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第2部
核心
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仕事がひと段落すると、オルドジフはハッセルバリを伴ってフランソン精霊神殿に向かった。
前の日に訪ねてきたシーグフリードから、エーマン子爵家の子供がいなくなった時に、その屋敷付近に神殿の荷馬車が止まっていたという事実を知らされたからだった。
「しかし子爵家の子供が帰って来てよかったですね」
馬車の中から王都の光景を眺めるハッセルバリ。
「ああ。もう1人の子供も無事に見つかるといいが」
もしも。
もしもアシェルナオが、愛し子を狙う何者かのせいで同じ日に洗礼を受けた2人の子供が攫われたと知ったら、どれだけの心労を背負うだろう。
そう思うと、できればアシェルナオの知らないうちにすべてが丸くおさまってくれればいい。そう願うオルドジフだった。
「オルドジフ殿。また何かありましたか?」
突然来訪したオルドジフたちを応対するフランソン精霊神殿の神殿長補佐カスパルは、少し緊張した面持ちで尋ねる。
「今日は教えてほしいことがあって訪ねさせてもらった。精霊神殿では、孤児院に食料を配布していると思うが」
「ええ。王都にはいろいろな理由で親が育てることのできない孤児院が8つあります。その子たちが食べるもので困ることがないように、フランソン精霊神殿では月に2度食料の配布を行っています」
「それは決まった日にちだろうか。配布する荷馬車はフランソン精霊神殿のものを?」
「うちでは毎月、1と3の光に配布しています。荷馬車は市場の荷馬車を借りますから、配布するための専用の荷馬車は所有していません」
「そうか。ありがとう」
それだけを聞くと、オルドジフとハッセルバリはフランソン精霊神殿をあとにした。
「子供たちがいなくなったのは1の水でしたね。フランソン精霊神殿では曜日が違います」
「荷馬車もないと言っていた。次はバスロ精霊神殿だ」
オルドジフは悪い予感が頭から離れなかった。
事前連絡をしていなかったが、オルドジフたちが訪問すると神殿長補佐のペッレがすぐに対応に出てくれた。
「急に訪れてすまない。少し確認したいことがあるんだが」
「なんなりとお聞きください」
オルドジフが確認したいということは、グルンドライストが確認したいことだと考えるペッレは協力的だった。
「うむ。バスロではフランソンとともに孤児院に食料の配布を行っているのだったな」
「はい。週に一度、4つの孤児院に。翌週は別の4つの孤児院に食料を配布しています」
「それはどの日に?」
「水の日です」
ペッレの答えに、ハッセルバリはオルドジフに視線を向ける。
「食料を配布するための荷馬車は?」
「毎週のことですので、専用の荷馬車を所有しています」
「そうか……。1の水に食料の配布に行ったのは誰か教えてほしいんだが」
「誰でしたか……。記録簿に残っているはずです。少々お待ちください」
ペッレはオルドジフたちを残して、配布担当の部署に記録簿を取りに行った。
「オルドジフ殿」
子供を攫った、もしくはこの件に深く関係しているだろう者がバスロ精霊神殿の内部にいる。その核心に触れようとしていて、ハッセルバリは緊迫した顔でオルドジフを見た。
「ああ……」
だがオルドジフは苦しい表情でそれ以上は何も言わなかった。
「お待たせしました」
やがて記録簿を手にペッレが戻ってきた。
「1の水は……ああ、ネルダールです」
ペッレが口にした名前に、オルドジフの危惧が現実のものとなった。
「配布した孤児院はどこだろう?」
「アッケル、カルス、フラート、ストラ地区の孤児院です」
「そうか」
ストラ地区は王都のはずれ、ノシュテット伯爵の子供が見つかったという森のある地区だった。
「ネルダールと話がしたいんだが、頼めるか?」
思いつめた顔のオルドジフに、ペッレは申し訳なさそうに首を振った。
「先日もお話しましたが、ネルダールは体調を崩したようでして、しばらく実家に帰っています」
「実家?」
実家とは縁遠く、神殿を出れば行く場所がない。一生を神官として全うする。
親しくしていた頃に聞いたネルダールの話を思い出してオルドジフの眉間にしわが寄る。
「どうかされましたか?」
