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第1部
温泉回・夜の露天風呂(妄想)
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唐突に咳払いが聞こえ、無心に遊んでいたヴァレリラルドは、はっとした顔でケイレブを見る。
ショトラに教えてもらった、川だけど温かな水の湧いてる場所、つまり温泉で梛央に入浴させようという計画を実行に移す合図だった。
ケイレブが頷くと、ヴァレリラルドは小さく頷き返し、石を探すふりで川辺に近づく。
川の中の石を取ろうと手を入れ、
「あれ、この水温かい」
驚いた声を梛央に聞かせた。
「え?」
梛央もヴァレリラルドのところに行き、手を入れる。
「本当だ。温かい」
太陽の日差しで温んでいるというより、明確に温かい水だった。
「ナオ様、足をいれてみますか?」
「うん」
「ではこちらで靴と靴下をお脱ぎください。殿下も」
テュコに言われて振り向くと、いつのまにか休憩用の天幕とは別に川に面して天幕が張られていた。
「はーい」
返事をして、梛央とヴァレリラルドは天幕に入ると、そこで靴を脱ぎ、靴下を脱いで、河原に戻った。
河原から慎重に川に足を進める。
「気持ちいい。足湯だ」
ふくらはぎまで温かなお湯に浸かる。少し温いが立派な足湯だった。
「足湯?」
「足だけ入る温泉のこと。体にもいいんだよ。リラックス効果もあるし、足の裏の血行がよくなると全身の血のめぐりもよくなるから、免疫力もあがるんだ。アイナ、ドリーン」
「はい」
「なんでしょう、ナオ様」
梛央が呼びかけると、河原にいた2人が応じた。
「体の冷えとか、むくみがあったら、足湯に入るといいよ」
「むくみがあるときはそうします」
「ありがとうございます」
アイナとドリーンが返事をする。
「ナオ、あっちに行ってみよう」
梛央の手を掴んで方向を変えようとしたヴァレリラルドが、ぬるついた川底の石で足を滑らせた。
「危ない」
ヴァレリラルドを抱きとめようとして梛央も一緒に足を滑らせた。
しりもちをついて川に浸かる梛央とヴァレリラルドを見て、
「ナオ様」
「大丈夫ですか」
テュコとオルドジフも慌てて靴と靴下を脱いで川に入る。が、梛央たちの手前で2人一緒に滑って川に浸かる。
その様子に、梛央とヴァレリラルドは顔を見合わせて笑いあった。
「みなさま方、濡れた服を乾かしましょう。ドリーン、着替えは持って来たかしら」
アイナが芝居がかった口調で言った。
「着替えは……でもアイナ、湯浴み着しかないわ」
「仕方ないわ、ドリーン。皆様方、服が乾くまで湯浴み着をお召ください。せっかくですからお湯を楽しまれたらいかかでしょう? 山側はもう少し深いそうですから、ゆったり浸かれると思います」
梛央を温泉で入浴させるという計画を知っているサリアンとケイレブは、そのベタなやりとりを苦笑しながら見守っている。
「温泉? 温泉に入っていいの? 湯浴み着、着る!」
梛央は立ち上がると、ヴァレリラルドやテュコたちを置いてアイナたちのもとへ急いだ。
「三文芝居だったが、つれたな」
「可愛い子がつれたね。ケイレブ、私はナオ様を見ていて、子供がほしいと思ったんだ。こんな子供がいたら毎日が幸せだろうと思った」
すでに子供がいるような、穏やかな顔でサリアンはケイレブを見上げる。
「俺に似たやんちゃな子供だったらどうするんだ?」
「親子3人で冒険しよう。ケイレブに似たらきっと冒険好きの子供になるよ」
間髪入れずに言うサリアンの肩を、ケイレブはそっと抱き寄せた。
天幕の中はいくつかに仕切られていた。
梛央はその一つの空間で、伸びた髪が濡れないようにアイナとドリーンに編み込みされ、湯浴み着に着替えさせてもらっていた。
「ナオ様」
ちょっときつめにアイナに言われても、梛央は首を振る。
「湯浴み着だけでは心許ないですよ」
すでに自分で湯浴み着に着かえているテュコが言っても、梛央は首を振る。
「僕の国の慣習は、これもだめなの」
梛央は湯浴み着を指して言う。
「ナオ、どうかした?」
仕切られた別の場所で着かえていたヴァレリラルドが、梛央の声を聞きつけて声を飛ばす。
「なんでもないよ。着替え、終わったよ」
アイナたちから逃げるように梛央が湯浴み着姿で天幕を出る。
梛央の着ている湯浴み着は形はバスローブだったが、白の薄い布地のため単衣の着物のようだった。
すぐに天幕を出たヴァレリラルドは髪を編み込んだ梛央に頬を赤らめて見とれながら、手をつないで川に歩いていく。
「まあ、何も着ないというよりはましですから……」
テュコはため息まじりに呟くと、オルドジフとともに梛央たちのあとを追った。
川はアイナの言う通り山側に行くほど深くなり、深いところでは太ももあたりまでの深さがあった。
「川なのに温かい。本当に温泉なんだね」
不思議、と言いながら枝の下で身を屈ませると、肩までとっぷりと浸かることができた。
「外で入浴なんて、へんな感じだね」
梛央の横でヴァレリラルドが同じく肩まで浸かりながら言った。
「僕のいたところでは露天風呂って言って、昼間に入るとすごく贅沢な気持ちになって癒されるし、夜に入ると星や月が見えてすごく素敵なんだよ」
「ナオと星や月を見ながら入浴したい」
ヴァレリラルドが強めに主張した。
「僕はまだ夜の露天風呂って入ったことないから、いつかしてみたいね」
「よ、夜の露天風呂……」
言葉の淫靡さにテュコとヴァレリラルドは顔を赤らめる。
2人の頭の中には、満点の星の下で露天風呂に浸かり、心地よさにうっとりとため息を吐く裸の梛央がいた。
「その時は私も一緒だろうね?」
ヴァレリラルドを牽制するようにオルドジフが不敵な笑みを浮かべた。
頭の中を覗かれた気がして、思わずヴァレリラルドとテュコは全力で頷いた。
ショトラに教えてもらった、川だけど温かな水の湧いてる場所、つまり温泉で梛央に入浴させようという計画を実行に移す合図だった。
ケイレブが頷くと、ヴァレリラルドは小さく頷き返し、石を探すふりで川辺に近づく。
川の中の石を取ろうと手を入れ、
「あれ、この水温かい」
驚いた声を梛央に聞かせた。
「え?」
梛央もヴァレリラルドのところに行き、手を入れる。
「本当だ。温かい」
太陽の日差しで温んでいるというより、明確に温かい水だった。
「ナオ様、足をいれてみますか?」
「うん」
「ではこちらで靴と靴下をお脱ぎください。殿下も」
テュコに言われて振り向くと、いつのまにか休憩用の天幕とは別に川に面して天幕が張られていた。
「はーい」
返事をして、梛央とヴァレリラルドは天幕に入ると、そこで靴を脱ぎ、靴下を脱いで、河原に戻った。
河原から慎重に川に足を進める。
「気持ちいい。足湯だ」
ふくらはぎまで温かなお湯に浸かる。少し温いが立派な足湯だった。
「足湯?」
「足だけ入る温泉のこと。体にもいいんだよ。リラックス効果もあるし、足の裏の血行がよくなると全身の血のめぐりもよくなるから、免疫力もあがるんだ。アイナ、ドリーン」
「はい」
「なんでしょう、ナオ様」
梛央が呼びかけると、河原にいた2人が応じた。
「体の冷えとか、むくみがあったら、足湯に入るといいよ」
「むくみがあるときはそうします」
「ありがとうございます」
アイナとドリーンが返事をする。
「ナオ、あっちに行ってみよう」
梛央の手を掴んで方向を変えようとしたヴァレリラルドが、ぬるついた川底の石で足を滑らせた。
「危ない」
ヴァレリラルドを抱きとめようとして梛央も一緒に足を滑らせた。
しりもちをついて川に浸かる梛央とヴァレリラルドを見て、
