30 / 69
30 SIDEアルフォンス①
しおりを挟む
その日、魔の森近くの街から小型の魔獣の調査要請が入り、アルフォンスの部隊は朝から街に向かっていた。
目撃されたのは狼型の小型の魔獣の群れで、討伐となっても対応できるだろう。
しかし、群れと共に現れたのは見たことない魔獣だった。
「キリル、何だあれ?」
剣を構え、同じ部隊のキリルに声を掛ける。
「俺にも分からない。アルフォンスも知らないのか?」
上半身が女性のようで、下半身は鳥。
キーキーと、嫌な声を出している。
笑っているようにも怒っているようにも見えるその顔は、ひどく不気味だった。
「見た事ないな…厄災が迫っているからか?」
突然飛びかかってきた狼型を躱して切り付ける。
一匹ならば脅威ではないが、とにかく数が多い。
見た事もない魔獣から目を離さないように、ジリジリと距離を詰める。
「アルフォンス、あれはデモンズハーピーだ!」
横から飛びかかってきた狼型を薙ぎ払いながら、レギスが答えた。
「レギスさん、知ってるですか!?」
狼型にやられたのか、遠くで大きな声が上がる。
(あれは…ビルか?)
助けに行きたいが魔獣の数が多くて近づけない。
(クソッ!)
「アルフォンス!あいつは厄災の前触れだ!詳しい事は俺も知らん!」
騎士歴が長いレギスが詳しく知らないならば、珍しい魔獣だろう。
相変わらずキーキーとうるさいデモンズハーピーの鳴き声が耳障りだ。
「何なんだアイツは!」
狼型を倒しながら、アルフォンスはデモンズハーピーに近づいた。
途中狼型に爪で傷付けられたが、気にしている余裕は無い。
奴の弱点は分からないが、下半身は鳥型だ。とりあえず剣に炎を纏わせる。
半分とは言え人のような魔獣を斬るのは良い気分ではないが、今はやるしかない。
袈裟懸けに斬ろうとしたが、アルフォンスの剣が弾かれた。
咄嗟に飛び退いて間合いを取る。
ジリジリと近づいてくるデモンズハーピーに冷や汗が流れる。
(魔導騎士は俺しか居ないか。こんな時に!)
小型の調査だから魔導騎士はアルフォンスしか来なかった。
どのみち魔導騎士は少ないのだから、来れたかどうかも分からないが。
(火がダメなら水か?)
アルフォンスは水を纏わせた剣で切り掛かるが躱される。
相変わらずキーキーとうるさい。
(笑っているのか!)
気味が悪い。
飛びかかってきた狼型を切ろうとした時、デモンズハーピーが手を振り上げた。鳩尾に強い衝撃を感じて、一瞬息が止まる。
(風魔法…か?)
肋骨が折れたかもしれない。
呼吸をすると痛みが強くなる。
(弱点は何だ?二属性で同時攻撃か?)
だとしたら、倒す事は無理だ。
他に魔導騎士はいない。
アルフォンスの魔力量では剣に纏わせる事が出来るのは一属性だけだ。
二属性を纏わせるような事が出来るは、北の英雄くらいだろう。
アルフォンスは属性を変えて切り付けるが、硬い羽の様なものに弾かれる。
狼型はかなり少なくなっている。そちらはキリル達に任せておけば大丈夫だろう。
「キリル!狼を倒し切ったら一度引くぞ!こいつは魔法が通らない!」
アルフォンスがそう叫んだ時だった。
ニイッと笑う様に口を横に開くと、鳴いていたデモンズハーピーが一際大きな声を上げた。
「なっ!」
突然目の前が真っ白になる。
(魔法か!)
「大丈夫か!アルフォンス!!」
キリルの声がする。
デモンズハーピーから距離を取らなければやられる。そう思って後ろに下がろうとしたアルフォンスは、そのまま地面に崩れ落ちた。
体の中を直接探られるような気持ちの悪さ。
内臓を掴まれるような感触。
(何…だ…これ…)
意識を失う寸前、ふと誰かの笑顔が浮かぶ。
「ソ…フ……」
名前を呼ぼうとしたが、最後まで言えない。
「アルフォンス!!!」
キリルの声か、と思った時にはアルフォンスの意識が途絶えた。
次にアルフォンスが目を覚したのは、ベッドの上だった。
「…ん…」
声を上げたアルフォンスを、誰かが覗き込んだ。
「…ここ、は?」
(俺は…あれから気を失った…?)
「…ここは、治癒室、です」
(治癒師の誰か、か?)
「…そう、か」
あれから部隊がどうなったか、彼女は知っているのだろうか。
「…俺の部隊は?無事、か?」
「怪我をされた方も、いましたが、もう治療は終わって、いま、す」
「そうか…良かった」
(皆無事だったのか…良かった)
「君は…」
アルフォンスは、自分を覗き込む女性に尋ねる。
「…私のこと、分かります、か?」
(…誰だ?新しく入った、治癒師か?)
