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第3部
エルランデル公爵家へ
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「肉」
連れてこられた第二騎士団駐屯地の一室で、来客用の質のよいソファに座ったルルの口から欲望が零れ落ちる。
「今頃肉焼いてたのにな。風呂にも入りたかった」
エルも、周りを騎士たちで固められ、身の危険を感じずに済む安心感から、肉を恋しがった。
「帰宅途中を狙われて災難でしたね。食事と風呂はなんとかなると思いますから、もう少しお待ちください」
エルとルルが若い身でありながら魔法省では重要なポストにあることを知ったブレンドレルが、丁重に言葉をかける。
「何を待てばいいんだ?」
「俺たち、いつ帰れる?」
エルとルルが質問した時、ドアが開いてシーグフリードとイクセルが入室してきた。
「……ああ。なるほど」
シーグフリードはエクルンド公国から来た男たちが狙った相手を第二騎士団で保護しているということだけを聞かされていたが、エルとルルを見てすべてを察した。
「シーグフリード様」
「どうしてここに?」
以前に身を寄せていたことのあるエルランデル公爵家の嫡男の登場に、エルとルルは思わずかしこまった。
シーグフリードは2人の前の椅子に座ると、
「私が王太子の側近として王城に勤めているのは知っていると思うが、そこのマロシュは執務室の調査員として働いている」
ブレンドレルのそばに控えているマロシュを目で指し示す。
「じゃあ、俺たちが襲われた時に居合わせたのは、偶然じゃない……?」
「あいつらは……何者なんですか?」
歯切れが悪くなるエルとルル。
「その様子だと、お前たちの方がわかってるんじゃないか?」
シーグフリードに問われ、エルとルルは顔を見合わせる。
「……エクルンド公国のやつら」
仕方なさそうにエルが口にした。
「あの者たちをご存知だったんですか?」
まさかエルとルルがエクルンド公国とつながりがあったとは思わなかったブレンドレルとマロシュが驚いた顔をした。
「あいつらは知らない。だけど、もし俺たちを狙うやつらがいたら、エクルンド公国の人間じゃないかって思ったんだ」
「ほかに心当たりはないから」
ふてくされたようにエルとルルが答えた時、ドアがノックされてアーベントロート騎士団の者たちが現れた。
「すみません、見失いました」
先頭のエグモントが悔しそうに報告する。
「奴らは4日前にエクルンド公国から入国してきたばかりだ。入国してからはずっと監視していたのに、なぜ王都の地理に詳しいんだ?」
見失ったという一報を受けていたブレンドレルは驚きはしなかったが、エクルンド公国からきた男たちの動向が不可解だった。
エルとルルは心当たりがあるのか、お互いの顔を見合った。
「王都の情報を流していたのか?」
シーグフリードの咎めるような口調に、エルとルルは首を振る。
「そんなことはしません。帰国してすぐは付け回されたりしたけど、それから今まで何もありませんでした。ただ……」
「向こうで王都の話をしたことはあります。俺たちがどういうところで育った、とか、有名な建築物とか。ただの思い出話として話しただけですが」
当時のことを思い出しながら口にするエルとルルに、その言葉に嘘はないと判断したシーグフリードは室内にいる第二騎士団やアーベントロート騎士団の者たちを見回した。
「ここにいるエルとルルはエクルンド公国に3年だったか? 留学していた。1年の期限つきだったが、1年経っても帰してもらえず、3年経過した時点で逃げるように帰国してきたが、帰国してもエクルンド公国の者に狙われていたんだ。エルとルルの立場を確立するために魔法省を作ってポジションを与え、警護もつけれるようになるまでエルランデル公爵家に匿っていた時期がある」
「おそらくその時の残党がシルヴマルク王国に残っていて、今回の入国者たちとつながっていたんですね。王都の情報などもそこから入手していた、と」
エグモントが納得したように言った。
「警護がついていたなら、なぜ?」
シーグフリードの言葉に、
「平和な生活に慣れてくると、監視されるのがいやで」
「こっそり警護を置いて帰ってきた」
ばつが悪そうに答えるエルとルル。
「なんのための警護だ」
身から出た錆じゃないか。と、シーグフリードがこめかみを押さえた時、
「失礼します。ニスーです」
「アーベントロート騎士団のライマーです」
宿に残っていた2人を見張っていたニスーとライマーが入室してきた。
すでに平民街の精霊神殿で見失ったという報告を受けていた面々は、顔色の優れない2人を頷くことで労わった。
「してやられた」
小さくエグモントが呟く。
「すでに失敗した時のことを見据えて、逃亡先を決めていたんでしょう」
ブレンドレルが言うと、
「魔法省の2人が無事だっただけでもよかったと思います」
マロシュがフォローする。
「だが、エルとルルの家は特定されているようだ。……仕方ない。今回の件が落ち着くまで、またうちで保護しよう」
本当に仕方なくシーグフリードが判断し、エルとルルは顔を見合わせて頷くが、その表情はどこか悪いことを企んでいるようにも見えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
やっと説明編が終わりました。
次回からナオが登場します。
長かった\(^o^)/
連れてこられた第二騎士団駐屯地の一室で、来客用の質のよいソファに座ったルルの口から欲望が零れ落ちる。
「今頃肉焼いてたのにな。風呂にも入りたかった」
エルも、周りを騎士たちで固められ、身の危険を感じずに済む安心感から、肉を恋しがった。
「帰宅途中を狙われて災難でしたね。食事と風呂はなんとかなると思いますから、もう少しお待ちください」
エルとルルが若い身でありながら魔法省では重要なポストにあることを知ったブレンドレルが、丁重に言葉をかける。
「何を待てばいいんだ?」
「俺たち、いつ帰れる?」
エルとルルが質問した時、ドアが開いてシーグフリードとイクセルが入室してきた。
「……ああ。なるほど」
シーグフリードはエクルンド公国から来た男たちが狙った相手を第二騎士団で保護しているということだけを聞かされていたが、エルとルルを見てすべてを察した。
「シーグフリード様」
「どうしてここに?」
以前に身を寄せていたことのあるエルランデル公爵家の嫡男の登場に、エルとルルは思わずかしこまった。
シーグフリードは2人の前の椅子に座ると、
「私が王太子の側近として王城に勤めているのは知っていると思うが、そこのマロシュは執務室の調査員として働いている」
ブレンドレルのそばに控えているマロシュを目で指し示す。
「じゃあ、俺たちが襲われた時に居合わせたのは、偶然じゃない……?」
「あいつらは……何者なんですか?」
歯切れが悪くなるエルとルル。
「その様子だと、お前たちの方がわかってるんじゃないか?」
シーグフリードに問われ、エルとルルは顔を見合わせる。
「……エクルンド公国のやつら」
仕方なさそうにエルが口にした。
「あの者たちをご存知だったんですか?」
まさかエルとルルがエクルンド公国とつながりがあったとは思わなかったブレンドレルとマロシュが驚いた顔をした。
「あいつらは知らない。だけど、もし俺たちを狙うやつらがいたら、エクルンド公国の人間じゃないかって思ったんだ」
「ほかに心当たりはないから」
ふてくされたようにエルとルルが答えた時、ドアがノックされてアーベントロート騎士団の者たちが現れた。
「すみません、見失いました」
先頭のエグモントが悔しそうに報告する。
「奴らは4日前にエクルンド公国から入国してきたばかりだ。入国してからはずっと監視していたのに、なぜ王都の地理に詳しいんだ?」
見失ったという一報を受けていたブレンドレルは驚きはしなかったが、エクルンド公国からきた男たちの動向が不可解だった。
エルとルルは心当たりがあるのか、お互いの顔を見合った。
「王都の情報を流していたのか?」
シーグフリードの咎めるような口調に、エルとルルは首を振る。
「そんなことはしません。帰国してすぐは付け回されたりしたけど、それから今まで何もありませんでした。ただ……」
「向こうで王都の話をしたことはあります。俺たちがどういうところで育った、とか、有名な建築物とか。ただの思い出話として話しただけですが」
当時のことを思い出しながら口にするエルとルルに、その言葉に嘘はないと判断したシーグフリードは室内にいる第二騎士団やアーベントロート騎士団の者たちを見回した。
「ここにいるエルとルルはエクルンド公国に3年だったか? 留学していた。1年の期限つきだったが、1年経っても帰してもらえず、3年経過した時点で逃げるように帰国してきたが、帰国してもエクルンド公国の者に狙われていたんだ。エルとルルの立場を確立するために魔法省を作ってポジションを与え、警護もつけれるようになるまでエルランデル公爵家に匿っていた時期がある」
「おそらくその時の残党がシルヴマルク王国に残っていて、今回の入国者たちとつながっていたんですね。王都の情報などもそこから入手していた、と」
エグモントが納得したように言った。
「警護がついていたなら、なぜ?」
シーグフリードの言葉に、
「平和な生活に慣れてくると、監視されるのがいやで」
「こっそり警護を置いて帰ってきた」
ばつが悪そうに答えるエルとルル。
「なんのための警護だ」
身から出た錆じゃないか。と、シーグフリードがこめかみを押さえた時、
「失礼します。ニスーです」
「アーベントロート騎士団のライマーです」
宿に残っていた2人を見張っていたニスーとライマーが入室してきた。
すでに平民街の精霊神殿で見失ったという報告を受けていた面々は、顔色の優れない2人を頷くことで労わった。
「してやられた」
小さくエグモントが呟く。
「すでに失敗した時のことを見据えて、逃亡先を決めていたんでしょう」
ブレンドレルが言うと、
「魔法省の2人が無事だっただけでもよかったと思います」
マロシュがフォローする。
「だが、エルとルルの家は特定されているようだ。……仕方ない。今回の件が落ち着くまで、またうちで保護しよう」
本当に仕方なくシーグフリードが判断し、エルとルルは顔を見合わせて頷くが、その表情はどこか悪いことを企んでいるようにも見えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
やっと説明編が終わりました。
次回からナオが登場します。
長かった\(^o^)/
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