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3.忘れられない人
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クリスの次の出勤日、今日はクリスに実際に接客を教える予定だ。
その前にクリスに出した宿題のチェックがある。
俺はキッチンとホールを隔てるカウンターの前で腕を組み、クリスに両手を身体の脇につける気を付けの姿勢でメニューを初めから順に言うよう命令した。
いくつか答えられないところがあるだろうと思っていたのにクリスは所々詰まりながらも完璧にメニューを暗記してきていた。
メニューをすべて言い終えたクリスは、得意げな表情を浮かべて俺の言葉を待っている。
「全部覚えてきました、どうですか!」
「この程度のこと覚えて当然だ」
明らかに褒められるのを期待していたクリスは、俺の言葉にがっかりと肩を落とす。
この程度の憎まれ口は俺の中で普通なのだが、クリスの落ち込みようになんだか悪いことをしてしまったような気になってくる。
「まあ、頑張ったんじゃないか」
仕方なくフォローをいれたものの、なんだかばつが悪い。
「……はい」
せっかく褒めてやったのに、クリスの返事は暗い。クリスは形の良い眉尻を下げ、大きな身体をしょんぼりと縮めている。
「じゃあ、次は注文取りに行くから。俺の後ろについて来て」
「はいっ!」
クリスは落ちていた肩を持ち上げ姿勢を正す。あんなことでいちいち凹まれてはやりづらいが立ち直りは速いようだ。
ホールの端で店の中を見渡していると、すぐに一つのテーブルから声がかかった。若い男女のグールプでいかにもガラの悪いふざけた連中だ。なんとなく嫌な予感がする。
エプロンのポケットから伝票を取り出しながら、クリスを引きつれて俺は呼ばれたテーブルに向かう。
「あー、注文いっすか?」
「おうかがい致します」
クリスを背に俺はいたって丁寧な口調で応対する。
胸の開いた服を着た女性客の視線がクリスに注がれているのを感じて、俺の嫌な予感はますます強くなった。連れの女が他の男に興味を示して、一緒にいる男たちの気分が良いわけがない。
「あーと、コーヒー二つブルマンとオリジナル、ケーキセット二つで一つがモンブランでもうひとつは――」
「あ、すいませんこれってどんなやつですか?」
明らかに早口で注文を述べる男が言い終わる前に、向かいに座った別の男が妨害するように話しかけてくる。ニヤニヤと笑った男たちの態度からしてわざとに違いない。
ささいなイタズラならいいのだが、相手によっては注文を間違えたと文句つけられることがあるから気を付けなければいけない。今日は背中に新人も連れていることだし恰好の悪いところを見せたくない。
俺が伝票に注文の頭文字と自分だけにわかる記号を使ってメモをしていると、俺の後ろにいたクリスが前に踏み出しもう一人の男性客に向かって話しかける。
「僕がうかがいます、どれですか?」
クリスが喋っている間に注文のメモは取り終えていたけれど、座席の真横に立って男性客を見下ろすクリスの姿からなんとなく目が離せなくなっていた。
凄んでいるわけでもなくただ背筋を正して立ちふさがっているだけなのに、要人警護のボディーガードのような威圧感があった。
「え、ああ、これ……黒蜜入ってる?」
男が指さしたのは、餡蜜と漢字で書かれたメニュー。クリスは漢字がほとんどわからない、メニューは暗記していたようだったけど順に読み方だけを覚えただけかもしれない。たしか餡蜜は昨日俺が教えた漢字の一つではあったけど、答えられるだろうか。
「あんみつですね、確認致します」
「……ああ、はい。お願いします」
クリスはまるで動じることなく、あたかも読めて当然のように流暢な発音であんみつと口にする。