アルフォンスをしばらく女性を見つめたが、分からない。
「君は…誰、だろう。分からない…ごめん」
(何だ…泣きそうになって)
彼女の泣きそうな顔を見ると、やたらと苦しい気持ちになる。
「まだ夜、です。休んでください」
「…ありがとう」
(あぁ、何だろう。すごく眠い…)
目を閉じると、アルフォンスはすぐに眠りについた。
目撃されたのは狼型の小型の魔獣の群れで、討伐となっても対応できるだろう。
しかし、群れと共に現れたのは見たことない魔獣だった。
「キリル、何だあれ?」
剣を構え、同じ部隊のキリルに声を掛ける。
「俺にも分からない。アルフォンスも知らないのか?」
上半身が女性のようで、下半身は鳥。
キーキーと、嫌な声を出している。
笑っているようにも怒っているようにも見えるその顔は、ひどく不気味だった。
「見た事ないな…厄災が迫っているからか?」
突然飛びかかってきた狼型を躱して切り付ける。
一匹ならば脅威ではないが、とにかく数が多い。
見た事もない魔獣から目を離さないように、ジリジリと距離を詰める。
「アルフォンス、あれはデモンズハーピーだ!」
横から飛びかかってきた狼型を薙ぎ払いながら、レギスが答えた。
「レギスさん、知ってるですか!?」
狼型にやられたのか、遠くで大きな声が上がる。
(あれは…ビルか?)
助けに行きたいが魔獣の数が多くて近づけない。
(クソッ!)
「アルフォンス!あいつは厄災の前触れだ!詳しい事は俺も知らん!」
騎士歴が長いレギスが詳しく知らないならば、珍しい魔獣だろう。
相変わらずキーキーとうるさいデモンズハーピーの鳴き声が耳障りだ。
「何なんだアイツは!」
狼型を倒しながら、アルフォンスはデモンズハーピーに近づいた。
途中狼型に爪で傷付けられたが、気にしている余裕は無い。
奴の弱点は分からないが、下半身は鳥型だ。とりあえず剣に炎を纏わせる。
半分とは言え人のような魔獣を斬るのは良い気分ではないが、今はやるしかない。
袈裟懸けに斬ろうとしたが、アルフォンスの剣が弾かれた。
咄嗟に飛び退いて間合いを取る。
ジリジリと近づいてくるデモンズハーピーに冷や汗が流れる。
(魔導騎士は俺しか居ないか。こんな時に!)
小型の調査だから魔導騎士はアルフォンスしか来なかった。
どのみち魔導騎士は少ないのだから、来れたかどうかも分からないが。
(火がダメなら水か?)
アルフォンスは水を纏わせた剣で切り掛かるが躱される。
相変わらずキーキーとうるさい。
(笑っているのか!)
気味が悪い。
飛びかかってきた狼型を切ろうとした時、デモンズハーピーが手を振り上げた。鳩尾に強い衝撃を感じて、一瞬息が止まる。
(風魔法…か?)
肋骨が折れたかもしれない。
呼吸をすると痛みが強くなる。
(弱点は何だ?二属性で同時攻撃か?)
だとしたら、倒す事は無理だ。
他に魔導騎士はいない。
アルフォンスの魔力量では剣に纏わせる事が出来るのは一属性だけだ。
二属性を纏わせるような事が出来るは、北の英雄くらいだろう。
アルフォンスは属性を変えて切り付けるが、硬い羽の様なものに弾かれる。
狼型はかなり少なくなっている。そちらはキリル達に任せておけば大丈夫だろう。
「キリル!狼を倒し切ったら一度引くぞ!こいつは魔法が通らない!」
アルフォンスがそう叫んだ時だった。
ニイッと笑う様に口を横に開くと、鳴いていたデモンズハーピーが一際大きな声を上げた。
「なっ!」
突然目の前が真っ白になる。
(魔法か!)
「大丈夫か!アルフォンス!!」
キリルの声がする。
デモンズハーピーから距離を取らなければやられる。そう思って後ろに下がろうとしたアルフォンスは、そのまま地面に崩れ落ちた。
体の中を直接探られるような気持ちの悪さ。
内臓を掴まれるような感触。
(何…だ…これ…)
意識を失う寸前、ふと誰かの笑顔が浮かぶ。
「ソ…フ……」
名前を呼ぼうとしたが、最後まで言えない。
「アルフォンス!!!」
キリルの声か、と思った時にはアルフォンスの意識が途絶えた。
次にアルフォンスが目を覚したのは、ベッドの上だった。
「…ん…」
声を上げたアルフォンスを、誰かが覗き込んだ。
「…ここ、は?」
(俺は…あれから気を失った…?)