「ナオ様」
「大丈夫ですか」
テュコとオルドジフも慌てて靴と靴下を脱いで川に入る。が、梛央たちの手前で2人一緒に滑って川に浸かる。
その様子に、梛央とヴァレリラルドは顔を見合わせて笑いあった。
「みなさま方、濡れた服を乾かしましょう。ドリーン、着替えは持って来たかしら」
アイナが芝居がかった口調で言った。
「着替えは……でもアイナ、湯浴み着しかないわ」
「仕方ないわ、ドリーン。皆様方、服が乾くまで湯浴み着をお召ください。せっかくですからお湯を楽しまれたらいかかでしょう? 山側はもう少し深いそうですから、ゆったり浸かれると思います」
梛央を温泉で入浴させるという計画を知っているサリアンとケイレブは、そのベタなやりとりを苦笑しながら見守っている。
「温泉? 温泉に入っていいの? 湯浴み着、着る!」
梛央は立ち上がると、ヴァレリラルドやテュコたちを置いてアイナたちのもとへ急いだ。
「三文芝居だったが、つれたな」
「可愛い子がつれたね。ケイレブ、私はナオ様を見ていて、子供がほしいと思ったんだ。こんな子供がいたら毎日が幸せだろうと思った」
すでに子供がいるような、穏やかな顔でサリアンはケイレブを見上げる。
「俺に似たやんちゃな子供だったらどうするんだ?」
「親子3人で冒険しよう。ケイレブに似たらきっと冒険好きの子供になるよ」
間髪入れずに言うサリアンの肩を、ケイレブはそっと抱き寄せた。
天幕の中はいくつかに仕切られていた。
梛央はその一つの空間で、伸びた髪が濡れないようにアイナとドリーンに編み込みされ、湯浴み着に着替えさせてもらっていた。
「ナオ様」
ちょっときつめにアイナに言われても、梛央は首を振る。
「湯浴み着だけでは心許ないですよ」
すでに自分で湯浴み着に着かえているテュコが言っても、梛央は首を振る。
「僕の国の慣習は、これもだめなの」
梛央は湯浴み着を指して言う。
「ナオ、どうかした?」
仕切られた別の場所で着かえていたヴァレリラルドが、梛央の声を聞きつけて声を飛ばす。
「なんでもないよ。着替え、終わったよ」
アイナたちから逃げるように梛央が湯浴み着姿で天幕を出る。
梛央の着ている湯浴み着は形はバスローブだったが、白の薄い布地のため単衣の着物のようだった。
すぐに天幕を出たヴァレリラルドは髪を編み込んだ梛央に頬を赤らめて見とれながら、手をつないで川に歩いていく。
「まあ、何も着ないというよりはましですから……」
テュコはため息まじりに呟くと、オルドジフとともに梛央たちのあとを追った。
川はアイナの言う通り山側に行くほど深くなり、深いところでは太ももあたりまでの深さがあった。
「川なのに温かい。本当に温泉なんだね」
不思議、と言いながら枝の下で身を屈ませると、肩までとっぷりと浸かることができた。
「外で入浴なんて、へんな感じだね」
梛央の横でヴァレリラルドが同じく肩まで浸かりながら言った。
「僕のいたところでは露天風呂って言って、昼間に入るとすごく贅沢な気持ちになって癒されるし、夜に入ると星や月が見えてすごく素敵なんだよ」
「ナオと星や月を見ながら入浴したい」
ヴァレリラルドが強めに主張した。
「僕はまだ夜の露天風呂って入ったことないから、いつかしてみたいね」
「よ、夜の露天風呂……」
言葉の淫靡さにテュコとヴァレリラルドは顔を赤らめる。
2人の頭の中には、満点の星の下で露天風呂に浸かり、心地よさにうっとりとため息を吐く裸の梛央がいた。
「その時は私も一緒だろうね?」
ヴァレリラルドを牽制するようにオルドジフが不敵な笑みを浮かべた。
頭の中を覗かれた気がして、思わずヴァレリラルドとテュコは全力で頷いた。
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