一瞬俺の方がひやりとしたが、クリスがきちんと応対できたことにほっと息をつく。きちんと勉強してきたことをあとで褒めてやらないと。
「モリナガさん、アンミツにクロミツは入っていますか?」
感心していると、すかさずクリスから質問される。確認ってそうか俺に聞くことだよな。
「そちらは黒糖がトッピングされております。黒糖抜きか、黒糖の代わりにクリームをお付けすることもできますがいかがでしょうか?」
「ああ、じゃあ生クリームでお願いします」
「かしこまりました、では注文を復唱させていただきます」
俺の隣に立つ日本男性の平均身長を頭ひとつ分は上回るクリスの迫力に圧倒されてか、彼らは注文の復唱を黙って聞いている。
クリスはもしかして俺の手助けをしてくれようとしたのだろうか。まあ別に助けなんかなくてもやり過ごせたと思うし、結局は俺が答えたのだけれど。
「では、ただいまお持ち致します」
カウンター越しに厨房にいたもう一人のバイトに注文を伝えて一息つくと、さっきまでの威圧感はどこへ行ったのか、クリスは満足げな表情でそわそわと俺に話しかけるタイミングを計っていた。
「何?」
「モリヤガさん、かっこよかったです!」
さっきはちゃんと森永と言えたと思っていたのにまた名前を間違っている。いい加減つっこむのも疲れた。
「別にあんなことよくある」
「あんなイジワルな注文の仕方をされて全部聞き取るなんてすごいです!」
「あれくらい出来て当然」
照れ隠しでつい吐き捨てるような口調になってしまうと、クリスは眉尻を下げてしゅんと唇を引き結んだ。
せっかく感心してくれているのにこんな言い方はひどかったとは思うのだが、どうも素直にありがとうと言えない。
「お前が居なくても平気だったけど、助けてくれようとしてくれたのはうれしかったよ」
不器用なりに感謝の気持ちを伝えた言葉に、クリスは必要以上にうれしそうな顔をした。
クリスがあんまり顔をくしゃくしゃにして笑うものだから、なんだか余計に照れくさくなる。
「モリヤガさんの役に立ててよかった!」
「俺は森永だ」
自分の言葉一つでこんなにうれしそうにされて嫌な気がするはずがない。
これでクリスが可愛い女の子だったら好きになってしまうかもしれない。だけどクリスは男だし可愛いどころか自分よりデカいし、こっちが気後れするほどの美形だ。
だからこんな風に好意を向けられるのは照れくさいし、なんだか身の置き場がないようなざわざわとしたくすぐったさがある。
そのあと今日は見学だけさせるつもりだったのに、試しにクリスにオーダーをとりにいかせてみたらこれが意外とすんなりこなせていて驚いた。
むしろ女性客には喜ばれているみたいで、多少言葉がわからなかったりしてもうまくコミュニケーションをとって相手を不快にさせることがない。天性の人気者気質とでもいうのだろうか。無愛想だと文句を言われる自分とは大違いだ。
砂糖の小袋をソーサーに飾りつけるように並べる横顔を見ながら、ずいぶん楽しそうに仕事をするのだなと感心してしまう。
誰彼かまわず口説いてまわりそうな雰囲気に気が合わなそうだと思っていたけど、仕事の覚えも早いしやる気もある。ちょっと鬱陶しいが悪い奴ではないのかもしれない。
「おいクリス、ちょっと休憩するぞ。コーヒー淹れたからからお前も飲め」
俺が厨房の奥にある事務所から顔を出して呼ぶとクリスはうれしそうに駆けてきた。
「ほれ、そこに座れ。砂糖とミルクいるか?」
そこは事務所兼スタッフの休憩室になっていて、俺はさっさとソファーに腰を下ろし、クリスには向かいの椅子をすすめた。
「アリガトウございます、ブラックでいいです」
クリスは椅子にお行儀よく腰を下ろすと、ほっとしたような表情を浮かべてコーヒーに口をつける。
「はぁ、緊張しました」
「全然そうは見えなかったぞ? 母国でも接客業やってたのか?」