「…ここは、治癒室、です」
(治癒師の誰か、か?)
「…そう、か」
あれから部隊がどうなったか、彼女は知っているのだろうか。
「…俺の部隊は?無事、か?」
「怪我をされた方も、いましたが、もう治療は終わって、いま、す」
「そうか…良かった」
(皆無事だったのか…良かった)
「君は…」
アルフォンスは、自分を覗き込む女性に尋ねる。
「…私のこと、分かります、か?」
(…誰だ?新しく入った、治癒師か?)
アルフォンスをしばらく女性を見つめたが、分からない。
「君は…誰、だろう。分からない…ごめん」
(何だ…泣きそうになって)
彼女の泣きそうな顔を見ると、やたらと苦しい気持ちになる。
「まだ夜、です。休んでください」
「…ありがとう」
(あぁ、何だろう。すごく眠い…)
目を閉じると、アルフォンスはすぐに眠りについた。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
恋愛
【第一部完結】
婚約者を邪険に思う王太子が、婚約者の功績も知らずに婚約破棄を告げ、記憶も魔力も全て奪って捨て去って――。
ハイスぺのワケあり王子が、何も知らずに片想いの相手を拾ってきたのに、彼女の正体に気づかずに――。
▲以上、短いあらすじです。以下、長いあらすじ▼
膨大な魔力と光魔法の加護を持つルダイラ王国の公爵家令嬢ジュディット。彼女には、婚約者であるフィリベールと妹のリナがいる。
妹のリナが王太子と父親を唆し、ジュディットは王太子から婚約破棄を告げられた。
しかし、王太子の婚約は、陛下がまとめた縁談である。
ジュディットをそのまま捨てるだけでは都合が悪い。そこで、王族だけに受け継がれる闇魔法でジュディットの記憶と魔力を封印し、捨てることを思いつく――。
山道に捨てられ、自分に関する記憶も、魔力も、お金も、荷物も持たない、【ないない尽くしのジュディット】が出会ったのは、【ワケありな事情を抱えるアンドレ】だ。
ジュディットは持っていたハンカチの刺繍を元に『ジュディ』と名乗りアンドレと新たな生活を始める。
一方のアンドレは、ジュディのことを自分を害する暗殺者だと信じ込み、彼女に冷たい態度を取ってしまう。
だが、何故か最後まで冷たく仕切れない。
ジュディは送り込まれた刺客だと理解したうえでも彼女に惹かれ、不器用なアプローチをかける。
そんなジュディとアンドレの関係に少しづつ変化が見えてきた矢先。
全てを奪ってから捨てた元婚約者の功績に気づき、焦る王太子がジュディットを連れ戻そうと押しかけてきて――。
ワケあり王子が、叶わない恋と諦めていた【幻の聖女】その正体は、まさかのジュディだったのだ!
ジュディは自分を害する刺客ではないと気づいたアンフレッド殿下の溺愛が止まらない――。
「王太子殿下との婚約が白紙になって目の前に現れたんですから……縛り付けてでも僕のものにして逃がしませんよ」
嫉妬心剥き出しの、逆シンデレラストーリー開幕!
本作は、小説家になろう様とカクヨム様にて先行投稿を行っています。
雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~
梅雨の人
恋愛
記憶が戻らないままだったら…そうつぶやく私にあなたは
「忘れるだけ忘れてしまったままでいい。君は私の指のごつごつした指の感触だけは思い出してくれた。それがすべてだ。」
そういって抱きしめてくれた暖かなあなたのぬくもりが好きよ。
雪と共に、私の夫だった人の記憶も、全て溶けて消えてしまった私はあなたと共に生きていく。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。
サバ読み令嬢の厄介な婚約〜それでも学園生活を謳歌します!〜
本見りん
恋愛
療養中の体の弱い伯爵令嬢と、4つ年上の庶子の姉。
シルビア マイザー伯爵令嬢は生まれつき体が弱かった。そんな彼女には婚約者がおり、もうすぐ学園にも通う予定だったが……まさかの駆け落ち。
侯爵家との政略結婚を断れない伯爵家。それまで病弱で顔の知られていなかった妹の代わりに隠された庶子の姉フィーネがその身代わりになり学園に通うことに……。
まさかの4歳もサバを読んで。
───王立学園での昼下がり、昼食の後お喋りに花を咲かせる令嬢たち。
「───シルビア様は、本当に大人びて……いえ、……落ち着いていらっしゃるわねぇ」
「ま、まあ……。そうですかしら? うふふ?」
……そりゃ、そうですわよね。
だって本当は私、貴女方より4歳も年上なんですもの……!
今日もフィーネは儚げな笑顔(演技)で疑惑を躱しつつ、学園生活を楽しむ。しかしそんな彼女の婚約者は……。
サバ読み令嬢の、厄介な婚約の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる