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ヒューは目を逸らす事なくじっとアルフォンスを見ていた。
「それは…」
「あなたの家族だって良く思っていないでしょう。よく見合いも勧められていたはずです。周りの人間だってそうだ。俺はソフィアが嫌な思いをさせられていた事は知っています。あぁ、勿論ソフィアはそんな事言いませんけどね。記憶を無くす前のあなたは、そういう悪意からソフィアを守ってくれていたようですから、それには感謝しています。でもね、姉が悲しむ姿は見たくないんですよ」
「俺は…」
口の中が乾く。
(俺は…ソフィを…)
「…それでも俺は…ソフィと…一緒にいたい…」
「………」
「俺の我儘だって分かってる。彼女は望んでいない事も。それでも…ソフィを失いたくない…」
「…それは責任感からですか?あなたのために対価を払った姉への」
(責任感…)
そうだ。
最初はそうだったはずだ。
言われるまでそんな事、すっかり忘れていた。
「…最初はね。記憶を無くした俺に、恋人だった事も対価の内容も教えないで治療しようとしたソフィに腹が立って、勢いと責任感から彼女の側にずっと居るって言ったんだ。でも、彼女の笑顔を見たら、なんかこう、胸がギュッとなって…」
『ソフィ』と呼ばれて泣きながら笑うソフィアを思い出す。
「もうなんか、その時に語彙力が死んだ。今思えば、その時にはもう好きになってたと思う。記憶を無くしたのに、それでもやっぱりソフィのことを」
思わず抱きしめた温もりも柔らかさも、頬に触れた冷たさも。
「貴族令息としての役割りを果たす事も放棄して、それでも彼女と居たいとずっと思っていたんだと思うよ。何も無かったようにサッパリと俺の前からいなくなろうとして、それなのに無理して泣いて。あんなソフィを見たら、もう、手放すことなんかできないよ…」
だから何とかソフィアと一緒に居られる方法を探していたはずだ。どんな手を使ってでも。
自分ならば、絶対にそうする。
「だからソフィには、もう一度俺を好きになってもらうように足掻きたい。彼女を悲しませる事もしたくない。ソフィの不安もくだらない障害も全部取り除いて、一緒に幸せになりたいんだ」
ヒューに分かってもらえなくてもいい。
これが今の自分の本心だ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アルフォンスの言葉に、ヒューはとんでもなく大きなため息を吐いた。
「え?」
「分かりました」
「…何が?」
「あなたの気持ちが。別にここでソフィアと別れると言われても良かったんですけどね。まぁ一発くらいは殴ると思いますけど」
それは危なかった。
ソフィアと離れるつもりはサラサラ無いが、せっかく瘴気の裂け目を塞いだのに危うく死にかける所だった。多分その一発は大分重い。
「…いいのか?」
「いいも何も、ソフィア次第ですから。姉が幸せになるなら何だっていいんです。ただし、悲しませるような事は絶対に許さない。それだけです」
そう言って笑うヒューは、ソフィアとよく似ていた。
「あなたがもっと嫌なヤツだったら良かったのに。そうすれば心置きなく殴れました。でも、俺はあなたの事が好きになってしまいましたから。どうします?瘴気の裂け目、あなたが一人で塞いだことにしときます?」
「いや、そんな事は必要無いよ。君だって結婚がかかってるんだろ?」
「ほんと、良い人ですよね。そうだ、ソフィアと結婚するなら一つ面倒な事がありますけど、大丈夫ですか?」
「面倒な事?」
何だろう。
何か条件でもあるのだろうか。
「ええ。通称“娘さんを僕にくださいイベント“です」
「何だそれ」
「娘を持つ父親が、娘の恋人と戦うんです。ま、北方騎士団の伝統みたいなものですね」
「え?」
「俺は団長相手なんで多分余裕で勝てますよ。普通の魔導騎士では俺は倒せませんから。父親に花を持たせて負けるかもしれませんが、向こうは本気で来るでしょうから迷う所ではありますけどね。あなたはうちの父相手なんで、まぁ、頑張ってください」
なんだ、その地獄のイベントは。
「俺は西方騎士団なんだが」
「関係ないですよ。父はやりますよ、絶対」
「怖すぎるだろ、北方騎士団」
「大丈夫。骨は拾ってあげますよ」
何の慰めにもならない言葉を吐いて、ヒューは立ち上がる。
「さて、そろそろみんなと合流しましょう。残った魔獣も倒してくれた頃でしょう。先輩にもしっかり働いてもらわないと」
ずっと感じていたが、ヒューのセルブスに対する扱いが大分酷い。
「あの人、子供の頃からやたらと厳しいんですよ。公爵家に転移するといっつも捕まえてくるし、マーガレットに会えないように俺の邪魔してくるし」
「公爵家に転移してたのか…それはダメだろう」
「あの人は大概妹が好き過ぎるんですよ」
ん?
おかしな言葉を聞いた気がする。
ヒューの恋人は公爵家の令嬢と言っていたはずだ。
「え?セルブス殿って…」
「団長の息子ですよ。次期公爵でマーガレットの兄ですね」
知らない間にとんでもない人に会っていた。
「義理の兄になる方じゃないか」
あくまでヒューが団長に認められればだが。
「ほんと嫌ですよね。義兄上って呼ぶと信じられないくらい怒るんですよ。この間は本気の氷魔法を出してきましたから。急だったんで避けきれなくて、ちょっと凍っちゃいましたよ」
アルフォンスはセルブスに同情した。
ヒューは自由人過ぎる。
「砦の人達も気になりますし」
ヒューの言葉でアルフォンスは大事な事を思い出した。
「そうだ!俺が掛けた防御魔法が発動したんだった!」
「防御魔法?」
「掛けた記憶が無いから、ソフィに関する事だと思うんだ。早く戻らないと!」
「それを早く言ってください!行きますよ!」
そう言ってヒューはアルフォンスの腕を掴んだ。
「え?」
その瞬間、アルフォンスはヒューと共に仲間の元へ転移した。
「それは…」
「あなたの家族だって良く思っていないでしょう。よく見合いも勧められていたはずです。周りの人間だってそうだ。俺はソフィアが嫌な思いをさせられていた事は知っています。あぁ、勿論ソフィアはそんな事言いませんけどね。記憶を無くす前のあなたは、そういう悪意からソフィアを守ってくれていたようですから、それには感謝しています。でもね、姉が悲しむ姿は見たくないんですよ」
「俺は…」
口の中が乾く。
(俺は…ソフィを…)
「…それでも俺は…ソフィと…一緒にいたい…」
「………」
「俺の我儘だって分かってる。彼女は望んでいない事も。それでも…ソフィを失いたくない…」
「…それは責任感からですか?あなたのために対価を払った姉への」
(責任感…)
そうだ。
最初はそうだったはずだ。
言われるまでそんな事、すっかり忘れていた。
「…最初はね。記憶を無くした俺に、恋人だった事も対価の内容も教えないで治療しようとしたソフィに腹が立って、勢いと責任感から彼女の側にずっと居るって言ったんだ。でも、彼女の笑顔を見たら、なんかこう、胸がギュッとなって…」
『ソフィ』と呼ばれて泣きながら笑うソフィアを思い出す。
「もうなんか、その時に語彙力が死んだ。今思えば、その時にはもう好きになってたと思う。記憶を無くしたのに、それでもやっぱりソフィのことを」
思わず抱きしめた温もりも柔らかさも、頬に触れた冷たさも。
「貴族令息としての役割りを果たす事も放棄して、それでも彼女と居たいとずっと思っていたんだと思うよ。何も無かったようにサッパリと俺の前からいなくなろうとして、それなのに無理して泣いて。あんなソフィを見たら、もう、手放すことなんかできないよ…」
だから何とかソフィアと一緒に居られる方法を探していたはずだ。どんな手を使ってでも。
自分ならば、絶対にそうする。
「だからソフィには、もう一度俺を好きになってもらうように足掻きたい。彼女を悲しませる事もしたくない。ソフィの不安もくだらない障害も全部取り除いて、一緒に幸せになりたいんだ」
ヒューに分かってもらえなくてもいい。
これが今の自分の本心だ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アルフォンスの言葉に、ヒューはとんでもなく大きなため息を吐いた。
「え?」
「分かりました」
「…何が?」
「あなたの気持ちが。別にここでソフィアと別れると言われても良かったんですけどね。まぁ一発くらいは殴ると思いますけど」
それは危なかった。
ソフィアと離れるつもりはサラサラ無いが、せっかく瘴気の裂け目を塞いだのに危うく死にかける所だった。多分その一発は大分重い。
「…いいのか?」
「いいも何も、ソフィア次第ですから。姉が幸せになるなら何だっていいんです。ただし、悲しませるような事は絶対に許さない。それだけです」
そう言って笑うヒューは、ソフィアとよく似ていた。
「あなたがもっと嫌なヤツだったら良かったのに。そうすれば心置きなく殴れました。でも、俺はあなたの事が好きになってしまいましたから。どうします?瘴気の裂け目、あなたが一人で塞いだことにしときます?」
「いや、そんな事は必要無いよ。君だって結婚がかかってるんだろ?」
「ほんと、良い人ですよね。そうだ、ソフィアと結婚するなら一つ面倒な事がありますけど、大丈夫ですか?」
「面倒な事?」
何だろう。
何か条件でもあるのだろうか。
「ええ。通称“娘さんを僕にくださいイベント“です」
「何だそれ」
「娘を持つ父親が、娘の恋人と戦うんです。ま、北方騎士団の伝統みたいなものですね」
「え?」
「俺は団長相手なんで多分余裕で勝てますよ。普通の魔導騎士では俺は倒せませんから。父親に花を持たせて負けるかもしれませんが、向こうは本気で来るでしょうから迷う所ではありますけどね。あなたはうちの父相手なんで、まぁ、頑張ってください」
なんだ、その地獄のイベントは。
「俺は西方騎士団なんだが」
「関係ないですよ。父はやりますよ、絶対」
「怖すぎるだろ、北方騎士団」
「大丈夫。骨は拾ってあげますよ」
何の慰めにもならない言葉を吐いて、ヒューは立ち上がる。
「さて、そろそろみんなと合流しましょう。残った魔獣も倒してくれた頃でしょう。先輩にもしっかり働いてもらわないと」
ずっと感じていたが、ヒューのセルブスに対する扱いが大分酷い。
「あの人、子供の頃からやたらと厳しいんですよ。公爵家に転移するといっつも捕まえてくるし、マーガレットに会えないように俺の邪魔してくるし」
「公爵家に転移してたのか…それはダメだろう」
「あの人は大概妹が好き過ぎるんですよ」
ん?
おかしな言葉を聞いた気がする。
ヒューの恋人は公爵家の令嬢と言っていたはずだ。
「え?セルブス殿って…」
「団長の息子ですよ。次期公爵でマーガレットの兄ですね」
知らない間にとんでもない人に会っていた。
「義理の兄になる方じゃないか」
あくまでヒューが団長に認められればだが。
「ほんと嫌ですよね。義兄上って呼ぶと信じられないくらい怒るんですよ。この間は本気の氷魔法を出してきましたから。急だったんで避けきれなくて、ちょっと凍っちゃいましたよ」
アルフォンスはセルブスに同情した。
ヒューは自由人過ぎる。
「砦の人達も気になりますし」
ヒューの言葉でアルフォンスは大事な事を思い出した。
「そうだ!俺が掛けた防御魔法が発動したんだった!」
「防御魔法?」
「掛けた記憶が無いから、ソフィに関する事だと思うんだ。早く戻らないと!」
「それを早く言ってください!行きますよ!」
そう言ってヒューはアルフォンスの腕を掴んだ。
「え?」
その瞬間、アルフォンスはヒューと共に仲間の元へ転移した。
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