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第1部
はぁはぁも・・・。はぁ・・・
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食事が終わると、部屋の中に細長いテーブルがいくつか運び込まれた。
そこに白いクロスがかけられ、即席の展示台ができあがると、アルテアンたちが持ち込んだ数十の生地が並べられる。
「夜会用の服を数着、お茶会に招かれた時の服も数着、普段着、乗馬用の服、それに合わせた靴、小物を仕立てます。ナオ様からのご要望は何かございますか?」
テュコに言われて梛央は首を振る。
「この国の慣習がよくわからないから、テュコとアイナとドリーンに任せてもいい? 個人的に作ってほしいものはあとで言うね?」
「はい。そのようにしましょう。では採寸からですね」
テュコはアルテアンに近づくと、アルテアンにしか聞こえない声で「ナオ様に触るのは最小限にしてください。できないならサミュエル殿を呼びます。王都追放ですませませんよ」と一息でまくしたててにっこり笑う。
「もちろんですぅ。ナオ様、採寸いたしますからシャツブラウスだけお脱ぎください」
身をくねらせるアルテアンの息遣いは荒く、
「ナオ様。いかがわしく見えるアルテアンですが、これは服を仕立てるためには必要な作業です」
残念なお知らせをするアイナ。
「お仕事だからね」
梛央は素直に頷く。
国王陛下に指名されたのならきっと腕のいい仕立て師なのは間違いないだろう。納得しながら梛央はアイナがシャツブラウスを脱がせていくのを黙って見ていた。
「ご協力ありがとうございます」
「ナオ様に触れるのは最小限でお願いしますね」
上半身が下着だけになった梛央を隠すようにしながら、アイナはアルテアンに念を押す。
「触れるときは息を止めるんだよ。ちょっとでもナオ様に向かってはぁはぁしたら切るからね」
性的なものを匂わせたなら切るとサミュエルに言われたサリアンは、ならば自分も梛央の前でいかがわしい言動をした者を切ってもいいはずだと考えている。
「はぁはぁも……。はぁ……承知しましたぁ」
アルテアンは息をとめてメジャーで素早く梛央の体を測っては、呼吸しながら紙に数字を記入していく。さすがに仕立て師だけあって測り方は手慣れていて素早く、それを何回も繰り返して採寸は終わった。
梛央はアイナにシャツブラウスを着せてもらい、少し離れたカウチソファでドリーンのいれたお茶を飲みながら、即席の作業台でアルテアンとテュコがお針子たちが並べた生地を見て話をしているのを見ていた。
「服を作るのって大変なんだね」
「貴族はそうですね。平民になると既製品を買うか、古着屋で買うか、の二択です」
サリアンも梛央と一緒にお茶を飲みながら作業を見守っている。
「前の世界でも服を仕立てるのはエリートサラリーマンかお金持ちだけだったよ。普通の人は既製品を買ってズボン丈を合わせるくらいだった」
「それでサイズは大丈夫なの?」
「うん。だいたい合うよ。メーカーによって多少サイズ感が違うから、自分にフィットしないものは気に入ってても諦めて、別のを買うこともあったけど。靴は同じデザインが5ミリ単位でサイズがあるから、だいたい大丈夫」
「同じ靴が寸法違いで売られてるの?」
「うん。それが当たり前の国だった」
「こっちじゃ自分の大きさに合わせて作るか、若干大きいくらいは詰め物をして履くなぁ」
「向こうじゃ、オーダーメイドの方が高いんだよ」
アイナとドリーンもアルテアンとテュコの話に加わり、次々とデザインと生地が決まっていく。
しばらくするとあらかた決まったようで、
「ナオ様、お待たせしました。必要な注文は終わりましたよ」
テュコたちが梛央の周りに戻ってきた。
「夜会の服は大至急取り掛かっちゃいますわ。旅に必要なものは出発日までには間に合わせます。安心しておまかせあれ。それ以外のものは王城にお届けしておきますね」
「ナオ様がほしいものはどんなものですか?」
「んー、ほしいのはスウェットなんだけど」
テュコに言われて、梛央はどう説明すればいいのか少し迷った。
「スウェット?」
「この国のことがよくわからないからどう説明していいのかわからないんだけど、前いたところでは動きやすいから運動するときに着ていたんだ。ダンスの練習もスウェットだったし、パジャマ用のスウェットも持ってたよ。フードのついたものはパーカーって言ってた」
「運動するときにも寝間着にもなる……」
アルテアンもテュコも、運動する服が寝間着にもなるということが結びつかなかった。
「ここの人たちって運動する時はどんな格好なの?」
「ほぼ普段着ですね。騎士の訓練の時は騎士服の上着だけを脱いで行います」
「汗かかない? ズボンが汚れたら?」
「汗をかいたら着替えますし、ズボンが汚れたら履き替えて洗濯です。魔法が使える者は洗浄の魔法で綺麗にできますが」
「魔法すごいね。でも汗を吸う素材の服はないの?」
「汗を吸う素材、ですか?」
「スウェットって、もともと汗って意味もあるんだ。汗を吸って、吸った汗をすぐ乾かすって性能があって防寒性もあって。だから運動するときに着たり、パジャマ代わりに着る人もいるんだ」
「そういう生地はないですね。実際にどのような生地なんですか?」
アルテアンに言われて、
「そうだ、テュコ。僕がここに来た時に着ていた服ってどこにあるのかな?」
梛央は思い出したようにテュコに聞いた。
「それなら洗浄して保管しています。お持ちしますか?」
「うん、お願い」
そこに白いクロスがかけられ、即席の展示台ができあがると、アルテアンたちが持ち込んだ数十の生地が並べられる。
「夜会用の服を数着、お茶会に招かれた時の服も数着、普段着、乗馬用の服、それに合わせた靴、小物を仕立てます。ナオ様からのご要望は何かございますか?」
テュコに言われて梛央は首を振る。
「この国の慣習がよくわからないから、テュコとアイナとドリーンに任せてもいい? 個人的に作ってほしいものはあとで言うね?」
「はい。そのようにしましょう。では採寸からですね」
テュコはアルテアンに近づくと、アルテアンにしか聞こえない声で「ナオ様に触るのは最小限にしてください。できないならサミュエル殿を呼びます。王都追放ですませませんよ」と一息でまくしたててにっこり笑う。
「もちろんですぅ。ナオ様、採寸いたしますからシャツブラウスだけお脱ぎください」
身をくねらせるアルテアンの息遣いは荒く、
「ナオ様。いかがわしく見えるアルテアンですが、これは服を仕立てるためには必要な作業です」
残念なお知らせをするアイナ。
「お仕事だからね」
梛央は素直に頷く。
国王陛下に指名されたのならきっと腕のいい仕立て師なのは間違いないだろう。納得しながら梛央はアイナがシャツブラウスを脱がせていくのを黙って見ていた。
「ご協力ありがとうございます」
「ナオ様に触れるのは最小限でお願いしますね」
上半身が下着だけになった梛央を隠すようにしながら、アイナはアルテアンに念を押す。
「触れるときは息を止めるんだよ。ちょっとでもナオ様に向かってはぁはぁしたら切るからね」
性的なものを匂わせたなら切るとサミュエルに言われたサリアンは、ならば自分も梛央の前でいかがわしい言動をした者を切ってもいいはずだと考えている。
「はぁはぁも……。はぁ……承知しましたぁ」
アルテアンは息をとめてメジャーで素早く梛央の体を測っては、呼吸しながら紙に数字を記入していく。さすがに仕立て師だけあって測り方は手慣れていて素早く、それを何回も繰り返して採寸は終わった。
梛央はアイナにシャツブラウスを着せてもらい、少し離れたカウチソファでドリーンのいれたお茶を飲みながら、即席の作業台でアルテアンとテュコがお針子たちが並べた生地を見て話をしているのを見ていた。
「服を作るのって大変なんだね」
「貴族はそうですね。平民になると既製品を買うか、古着屋で買うか、の二択です」
サリアンも梛央と一緒にお茶を飲みながら作業を見守っている。
「前の世界でも服を仕立てるのはエリートサラリーマンかお金持ちだけだったよ。普通の人は既製品を買ってズボン丈を合わせるくらいだった」
「それでサイズは大丈夫なの?」
「うん。だいたい合うよ。メーカーによって多少サイズ感が違うから、自分にフィットしないものは気に入ってても諦めて、別のを買うこともあったけど。靴は同じデザインが5ミリ単位でサイズがあるから、だいたい大丈夫」
「同じ靴が寸法違いで売られてるの?」
「うん。それが当たり前の国だった」
「こっちじゃ自分の大きさに合わせて作るか、若干大きいくらいは詰め物をして履くなぁ」
「向こうじゃ、オーダーメイドの方が高いんだよ」
アイナとドリーンもアルテアンとテュコの話に加わり、次々とデザインと生地が決まっていく。
しばらくするとあらかた決まったようで、
「ナオ様、お待たせしました。必要な注文は終わりましたよ」
テュコたちが梛央の周りに戻ってきた。
「夜会の服は大至急取り掛かっちゃいますわ。旅に必要なものは出発日までには間に合わせます。安心しておまかせあれ。それ以外のものは王城にお届けしておきますね」
「ナオ様がほしいものはどんなものですか?」
「んー、ほしいのはスウェットなんだけど」
テュコに言われて、梛央はどう説明すればいいのか少し迷った。
「スウェット?」
「この国のことがよくわからないからどう説明していいのかわからないんだけど、前いたところでは動きやすいから運動するときに着ていたんだ。ダンスの練習もスウェットだったし、パジャマ用のスウェットも持ってたよ。フードのついたものはパーカーって言ってた」
「運動するときにも寝間着にもなる……」
アルテアンもテュコも、運動する服が寝間着にもなるということが結びつかなかった。
「ここの人たちって運動する時はどんな格好なの?」
「ほぼ普段着ですね。騎士の訓練の時は騎士服の上着だけを脱いで行います」
「汗かかない? ズボンが汚れたら?」
「汗をかいたら着替えますし、ズボンが汚れたら履き替えて洗濯です。魔法が使える者は洗浄の魔法で綺麗にできますが」
「魔法すごいね。でも汗を吸う素材の服はないの?」
「汗を吸う素材、ですか?」
「スウェットって、もともと汗って意味もあるんだ。汗を吸って、吸った汗をすぐ乾かすって性能があって防寒性もあって。だから運動するときに着たり、パジャマ代わりに着る人もいるんだ」
「そういう生地はないですね。実際にどのような生地なんですか?」
アルテアンに言われて、
「そうだ、テュコ。僕がここに来た時に着ていた服ってどこにあるのかな?」
梛央は思い出したようにテュコに聞いた。
「それなら洗浄して保管しています。お持ちしますか?」
「うん、お願い」
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