「いえ初めてです、きっと指導がよかったおかげです」
「いや、俺にそんな気ぃ使うことないから」
「丁寧に教えて下さる方に指導してもらえて本当にうれしいです」
色の薄い飾りみたいなまつげで囲まれたブルーの目をキラキラさせてそんなことを言われると、やっぱりなにか照れくさい気がして目をそらしたくなる。
「そういやお前留学ってことは大学生だよな、どこいってんの?」
「帝都商科大です。経済の勉強をしています」
「へえ、なんかすごいな。なんで日本なの?」
「日本の経済は世界的に見て特殊な部分があって、資源や生産性に乏しい割に――」
「あ、もういい。俺には理解できない」
「あは、ごめんなさい。本当のところそれは建前です。ある人に会いたくて日本に来ました、忘れられない大切な人です」
「まじか、お前のファンの女子が泣くな。それでその相手にはもう会ったのか?」
「なんとか探し出して会えましたけど……」
「うまくいかなかったのか?」
「どうでしょう、もっとその人に認めてもらえるような一人前の男になったら愛を伝えようと思っていますけど」
「ぶっ、愛を伝えるって言いまわし恥ずかしいな。さすがフランス人」
「何か変ですか?」
「俺は気恥ずかしくて愛とか恋とか簡単に言えないよ」
「すごく特別な相手に対してでもですか?」
「そうだな、すごく特別だったら言えるかな」
知り合ったばかりの外国人と俺は何の話をしているのだろう、なんだか恥ずかしくなって笑いがこぼれる。ただの照れ隠しだ。
「何だよ、人の顔じろじろ見て」
「あ、いえ。なんでもないです」
クリスは口元を手で押さえて目をそらす。その色素の薄い目元が微かに赤らんでいる、こいつも照れているのだろうか。
「僕がんばりますね!」
「は? なんの話?」
「あなたに認めてもらえるように。その、仕事で」
いきなり話題が飛びすぎだろうと思ったが、クリスは意気揚々としている。
「おお、頑張れよ。期待してるぜ」
初めはこんな奴と気が合うはずがないと思っていたのに、素直じゃない自分がそんな言葉を言えるくらい前向きなクリスの姿に好感を持つようになっていた。
その前にクリスに出した宿題のチェックがある。
俺はキッチンとホールを隔てるカウンターの前で腕を組み、クリスに両手を身体の脇につける気を付けの姿勢でメニューを初めから順に言うよう命令した。
いくつか答えられないところがあるだろうと思っていたのにクリスは所々詰まりながらも完璧にメニューを暗記してきていた。
メニューをすべて言い終えたクリスは、得意げな表情を浮かべて俺の言葉を待っている。
「全部覚えてきました、どうですか!」
「この程度のこと覚えて当然だ」
明らかに褒められるのを期待していたクリスは、俺の言葉にがっかりと肩を落とす。
この程度の憎まれ口は俺の中で普通なのだが、クリスの落ち込みようになんだか悪いことをしてしまったような気になってくる。
「まあ、頑張ったんじゃないか」
仕方なくフォローをいれたものの、なんだかばつが悪い。
「……はい」
せっかく褒めてやったのに、クリスの返事は暗い。クリスは形の良い眉尻を下げ、大きな身体をしょんぼりと縮めている。
「じゃあ、次は注文取りに行くから。俺の後ろについて来て」
「はいっ!」
クリスは落ちていた肩を持ち上げ姿勢を正す。あんなことでいちいち凹まれてはやりづらいが立ち直りは速いようだ。
ホールの端で店の中を見渡していると、すぐに一つのテーブルから声がかかった。若い男女のグールプでいかにもガラの悪いふざけた連中だ。なんとなく嫌な予感がする。
エプロンのポケットから伝票を取り出しながら、クリスを引きつれて俺は呼ばれたテーブルに向かう。
「あー、注文いっすか?」
「おうかがい致します」
クリスを背に俺はいたって丁寧な口調で応対する。
