悪役令嬢は記憶を取り戻す

るるる

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記憶の扉を開けたら

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 「ん、」
 朝でも薄暗い牢獄の中で私は目を覚ました。冷たいゴツゴツとしたこの石は傷だらけの背中に当たるととても痛い。
 毎日の拷問は私の体と心を壊していった。
 王太子の婚約者を暗殺しようとしたという罪で投獄された。
 私は、リートリッヒ公爵のキュラソー 、その子は聖女として王太子の婚約者になった男爵令嬢だった。
 まぁ、そこそこな子だったと思う。頭の中お花畑のお馬鹿さんだったのは覚えている。
 美貌、教養、魔法…全てにおいて完璧とされた私は一応は王太子の婚約者候補として王妃教育を受けてきた。
 結構早く王妃教育を終えた十歳の頃に貴重な光の魔法を使う聖女が誕生してその聖女ことアイリ はバーン男爵令嬢が王太子と婚約者となった。
 だけどアイリは王妃教育が全く進まなかった。というのはすぐ泣き出しては王太子に助けを求めて王太子も激怒して次々に教育係は辞めさせられていった。
 そこで私が先生になったのだけども私を悪役令嬢だのといっては私に虐められただのあることないこと王太子に言っては最終的にはアイリの尻ぬぐいを毎回やってあげていた私が紅茶に毒を盛ったと騒ぎ私は投獄されたというわけだ。
 なんとも悲しい。
 魔法封じの手錠をかけられては逃げることも出来ない。
 かびたパンと濁った水のみの中私の姿は美しくなくなった。
 体中が痛くて、お腹が空いたそんなある日、私にお迎えがやってきた。
 男の人達は私を引きずって外に連れ出した。
 久しぶりのお日様の元に出された私は眩しさに目を瞑った。
 そうしている間に私は処刑台まで引きずられていった。
 そして首に縄をかけて観客席にいる王太子と隠れるようにしてにやりと笑うアイリを睨んだ。
 アイリは「きゃ~怖い」と王太子の背中に隠れた。
 王太子は私を睨むと死刑の執行を言い渡した。
 私は、ガクンと首吊りにさせられて苦しい中知らない、女の人の記憶が私に流れ込んできた。
 其れが前世の私だと知るのには時間がかからなかった。
 前世の私はそれこそ名の知れた大企業に務めるOLで其れなりの仕事をするだけの平社員でよく言えば敵のいない悪く言えば味方もいないそんな立ち位置だった。そんなある日取引先の接待で私は上司に連れられて其れなりの料亭に行った。そこで会った取引先の人に私は恋をした。今思えばとても愚かなことで気がついたらその人の奥さんに慰謝料を請求されたのだ。知らなかったとはいえ一つの家庭を壊したことには変わりない。とてつもない罪悪感と職場での冷たい対応に病んでしまった私は自分で自分を殺したのだ。
(ごめんね前世のパパママ)
 二人を残して逝った私は紛れもなく親不孝者だ。

 深い深い暗闇の中をひたすらに潜り続けた。そして気がつくと私はベッドの上にいた。
 体も子供の様に小さく部屋もキュラソー自分の部屋で私は悟った神様はやり直すチャンスをくれたのだと
私はベットの上で静かに神様にお礼をした。
 
 まずはこれから起きることを整理しなければとすぐに机に向かった。
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