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第1部
テュコ、お前もか
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「わかった。自分を責めるのはやめる。だから、ヴァルも自分を責めないで」
自分を責めることがヴァレリラルドを責めることになるなら、もう悩むことはやめようと梛央は思った。
「うん。悪いのはシモンだ。間違えてはだめだ」
「そうだよ。でも、誰にもきづかれずに出入りができるっていうけど、どうやって?」
部屋の中を見回すサリアン。
「1つは、これは私の推論ですが、午前中の裏庭の突風。あれは陽動だった可能性があります」
サミュエルの言葉に、
「風の魔法……シモンが使える魔法だ。けれどあれほどの威力のある突風を起こせるほど強い魔法を使えるとは……」
知らなかった。そう言いたげなヴァレリラルド。
「おそらく裏庭で騒ぎを起こして、そのことに人の意識を集中させて、結果的に護衛する者の心に隙を作らせたんだろう」
ケイレブが推察する。
「もう1つですが、禁忌の魔道具が使われた可能性があると、陛下がおっしゃっていました」
「禁忌の魔道具?」
梛央は首を傾げる。梛央にとって魔道具とは、まだ家電製品なみの知識しかない。
「人が扱ってはならないという魔道具のことです。これも愛し子様と同じく伝説のようなものでしたが、愛し子様が伝説ではなく実在するとわかった以上、禁忌の魔道具の存在も伝説ではないかもしれません」
フォルシウスは自分の家に伝わっている文献の中の記述を思い出して言った。
「それをシモンが使ったのなら、どうやって手に入れたのか。今どこにあるのか。今回のことは、禁忌の魔道具を含めいろいろと不明な点も多く、これから解明していかねばなりません。すべてが解明したとしても安全が確保できるまでは窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」
サミュエルが頭を下げると、
「わかった」
梛央とヴァレリラルドは仲良く頷く。
「このような状況で馬車で旅をしながら王城へ行くのは中止すべきでしょうが、すでに決定してしまったこと。私は同行できませんが、道中はリングダールも連れていかれるといいでしょう」
「うん、リンちゃんは置いていかないから」
置いていけばさっきみたいに奪われると思い、リングダールを抱きしめてサミュエルを威嚇する梛央。
サミュエルにはすっかりぬいぐるみ好きのレッテルが貼られていて、ケイレブはぶほっ、と噴出した。
「ナオ様と一緒にいると楽しいだろう?」
サリアンが言うと、ケイレブは、ああ、と同意する。
それを横目で見ながら、
「シモンについてはエンゲルブレクト殿下にも報告いたしました。ナオ様の無事を確かめるために一緒に晩餐を、と言われています」
渋い顔をするサミュエル。
「私は?」
ヴァレリラルドの問いに、
「ねじこみます」
サミュエルは即答した。
ねじこむということはエンゲルブレクトがヴァレリラルドを同席させない方向で話を持ってきたということで、サミュエルはそれを阻止するためにヴァレリラルドも同席させる方向だということだった。
それを察してサムズアップするヴァレリラルドに、サミュエルは深く頷く。
エンゲルブレクトに苦手意識を持つ梛央はヴァレリラルドが同席することにほっとしていた。
「ナオ様、体調に問題はありませんか?」
フォルシウスの問いかけに、梛央は頷く。
「うん、フォルのおかげで痛いところはないよ。声も出るようになった」
「よかったですわ、ナオ様。お昼を召し上がっておられませんが、お腹は空かれてないですか?」
「そんなに空いてないけど、晩餐?までに時間があるなら軽いものを食べておきたい。でもその前にお風呂に入りたい」
午前中からいろいろありすぎて、体が強張ってる気がした。
お風呂に使ってゆっくりほぐしたい梛央に、
「では先にご入浴にしましょう。準備してまいります」
アイナとドリーンが準備のために場を去ろうとしたが、
「ヴァルも一緒に入る?」
梛央のとんでもない一言にその場で固まる。
「だめですっ」
テュコ、アイナ、ドリーンが口をそろえて言った。
「そ、そうなんだ。この国の慣習ってやつ?」
知らない同士でも温泉に入る。そういう慣習の国で育った梛央は首をかしげてヴァレリラルドを見る。
「わ、私は」
ナオがいいなら喜んで、と言いたげに顔を赤らめるヴァレリラルド。
たとえ8歳でも、顔を赤らめるのはナオを意識しているからで、
「この国の慣習です。ご入浴はお一人で。アイナとドリーンも困ってしまいますよ」
絶対にさせるか、と思いながらテュコは笑顔で却下した。
「旅の途中で温泉があったら一緒に入ろうね」
「温泉て何?」
「この国に温泉はない? 火山とか、地熱で温まった地下水が湧いてるやつ。前住んでたところでは温泉がいっぱいあって、知らない人同士でも一緒に入るんだよ」
「はっ、裸で?」
「温泉だもの?」
梛央は首を傾げる。
「ナ、ナオの、ナオの裸を、知らない人が見、見るなんて」
梛央の裸を想像して、それを見ている自分やその他大勢を想像して、ヴァレリラルドの顔がさっきとは比べ物にならないくらい真っ赤になった。
「殿下、晩餐まで自室に戻っていましょう」
クルームは進言すると同時に半ば引きずるようにしてオーバーヒート気味のヴァレリラルドを連れて部屋を出て行く。そのあとを追う護衛騎士。ケイレブはサリアンに目線を向けてからそのあとを追った。
「どうしたんだろうね?」
首をかしげる梛央に、
「温泉があっても一緒に入ってはだめです」
ピシャリ、と言い切るテュコ。
「テュコでも?」