胸の開いた服を着た女性客の視線がクリスに注がれているのを感じて、俺の嫌な予感はますます強くなった。連れの女が他の男に興味を示して、一緒にいる男たちの気分が良いわけがない。
「あーと、コーヒー二つブルマンとオリジナル、ケーキセット二つで一つがモンブランでもうひとつは――」
「あ、すいませんこれってどんなやつですか?」
明らかに早口で注文を述べる男が言い終わる前に、向かいに座った別の男が妨害するように話しかけてくる。ニヤニヤと笑った男たちの態度からしてわざとに違いない。
ささいなイタズラならいいのだが、相手によっては注文を間違えたと文句つけられることがあるから気を付けなければいけない。今日は背中に新人も連れていることだし恰好の悪いところを見せたくない。
俺が伝票に注文の頭文字と自分だけにわかる記号を使ってメモをしていると、俺の後ろにいたクリスが前に踏み出しもう一人の男性客に向かって話しかける。
「僕がうかがいます、どれですか?」
クリスが喋っている間に注文のメモは取り終えていたけれど、座席の真横に立って男性客を見下ろすクリスの姿からなんとなく目が離せなくなっていた。
凄んでいるわけでもなくただ背筋を正して立ちふさがっているだけなのに、要人警護のボディーガードのような威圧感があった。
「え、ああ、これ……黒蜜入ってる?」
男が指さしたのは、餡蜜と漢字で書かれたメニュー。クリスは漢字がほとんどわからない、メニューは暗記していたようだったけど順に読み方だけを覚えただけかもしれない。たしか餡蜜は昨日俺が教えた漢字の一つではあったけど、答えられるだろうか。
「あんみつですね、確認致します」
「……ああ、はい。お願いします」
クリスはまるで動じることなく、あたかも読めて当然のように流暢な発音であんみつと口にする。
一瞬俺の方がひやりとしたが、クリスがきちんと応対できたことにほっと息をつく。きちんと勉強してきたことをあとで褒めてやらないと。
「モリナガさん、アンミツにクロミツは入っていますか?」
感心していると、すかさずクリスから質問される。確認ってそうか俺に聞くことだよな。
「そちらは黒糖がトッピングされております。黒糖抜きか、黒糖の代わりにクリームをお付けすることもできますがいかがでしょうか?」
「ああ、じゃあ生クリームでお願いします」
「かしこまりました、では注文を復唱させていただきます」
俺の隣に立つ日本男性の平均身長を頭ひとつ分は上回るクリスの迫力に圧倒されてか、彼らは注文の復唱を黙って聞いている。
クリスはもしかして俺の手助けをしてくれようとしたのだろうか。まあ別に助けなんかなくてもやり過ごせたと思うし、結局は俺が答えたのだけれど。
「では、ただいまお持ち致します」
カウンター越しに厨房にいたもう一人のバイトに注文を伝えて一息つくと、さっきまでの威圧感はどこへ行ったのか、クリスは満足げな表情でそわそわと俺に話しかけるタイミングを計っていた。
「何?」
「モリヤガさん、かっこよかったです!」
さっきはちゃんと森永と言えたと思っていたのにまた名前を間違っている。いい加減つっこむのも疲れた。
「別にあんなことよくある」
「あんなイジワルな注文の仕方をされて全部聞き取るなんてすごいです!」
「あれくらい出来て当然」
照れ隠しでつい吐き捨てるような口調になってしまうと、クリスは眉尻を下げてしゅんと唇を引き結んだ。
せっかく感心してくれているのにこんな言い方はひどかったとは思うのだが、どうも素直にありがとうと言えない。
「お前が居なくても平気だったけど、助けてくれようとしてくれたのはうれしかったよ」
不器用なりに感謝の気持ちを伝えた言葉に、クリスは必要以上にうれしそうな顔をした。
クリスがあんまり顔をくしゃくしゃにして笑うものだから、なんだか余計に照れくさくなる。
「モリヤガさんの役に立ててよかった!」
「俺は森永だ」
