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僕は京都へと向かう新幹線の車中にいた。佐々木に会う為である。
五日前、このような葉書が佐々木から届いていた。
拝啓
凛とした冷たい空気に、風花が美しく輝くこの頃。夏樹様にはご清祥のことと存じます。
私はと言えば僧侶に戻り、報恩寺で修行の日々に明け暮れております。僧侶としての生活は、会社を経営していた頃とはまるで違いますが、ひと回りして漸く本来の自分に戻れたように感じております。
夏樹様の事が懐かしく頻りに思い出されます。もし時間の都合が付くようでしたら、ぜひお越しください。
敬具
行ってみようという気になったのは、僧侶に戻った佐々木が現在、どのような心境にあるのか、いささかの興味が湧いたからである。
車中で僕は「異邦人」を読み返してみた。
主人公ムルソーは、養老院で亡くなった母親を埋葬した翌日、女性と海水浴をしたり、映画を観たり、知り合った女性と寝たりする。
ふとしたことでアラビア人を殺害してしまったムルソーは逮捕され、法廷に立たされる。母親が亡くなったことに無感動だったことは、ムルソーに不利に働き、裁判長に殺人の動機を尋ねられても「太陽のせい」と答える。
死刑を求刑されたムルソーの最後の望みは、処刑の日に見物人に罵声を浴びせられることだけだった。
粗筋はたったこれだけである。この話の何処に麻里さんは惹かれたのだろうか。
五日前、このような葉書が佐々木から届いていた。
拝啓
凛とした冷たい空気に、風花が美しく輝くこの頃。夏樹様にはご清祥のことと存じます。
私はと言えば僧侶に戻り、報恩寺で修行の日々に明け暮れております。僧侶としての生活は、会社を経営していた頃とはまるで違いますが、ひと回りして漸く本来の自分に戻れたように感じております。
夏樹様の事が懐かしく頻りに思い出されます。もし時間の都合が付くようでしたら、ぜひお越しください。
敬具
行ってみようという気になったのは、僧侶に戻った佐々木が現在、どのような心境にあるのか、いささかの興味が湧いたからである。
車中で僕は「異邦人」を読み返してみた。
主人公ムルソーは、養老院で亡くなった母親を埋葬した翌日、女性と海水浴をしたり、映画を観たり、知り合った女性と寝たりする。
ふとしたことでアラビア人を殺害してしまったムルソーは逮捕され、法廷に立たされる。母親が亡くなったことに無感動だったことは、ムルソーに不利に働き、裁判長に殺人の動機を尋ねられても「太陽のせい」と答える。
死刑を求刑されたムルソーの最後の望みは、処刑の日に見物人に罵声を浴びせられることだけだった。
粗筋はたったこれだけである。この話の何処に麻里さんは惹かれたのだろうか。
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