2 / 18
老貴族の願い
しおりを挟む
「私の孫娘、ユメノは去年の年末、何者かに殺害され死体として発見されました。警察の調査で、若い女性ばかりを狙った連続婦女殺人事件の1件だと特定されたのですが、そこで警察の調査は終わっています。私はこの半年間、色々な伝手を使い情報を収集しました。そして、この事件にはイザードという伯爵が関与していることを突き止めました」
「その根拠は?」
「話せば長くなるのですが…… 簡単に申し上げますと、情報屋経由で、若い女性を集めている貴族がいるという話を聞きました。そこから探偵などを活用し、その貴族がイザードという名前であること、彼が女性を攫っては殺害して捨てていることを突き止めたのです。その後、彼が殺した女性が連続婦女殺人事件の犠牲者として扱われていることを知り、孫娘もこいつに殺されたんだろうと確信しました」
「警察には話したのか?」
「ええ、ですがイザードは伯爵。よっぽどの明確な証拠がない限り逮捕は難しいと言われました」
「なるほど。警察はいつも通り動かないと。さて、ローラ、ここまでの話はどうだ?」
「全て真実と思われます」
女性の方はローラという名前のようだ。そして何かしらの方法で嘘かどうかを判定しているのだろう。カールは情報屋の言う通り正直に話してよかったと思った。
「わかった。では話を進めよう。彼を殺すことで孫娘の復讐をしたいということだな?」
「ええ、それはもちろんです。そして、これ以上被害者が出るのを見たくありません。犯人はわかっているのに動けない悔しさ…… また被害者の家族のことを思うと胸が張り裂けそうです」
「そうだな。これ以上の悲劇は止める必要がある」
「私の依頼を受けていただけるのですか?」
「まだ、確定ではない。こちらで裏どりをして、貴方の主張が正しいか確認する。その上で判断させてもらいたい」
「わかりました。料金はどの程度になりますか?」
「貴族の暗殺は、白金貨1枚だ。」
白金貨1枚。一般家庭であれば5年はゆうに暮らせる金額である。カールでも中々見かけない貨幣だ。しかし払えない額ではない。
「わかりました。その金額でお願いします」
「よし、じゃあ1週間時間をくれ。その間に調査をして結論を下す。1週間後の同じ時間にここに来てもらえるか?」
「はい、よろしくお願いします。それでは失礼します」
カールは部屋を退出し、店から出て行った。ここまで話していたのはヨスバのリーダー、ランスである。ランスは葉巻に火をつけ、一服する。
「さて、とりあえず話は全て本当だったということでいいんだな?」
「はい、ご老人が意図して嘘をついている様子はなかったです。内容についてはいつも通り、精査が必要ですが」
ランスの問いに答えるのはローラ。ヨスバの情報収集を担当している。また、話し手の嘘を見破る能力を持っているため、このような打ち合わせには必ず呼ばれることとなっている。
「イザードという伯爵は知っているか?」
「はい、知っています。あまり評判が良くない貴族であることは有名です。特に女癖が悪く、何回もトラブルを起こしています」
「なるほど。まあ女癖が悪化して殺害するようになったかどうかだな。とりあえず調査を頼む。1週間後に知らせてくれ。いつも通り依頼者と同じタイミングで話を聞く」
「了解しました」
1週間後の約束の時間。カールはまたアイリーンの個室を訪れる。待つのは変わらずランスとローラである。
「お久しぶりです。いかがでしたでしょうか?」
「ローラ、説明してくれ」
「はい、結論から申し上げますとカール殿が話されていることは事実と判断しました。護衛達が婦女を連れ去り、イザードの元に連れて行く、そしてその後死体を処理する姿を確認しています。話を聞く限りですが、イザードに嗜虐趣味があるようで、殺人に興奮を覚えているようです」
「警察が動かない理由は?」
「警察幹部とのコネクションが強いため、と推測されます。上層部からこの事件については優先度を下げるよう指示が出ている、と警察関係者から話を確認しています」
「なんと…… そんな裏があったのですね……」
「被害者は多いのか?」
「現時点で確認されているのは6名です。短期間で殺害を続けたため、今は警戒しているようです。ただ、ほとぼりが冷めればまた実行するでしょう」
「わかった。この依頼は受けると判断した。イザードという屑を消し去って、この世を少し良い世の中に変えることにするか」
「ありがとうございます!大変だと思いますがどうかよろしくお願いします!」
「任せて置いてくれ。ただ爺さん、間違ってもこの依頼については誰にも話さないでくれよ? 俺達は正義を追求する組織ではあるが、あくまで裏の組織だ。裏のルールとして、裏切りにはしかるべき報酬が与えられる。そこは誤解しないでくれ」
「報酬、ですか?」
「ああ、爺さんの家族を全員殺すことも出来るし、罪をなすりつけて没落させることも出来る。裏切りにはそれに釣り合った報酬が与えられるということだ」
「…… 大丈夫です。私は誰にも話しません」
「私は誰にもこのことを言わないしヨスバを裏切ることもありません、宣言できるか?」
