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心の奥の雨の森
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数日後、インフルエンザが治った岡嶋は、学校に戻ってきた。
香代子はといえば、なんだか様子がおかしかった。ぼくが話しかけても「ええ」とか「そう」としか言わない。だけど何か言いたそうに、じっとぼくの顔を見ているのだ。
放っておくつもりだったけれど、ある日、たまらなくなって、ぼくはたずねた。
「きみはぼくに何か言いたいことがあるんじゃないかな?」
すると香代子は、ぼくの顔をまたじっと見つめ、やがて口を開いた。
「瀬尾くんはとても親切。だけど、冷めてるのね」
「まあ、ほめ言葉と受け取っておくよ」
「ほらね。とってもクール。だけど、それはうわべだけ」
「きみは何が言いたいのかな?」
少しいらいらしながら、ぼくは言った。
「瀬尾くんには、何か特別なものがあるのよ」
「はあ?」
「瀬尾くんは特別なのよ」
ぼくも香代子も、しばらく黙った。
「きみは何か勘違いしてるんじゃないかな」
ぼくは辛抱強く言った。
「ぼくは至ってふつうだし、きみが言うような特別なものなんて、何もないよ」
「夢をみたの」
香也子は言った。
「森にいる夢。そして、夢の中で、私は知っているの。あ、これは、瀬尾くんの心の奥にある森だって」
「心の奥にある森…」
「瀬尾くんの心の奥には、森があるの。深い深い森よ。迷い込んだら出てこれないほどの奥深い森。そして、そこでは、いつも雨が降っているの」
「やっぱり、勘違いしてるよ、きみは」
香代子は構わず話を続けた。
「私は必死で探すんだけど、瀬尾くんは見つからないの。そこには、ただ森があるだけなの。そして、雨が降っているの」
「探してくれて光栄だけれど、たぶん見つからないよ。ぼくは逃げ足がはやいしね」
ぼくの冗談は香代子に通じなかった。まあ、確かに面白くもない冗談だ。
「木の葉の合間からは、雨の雫が落ちてきて、私は思うの。ああ、冷たいなあ。瀬尾くんはどこへ行ったのかなあって。いつもそこで、目が覚める」
「きみの正夢はすごいけど、その夢には意味なんてないと思うよ」と、ぼくは言った。やれやれ。どうしてぼくは、こんな話に、つきあっているんだろう。
「瀬尾くんは、いつもそうして冷めてるように見えるけど、それは本当の瀬尾くんじゃないって、私は思うんだ」
「繰り返しになって悪いけど、その夢に意味なんてないんだよ。本当に」
ぼくは肩をすくめた。
香代子はといえば、なんだか様子がおかしかった。ぼくが話しかけても「ええ」とか「そう」としか言わない。だけど何か言いたそうに、じっとぼくの顔を見ているのだ。
放っておくつもりだったけれど、ある日、たまらなくなって、ぼくはたずねた。
「きみはぼくに何か言いたいことがあるんじゃないかな?」
すると香代子は、ぼくの顔をまたじっと見つめ、やがて口を開いた。
「瀬尾くんはとても親切。だけど、冷めてるのね」
「まあ、ほめ言葉と受け取っておくよ」
「ほらね。とってもクール。だけど、それはうわべだけ」
「きみは何が言いたいのかな?」
少しいらいらしながら、ぼくは言った。
「瀬尾くんには、何か特別なものがあるのよ」
「はあ?」
「瀬尾くんは特別なのよ」
ぼくも香代子も、しばらく黙った。
「きみは何か勘違いしてるんじゃないかな」
ぼくは辛抱強く言った。
「ぼくは至ってふつうだし、きみが言うような特別なものなんて、何もないよ」
「夢をみたの」
香也子は言った。
「森にいる夢。そして、夢の中で、私は知っているの。あ、これは、瀬尾くんの心の奥にある森だって」
「心の奥にある森…」
「瀬尾くんの心の奥には、森があるの。深い深い森よ。迷い込んだら出てこれないほどの奥深い森。そして、そこでは、いつも雨が降っているの」
「やっぱり、勘違いしてるよ、きみは」
香代子は構わず話を続けた。
「私は必死で探すんだけど、瀬尾くんは見つからないの。そこには、ただ森があるだけなの。そして、雨が降っているの」
「探してくれて光栄だけれど、たぶん見つからないよ。ぼくは逃げ足がはやいしね」
ぼくの冗談は香代子に通じなかった。まあ、確かに面白くもない冗談だ。
「木の葉の合間からは、雨の雫が落ちてきて、私は思うの。ああ、冷たいなあ。瀬尾くんはどこへ行ったのかなあって。いつもそこで、目が覚める」
「きみの正夢はすごいけど、その夢には意味なんてないと思うよ」と、ぼくは言った。やれやれ。どうしてぼくは、こんな話に、つきあっているんだろう。
「瀬尾くんは、いつもそうして冷めてるように見えるけど、それは本当の瀬尾くんじゃないって、私は思うんだ」
「繰り返しになって悪いけど、その夢に意味なんてないんだよ。本当に」
ぼくは肩をすくめた。
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