「ネルダールとはかつて親しくしていた。ネルダールを見舞いたいのだが、実家はどこかわかるか?」
「ネルダールはあまり自分のことを話さないので……」
「ネルダールは心配されるのを拒むところがある。ネルーダルが戻ってきたら、ネルダールには内緒で私に連絡してほしい」
前の日に訪ねてきたシーグフリードから、エーマン子爵家の子供がいなくなった時に、その屋敷付近に神殿の荷馬車が止まっていたという事実を知らされたからだった。
「しかし子爵家の子供が帰って来てよかったですね」
馬車の中から王都の光景を眺めるハッセルバリ。
「ああ。もう1人の子供も無事に見つかるといいが」
もしも。
もしもアシェルナオが、愛し子を狙う何者かのせいで同じ日に洗礼を受けた2人の子供が攫われたと知ったら、どれだけの心労を背負うだろう。
そう思うと、できればアシェルナオの知らないうちにすべてが丸くおさまってくれればいい。そう願うオルドジフだった。
「オルドジフ殿。また何かありましたか?」
突然来訪したオルドジフたちを応対するフランソン精霊神殿の神殿長補佐カスパルは、少し緊張した面持ちで尋ねる。
「今日は教えてほしいことがあって訪ねさせてもらった。精霊神殿では、孤児院に食料を配布していると思うが」
「ええ。王都にはいろいろな理由で親が育てることのできない孤児院が8つあります。その子たちが食べるもので困ることがないように、フランソン精霊神殿では月に2度食料の配布を行っています」
「それは決まった日にちだろうか。配布する荷馬車はフランソン精霊神殿のものを?」
「うちでは毎月、1と3の光に配布しています。荷馬車は市場の荷馬車を借りますから、配布するための専用の荷馬車は所有していません」
「そうか。ありがとう」
それだけを聞くと、オルドジフとハッセルバリはフランソン精霊神殿をあとにした。
「子供たちがいなくなったのは1の水でしたね。フランソン精霊神殿では曜日が違います」
「荷馬車もないと言っていた。次はバスロ精霊神殿だ」
オルドジフは悪い予感が頭から離れなかった。
事前連絡をしていなかったが、オルドジフたちが訪問すると神殿長補佐のペッレがすぐに対応に出てくれた。
「急に訪れてすまない。少し確認したいことがあるんだが」
「なんなりとお聞きください」
オルドジフが確認したいということは、グルンドライストが確認したいことだと考えるペッレは協力的だった。
「うむ。バスロではフランソンとともに孤児院に食料の配布を行っているのだったな」
「はい。週に一度、4つの孤児院に。翌週は別の4つの孤児院に食料を配布しています」
「それはどの日に?」
「水の日です」
ペッレの答えに、ハッセルバリはオルドジフに視線を向ける。
「食料を配布するための荷馬車は?」
「毎週のことですので、専用の荷馬車を所有しています」
「そうか……。1の水に食料の配布に行ったのは誰か教えてほしいんだが」
「誰でしたか……。記録簿に残っているはずです。少々お待ちください」
ペッレはオルドジフたちを残して、配布担当の部署に記録簿を取りに行った。
「オルドジフ殿」
子供を攫った、もしくはこの件に深く関係しているだろう者がバスロ精霊神殿の内部にいる。その核心に触れようとしていて、ハッセルバリは緊迫した顔でオルドジフを見た。
「ああ……」
だがオルドジフは苦しい表情でそれ以上は何も言わなかった。
「お待たせしました」
やがて記録簿を手にペッレが戻ってきた。
「1の水は……ああ、ネルダールです」
ペッレが口にした名前に、オルドジフの危惧が現実のものとなった。
「配布した孤児院はどこだろう?」
「アッケル、カルス、フラート、ストラ地区の孤児院です」
「そうか」
ストラ地区は王都のはずれ、ノシュテット伯爵の子供が見つかったという森のある地区だった。
「ネルダールと話がしたいんだが、頼めるか?」
思いつめた顔のオルドジフに、ペッレは申し訳なさそうに首を振った。
「先日もお話しましたが、ネルダールは体調を崩したようでして、しばらく実家に帰っています」
「実家?」
実家とは縁遠く、神殿を出れば行く場所がない。一生を神官として全うする。
親しくしていた頃に聞いたネルダールの話を思い出してオルドジフの眉間にしわが寄る。
「どうかされましたか?」
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