「私は誰にもこのことを言わないしヨスバを裏切ることもありません」
「なら良い。結果を楽しみにしておいてくれ」
「その根拠は?」
「話せば長くなるのですが…… 簡単に申し上げますと、情報屋経由で、若い女性を集めている貴族がいるという話を聞きました。そこから探偵などを活用し、その貴族がイザードという名前であること、彼が女性を攫っては殺害して捨てていることを突き止めたのです。その後、彼が殺した女性が連続婦女殺人事件の犠牲者として扱われていることを知り、孫娘もこいつに殺されたんだろうと確信しました」
「警察には話したのか?」
「ええ、ですがイザードは伯爵。よっぽどの明確な証拠がない限り逮捕は難しいと言われました」
「なるほど。警察はいつも通り動かないと。さて、ローラ、ここまでの話はどうだ?」
「全て真実と思われます」
女性の方はローラという名前のようだ。そして何かしらの方法で嘘かどうかを判定しているのだろう。カールは情報屋の言う通り正直に話してよかったと思った。
「わかった。では話を進めよう。彼を殺すことで孫娘の復讐をしたいということだな?」
「ええ、それはもちろんです。そして、これ以上被害者が出るのを見たくありません。犯人はわかっているのに動けない悔しさ…… また被害者の家族のことを思うと胸が張り裂けそうです」
「そうだな。これ以上の悲劇は止める必要がある」
「私の依頼を受けていただけるのですか?」
「まだ、確定ではない。こちらで裏どりをして、貴方の主張が正しいか確認する。その上で判断させてもらいたい」
「わかりました。料金はどの程度になりますか?」
「貴族の暗殺は、白金貨1枚だ。」
白金貨1枚。一般家庭であれば5年はゆうに暮らせる金額である。カールでも中々見かけない貨幣だ。しかし払えない額ではない。
「わかりました。その金額でお願いします」
「よし、じゃあ1週間時間をくれ。その間に調査をして結論を下す。1週間後の同じ時間にここに来てもらえるか?」
「はい、よろしくお願いします。それでは失礼します」
カールは部屋を退出し、店から出て行った。ここまで話していたのはヨスバのリーダー、ランスである。ランスは葉巻に火をつけ、一服する。
「さて、とりあえず話は全て本当だったということでいいんだな?」
「はい、ご老人が意図して嘘をついている様子はなかったです。内容についてはいつも通り、精査が必要ですが」
ランスの問いに答えるのはローラ。ヨスバの情報収集を担当している。また、話し手の嘘を見破る能力を持っているため、このような打ち合わせには必ず呼ばれることとなっている。
「イザードという伯爵は知っているか?」
「はい、知っています。あまり評判が良くない貴族であることは有名です。特に女癖が悪く、何回もトラブルを起こしています」
「なるほど。まあ女癖が悪化して殺害するようになったかどうかだな。とりあえず調査を頼む。1週間後に知らせてくれ。いつも通り依頼者と同じタイミングで話を聞く」
「了解しました」
1週間後の約束の時間。カールはまたアイリーンの個室を訪れる。待つのは変わらずランスとローラである。
「お久しぶりです。いかがでしたでしょうか?」
「ローラ、説明してくれ」
「はい、結論から申し上げますとカール殿が話されていることは事実と判断しました。護衛達が婦女を連れ去り、イザードの元に連れて行く、そしてその後死体を処理する姿を確認しています。話を聞く限りですが、イザードに嗜虐趣味があるようで、殺人に興奮を覚えているようです」
「警察が動かない理由は?」
「警察幹部とのコネクションが強いため、と推測されます。上層部からこの事件については優先度を下げるよう指示が出ている、と警察関係者から話を確認しています」
「なんと…… そんな裏があったのですね……」
「被害者は多いのか?」
「現時点で確認されているのは6名です。短期間で殺害を続けたため、今は警戒しているようです。ただ、ほとぼりが冷めればまた実行するでしょう」
「わかった。この依頼は受けると判断した。イザードという屑を消し去って、この世を少し良い世の中に変えることにするか」
「ありがとうございます!大変だと思いますがどうかよろしくお願いします!」
「任せて置いてくれ。ただ爺さん、間違ってもこの依頼については誰にも話さないでくれよ? 俺達は正義を追求する組織ではあるが、あくまで裏の組織だ。裏のルールとして、裏切りにはしかるべき報酬が与えられる。そこは誤解しないでくれ」
「報酬、ですか?」
「ああ、爺さんの家族を全員殺すことも出来るし、罪をなすりつけて没落させることも出来る。裏切りにはそれに釣り合った報酬が与えられるということだ」
「…… 大丈夫です。私は誰にも話しません」
「私は誰にもこのことを言わないしヨスバを裏切ることもありません、宣言できるか?」
「私は誰にもこのことを言わないしヨスバを裏切ることもありません」
「なら良い。結果を楽しみにしておいてくれ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる