここに滞在中の私の護衛、警護にあたっています」
その後ろで礼を執るのがヴァレリラルドに紹介されたケイレブ、イクセル、クルームのようだった。
「ヴァレ……リラルド……様?」
自分より幼い王太子が大人びた言葉づかいをすることに梛央は少し驚く。
「ヴァルとお呼びください。王太子といっても8歳ですから」
ヴァレリラルドが自分より8歳も年下だということに改めて驚く梛央。日本でいえば中学生くらいの年齢だろうと梛央は勝手に思っていた。
「じゃあ、ヴァル? あの、今さらだけどお花、ありがとう。お礼が遅くなってごめんなさい」
梛央は寝台に置かれたままの花束に視線を向ける。
今まで自分のことに精一杯で花をもらったことも心にはなかった梛央だったが、こうして花を眺めると心が慰められた。
心が穏やかになる淡い色彩の花を組み合わせた花束に、どういう気持ちでヴァレリラルドがこの花を選んでくれたのかがわかるような気がした。
梛央の気持ちを慰めようと気遣ってくれていたことが伝わってくる優しい色使いの花束だった。
「ナオ様が「ナオでいいよ」」
自分がヴァルと呼んでいいなら、ヴァルもナオと呼ぶべきだ、と梛央は思った。
「ナオ……。確かに私はナオに早く元気になってもらいたくて花束を作りました。ナオが元気になってくれたらお礼の言葉がなくても私は嬉しいです。でも、さきほど無礼をした私の侍従は、礼を返さなかったからとナオに詰め寄ったのでしょう? 侍従のしたこととはいえ恥ずかしい。けれど侍従の責任は私の責任です。申し訳なく思います」
頭をさげるヴァレリラルド。
「殿下のせいではありません。シモン殿は侍従の身でありながら殿下のなさることを否定するところがありましたが、まさかこのような暴走を起こすとは。侍従としての資質に問題があったとしか思えません」
サミュエルは、あろうことか愛し子に無礼を働いたシモンを厳しく批判した。
「侍従を管理できなかったのは私の至らないところですが、私としてもナオに横暴な振る舞いをしたことは許せない。しかるべき対応をする」
ヴァレリラルドも強い意志で言い切る。
「ヴァルは8歳なのに大人みたいなことを言うんだね」
当の梛央はヴァレリラルドの言葉に純粋に感心していた。
日本でいえば8歳は小学2年生。
思わずランドセルを背負うヴァレリラルドを想像して、とてつもない違和感を感じる梛央だった。
「殿下は王太子であらせられますので、お小さい頃から言葉や話し方の講義を受けていらっしゃいます。シモン殿も私も高貴な方にお仕えすべく言葉遣いや礼儀作法を学んできたのですが、シモン殿はもっと侍従として立場や使命も学んでおくべきでしたね」
「テュコも学んできたの? いくつから?」
「私は6歳の頃から本格的に講義を受けてきました。まだ6年しか経っていないのですが」
「ん? 6歳の時から6年? え? テュコはいくつ?」
「12歳です」
「……え? ぇぇ……、あの、テュコ。ちょっと立ってくれる?」
梛央はテュコを立たせると、自分も寝台から降りてその横に立つ。
「ナオ様? 立ち上がっても大丈夫ですか? お怪我をされていますし二日ほどお食事もされていないのに」
「いいから、え……同じくらい?」
並んで立つテュコと目線の高さがほぼ同じで、梛央は助けを求めるようにサリアンを見る。
「少しだけナオ様がお高いようですが、ほぼ同じくらいですね」
「そうなんだ。テュコは大きいんだね」
16歳としてのプライドが折れかけた梛央だったが、思いなおしてテュコが大きい説を提唱した。
「いいえ、私は大きい方でも小さいほうでもありません。同じ年の者の中では平均です。騎士見習いたちはもっと大きいですから」
あっという間にテュコが大きい説が砕け散る。
「平均……。じゃあ、僕はいくつに見られてるの?」
「ナオ様と同じ年くらいの侍従を、ということで私に白羽の矢が立ちましたので」
テュコに言われて梛央はがっくりと寝台に座り込む。
「ナオ様、もう一度布団の中にお戻りください」
やはり急に起き上がったのが体には負担だったのだ、とテュコはおろおろする。
「ナオ様、失礼します」
フォルシウスが進み出て梛央を抱えて寝台に戻し、枕を背もたれにして上半身を寄りかからせる。
「ナオ様、私は癒し手と呼ばれる治癒能力を持っております。お怪我を診せていただき、治せるものは治してもよろしいでしょうか。」
「……さい」
「はい?」
「診察と治療をしてくれるのなら、お願いします。でも、僕16歳だから」
12歳のテュコと同じくらいの身長だったことがショックな梛央は涙目で訴える。
「16歳……」
とても16歳には見えないのだが、必死に訴える梛央の様子が微笑ましく思う面々だった。
※※※※※※※※※※※※※※
前話あたりから、ようやく総愛されモードに入ってきました。
まだ説明回がはいってくる予定ですが、総愛されモード全開も近いです。
シリアス展開は苦手なのでここまでが長かったー。
梛央の、涙をいっぱいにためた微笑みに見惚れながらヴァレリラルドはおずおずと申し出た。
梛央は小さく頷く。