自分の言葉一つでこんなにうれしそうにされて嫌な気がするはずがない。
これでクリスが可愛い女の子だったら好きになってしまうかもしれない。だけどクリスは男だし可愛いどころか自分よりデカいし、こっちが気後れするほどの美形だ。
だからこんな風に好意を向けられるのは照れくさいし、なんだか身の置き場がないようなざわざわとしたくすぐったさがある。
そのあと今日は見学だけさせるつもりだったのに、試しにクリスにオーダーをとりにいかせてみたらこれが意外とすんなりこなせていて驚いた。
むしろ女性客には喜ばれているみたいで、多少言葉がわからなかったりしてもうまくコミュニケーションをとって相手を不快にさせることがない。天性の人気者気質とでもいうのだろうか。無愛想だと文句を言われる自分とは大違いだ。
砂糖の小袋をソーサーに飾りつけるように並べる横顔を見ながら、ずいぶん楽しそうに仕事をするのだなと感心してしまう。
誰彼かまわず口説いてまわりそうな雰囲気に気が合わなそうだと思っていたけど、仕事の覚えも早いしやる気もある。ちょっと鬱陶しいが悪い奴ではないのかもしれない。
「おいクリス、ちょっと休憩するぞ。コーヒー淹れたからからお前も飲め」
俺が厨房の奥にある事務所から顔を出して呼ぶとクリスはうれしそうに駆けてきた。
「ほれ、そこに座れ。砂糖とミルクいるか?」
そこは事務所兼スタッフの休憩室になっていて、俺はさっさとソファーに腰を下ろし、クリスには向かいの椅子をすすめた。
「アリガトウございます、ブラックでいいです」
クリスは椅子にお行儀よく腰を下ろすと、ほっとしたような表情を浮かべてコーヒーに口をつける。
「はぁ、緊張しました」
「全然そうは見えなかったぞ? 母国でも接客業やってたのか?」
「いえ初めてです、きっと指導がよかったおかげです」
「いや、俺にそんな気ぃ使うことないから」
「丁寧に教えて下さる方に指導してもらえて本当にうれしいです」
色の薄い飾りみたいなまつげで囲まれたブルーの目をキラキラさせてそんなことを言われると、やっぱりなにか照れくさい気がして目をそらしたくなる。
「そういやお前留学ってことは大学生だよな、どこいってんの?」
「帝都商科大です。経済の勉強をしています」
「へえ、なんかすごいな。なんで日本なの?」
「日本の経済は世界的に見て特殊な部分があって、資源や生産性に乏しい割に――」
「あ、もういい。俺には理解できない」
「あは、ごめんなさい。本当のところそれは建前です。ある人に会いたくて日本に来ました、忘れられない大切な人です」
「まじか、お前のファンの女子が泣くな。それでその相手にはもう会ったのか?」
「なんとか探し出して会えましたけど……」
「うまくいかなかったのか?」
「どうでしょう、もっとその人に認めてもらえるような一人前の男になったら愛を伝えようと思っていますけど」
「ぶっ、愛を伝えるって言いまわし恥ずかしいな。さすがフランス人」
「何か変ですか?」
「俺は気恥ずかしくて愛とか恋とか簡単に言えないよ」
「すごく特別な相手に対してでもですか?」
「そうだな、すごく特別だったら言えるかな」
知り合ったばかりの外国人と俺は何の話をしているのだろう、なんだか恥ずかしくなって笑いがこぼれる。ただの照れ隠しだ。
「何だよ、人の顔じろじろ見て」
「あ、いえ。なんでもないです」
クリスは口元を手で押さえて目をそらす。その色素の薄い目元が微かに赤らんでいる、こいつも照れているのだろうか。
「僕がんばりますね!」
「は? なんの話?」
「あなたに認めてもらえるように。その、仕事で」
いきなり話題が飛びすぎだろうと思ったが、クリスは意気揚々としている。
「おお、頑張れよ。期待してるぜ」
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