だが梛央にそう言われて、私はいいですよ、と言いたいけど言えなくて動きが止まるテュコに、お前もか、という目で見ているアイナとドリーン、サミュエルだった。
自分を責めることがヴァレリラルドを責めることになるなら、もう悩むことはやめようと梛央は思った。
「うん。悪いのはシモンだ。間違えてはだめだ」
「そうだよ。でも、誰にもきづかれずに出入りができるっていうけど、どうやって?」
部屋の中を見回すサリアン。
「1つは、これは私の推論ですが、午前中の裏庭の突風。あれは陽動だった可能性があります」
サミュエルの言葉に、
「風の魔法……シモンが使える魔法だ。けれどあれほどの威力のある突風を起こせるほど強い魔法を使えるとは……」
知らなかった。そう言いたげなヴァレリラルド。
「おそらく裏庭で騒ぎを起こして、そのことに人の意識を集中させて、結果的に護衛する者の心に隙を作らせたんだろう」
ケイレブが推察する。
「もう1つですが、禁忌の魔道具が使われた可能性があると、陛下がおっしゃっていました」
「禁忌の魔道具?」
梛央は首を傾げる。梛央にとって魔道具とは、まだ家電製品なみの知識しかない。
「人が扱ってはならないという魔道具のことです。これも愛し子様と同じく伝説のようなものでしたが、愛し子様が伝説ではなく実在するとわかった以上、禁忌の魔道具の存在も伝説ではないかもしれません」
フォルシウスは自分の家に伝わっている文献の中の記述を思い出して言った。
「それをシモンが使ったのなら、どうやって手に入れたのか。今どこにあるのか。今回のことは、禁忌の魔道具を含めいろいろと不明な点も多く、これから解明していかねばなりません。すべてが解明したとしても安全が確保できるまでは窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」
サミュエルが頭を下げると、
「わかった」
梛央とヴァレリラルドは仲良く頷く。
「このような状況で馬車で旅をしながら王城へ行くのは中止すべきでしょうが、すでに決定してしまったこと。私は同行できませんが、道中はリングダールも連れていかれるといいでしょう」
「うん、リンちゃんは置いていかないから」
置いていけばさっきみたいに奪われると思い、リングダールを抱きしめてサミュエルを威嚇する梛央。
サミュエルにはすっかりぬいぐるみ好きのレッテルが貼られていて、ケイレブはぶほっ、と噴出した。
「ナオ様と一緒にいると楽しいだろう?」
サリアンが言うと、ケイレブは、ああ、と同意する。
それを横目で見ながら、
「シモンについてはエンゲルブレクト殿下にも報告いたしました。ナオ様の無事を確かめるために一緒に晩餐を、と言われています」
渋い顔をするサミュエル。
「私は?」
ヴァレリラルドの問いに、
「ねじこみます」
サミュエルは即答した。
ねじこむということはエンゲルブレクトがヴァレリラルドを同席させない方向で話を持ってきたということで、サミュエルはそれを阻止するためにヴァレリラルドも同席させる方向だということだった。
それを察してサムズアップするヴァレリラルドに、サミュエルは深く頷く。
エンゲルブレクトに苦手意識を持つ梛央はヴァレリラルドが同席することにほっとしていた。
「ナオ様、体調に問題はありませんか?」
フォルシウスの問いかけに、梛央は頷く。
「うん、フォルのおかげで痛いところはないよ。声も出るようになった」
「よかったですわ、ナオ様。お昼を召し上がっておられませんが、お腹は空かれてないですか?」
「そんなに空いてないけど、晩餐?までに時間があるなら軽いものを食べておきたい。でもその前にお風呂に入りたい」
午前中からいろいろありすぎて、体が強張ってる気がした。
お風呂に使ってゆっくりほぐしたい梛央に、
「では先にご入浴にしましょう。準備してまいります」
アイナとドリーンが準備のために場を去ろうとしたが、
「ヴァルも一緒に入る?」
梛央のとんでもない一言にその場で固まる。
「だめですっ」
テュコ、アイナ、ドリーンが口をそろえて言った。
「そ、そうなんだ。この国の慣習ってやつ?」
知らない同士でも温泉に入る。そういう慣習の国で育った梛央は首をかしげてヴァレリラルドを見る。
「わ、私は」
ナオがいいなら喜んで、と言いたげに顔を赤らめるヴァレリラルド。
たとえ8歳でも、顔を赤らめるのはナオを意識しているからで、
「この国の慣習です。ご入浴はお一人で。アイナとドリーンも困ってしまいますよ」
絶対にさせるか、と思いながらテュコは笑顔で却下した。
「旅の途中で温泉があったら一緒に入ろうね」
「温泉て何?」
「この国に温泉はない? 火山とか、地熱で温まった地下水が湧いてるやつ。前住んでたところでは温泉がいっぱいあって、知らない人同士でも一緒に入るんだよ」
「はっ、裸で?」
「温泉だもの?」
梛央は首を傾げる。
「ナ、ナオの、ナオの裸を、知らない人が見、見るなんて」
梛央の裸を想像して、それを見ている自分やその他大勢を想像して、ヴァレリラルドの顔がさっきとは比べ物にならないくらい真っ赤になった。
「殿下、晩餐まで自室に戻っていましょう」
クルームは進言すると同時に半ば引きずるようにしてオーバーヒート気味のヴァレリラルドを連れて部屋を出て行く。そのあとを追う護衛騎士。ケイレブはサリアンに目線を向けてからそのあとを追った。
「どうしたんだろうね?」
首をかしげる梛央に、
「温泉があっても一緒に入ってはだめです」
ピシャリ、と言い切るテュコ。
「テュコでも?」
だが梛央にそう言われて、私はいいですよ、と言いたいけど言えなくて動きが止まるテュコに、お前もか、という目で見ているアイナとドリーン、サミュエルだった。
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