「私はこの国の王太子のヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルクです。後ろに控えるのが私の護衛のケイレブ、近衛騎士のイクセル、クルームです。この3人と、他に4人の近衛騎士がここに滞在中の私の護衛、警護にあたっています」
その後ろで礼を執るのがヴァレリラルドに紹介されたケイレブ、イクセル、クルームのようだった。
「ヴァレ……リラルド……様?」
自分より幼い王太子が大人びた言葉づかいをすることに梛央は少し驚く。
「ヴァルとお呼びください。王太子といっても8歳ですから」
ヴァレリラルドが自分より8歳も年下だということに改めて驚く梛央。日本でいえば中学生くらいの年齢だろうと梛央は勝手に思っていた。
「じゃあ、ヴァル? あの、今さらだけどお花、ありがとう。お礼が遅くなってごめんなさい」
梛央は寝台に置かれたままの花束に視線を向ける。
今まで自分のことに精一杯で花をもらったことも心にはなかった梛央だったが、こうして花を眺めると心が慰められた。
心が穏やかになる淡い色彩の花を組み合わせた花束に、どういう気持ちでヴァレリラルドがこの花を選んでくれたのかがわかるような気がした。
梛央の気持ちを慰めようと気遣ってくれていたことが伝わってくる優しい色使いの花束だった。
「ナオ様が「ナオでいいよ」」
自分がヴァルと呼んでいいなら、ヴァルもナオと呼ぶべきだ、と梛央は思った。
「ナオ……。確かに私はナオに早く元気になってもらいたくて花束を作りました。ナオが元気になってくれたらお礼の言葉がなくても私は嬉しいです。でも、さきほど無礼をした私の侍従は、礼を返さなかったからとナオに詰め寄ったのでしょう? 侍従のしたこととはいえ恥ずかしい。けれど侍従の責任は私の責任です。申し訳なく思います」
頭をさげるヴァレリラルド。
「殿下のせいではありません。シモン殿は侍従の身でありながら殿下のなさることを否定するところがありましたが、まさかこのような暴走を起こすとは。侍従としての資質に問題があったとしか思えません」
サミュエルは、あろうことか愛し子に無礼を働いたシモンを厳しく批判した。
「侍従を管理できなかったのは私の至らないところですが、私としてもナオに横暴な振る舞いをしたことは許せない。しかるべき対応をする」
ヴァレリラルドも強い意志で言い切る。
「ヴァルは8歳なのに大人みたいなことを言うんだね」
当の梛央はヴァレリラルドの言葉に純粋に感心していた。
日本でいえば8歳は小学2年生。
思わずランドセルを背負うヴァレリラルドを想像して、とてつもない違和感を感じる梛央だった。
「殿下は王太子であらせられますので、お小さい頃から言葉や話し方の講義を受けていらっしゃいます。シモン殿も私も高貴な方にお仕えすべく言葉遣いや礼儀作法を学んできたのですが、シモン殿はもっと侍従として立場や使命も学んでおくべきでしたね」
「テュコも学んできたの? いくつから?」
「私は6歳の頃から本格的に講義を受けてきました。まだ6年しか経っていないのですが」
「ん? 6歳の時から6年? え? テュコはいくつ?」
「12歳です」
「……え? ぇぇ……、あの、テュコ。ちょっと立ってくれる?」
梛央はテュコを立たせると、自分も寝台から降りてその横に立つ。
「ナオ様? 立ち上がっても大丈夫ですか? お怪我をされていますし二日ほどお食事もされていないのに」
「いいから、え……同じくらい?」
並んで立つテュコと目線の高さがほぼ同じで、梛央は助けを求めるようにサリアンを見る。
「少しだけナオ様がお高いようですが、ほぼ同じくらいですね」
「そうなんだ。テュコは大きいんだね」
16歳としてのプライドが折れかけた梛央だったが、思いなおしてテュコが大きい説を提唱した。
「いいえ、私は大きい方でも小さいほうでもありません。同じ年の者の中では平均です。騎士見習いたちはもっと大きいですから」
あっという間にテュコが大きい説が砕け散る。
「平均……。じゃあ、僕はいくつに見られてるの?」
「ナオ様と同じ年くらいの侍従を、ということで私に白羽の矢が立ちましたので」
テュコに言われて梛央はがっくりと寝台に座り込む。
「ナオ様、もう一度布団の中にお戻りください」
やはり急に起き上がったのが体には負担だったのだ、とテュコはおろおろする。
「ナオ様、失礼します」
フォルシウスが進み出て梛央を抱えて寝台に戻し、枕を背もたれにして上半身を寄りかからせる。
「ナオ様、私は癒し手と呼ばれる治癒能力を持っております。お怪我を診せていただき、治せるものは治してもよろしいでしょうか。」
「……さい」
「はい?」
「診察と治療をしてくれるのなら、お願いします。でも、僕16歳だから」
12歳のテュコと同じくらいの身長だったことがショックな梛央は涙目で訴える。
「16歳……」
とても16歳には見えないのだが、必死に訴える梛央の様子が微笑ましく思う面々だった。
※※※※※※※※※※※※※※
前話あたりから、ようやく総愛されモードに入ってきました。
まだ説明回がはいってくる予定ですが、総愛されモード全開も近いです。
シリアス展開は苦手なのでここまでが長かったー。
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