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第22話 お家にメイドさんがやってきた!②

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(この子職場からここまで、この格好できたのかな……)
彼女の見た目は気になったが、とりあえず応接間で家事代行の説明をしてもらうことにした。

「小池 顕義様ですね。これからお客様の事をご主人様と呼ばせて頂きます。それでは、今日のお掃除プランのご説明を─」

僕は改めて上から順番に、彼女の姿を確認することにした。

ピンクがかった金髪をツインテールにしてフリルのカチューシャを着けている。
(借りてる少女漫画の主人公が飛び出してきたみたいだな……)

垂れ目がちの潤んだ黒い瞳。
(うっ、見てると何だか息が苦しくなる……)

襟から胸元まではブラウス生地になっていて、ワンサイズ下のものを着てきたかの様に胸元の生地は横に皺が寄って、何だかボタンが飛びそうだった。
(大きくて柔らかそう……駄目だ!つい胸元ばかり見てしまう!他のところを……駄目だ!………何故ミニスカートにした!!)

ニーハイソックスからはムッチリっとした太ももが覗いていた。
(ナイスガーターベルト!じゃなくって、何て吸引力なんだ!他のところを見ないと……)

(二の腕も白くて柔らかそう……)
結局、何処を見てもアキヨシは目のやり場に困った。

「ご主人様?以下の内容とご料金をご確認下さい。」
「あ、ああ……(話が入って来ないって本当にあるんだな……)」

(うーん、なんかコンセプトがある分、割高だなぁ………今日一回だけだし、まぁいっかな。)

「あ、名刺渡すの忘れていました!」
渡された名刺を見ると─
「この……ドジっ娘メイドって何だい?」
「はい!私はドジっ娘メイド担当ですが、家事においてドジはしませんので、ご安心ください!」

「…………まぁ、お手並み拝見ということで。」
アキヨシは、そんな偉そうな事を言ったが、実際のところ…………
仕事しているオコメさんをを凝視して、コンセプト分の元を取る気満々だった。

「先ずはゴミの選別をしますね。食器は台所に持って行きます。」
彼女がゴミ袋にゴミを入れていくたび、スカートがヒラヒラと動いた。

「………。」
アキヨシは自室に戻った。そして─
「あのー…ご主人様?私が掃除している間、ごゆっくりなさって下さいね…………。お飲物でもお入れしましょうか?」
「お気になさらず。」
わざわざキャスター付きの椅子を持って来て、一定の距離から見守ることにした。
あわよくば………会話もしたかった!

(何だか、見られてて緊張しますーー!さては…………オコメを信用してないですね!時間内にどれだけ出来るか、お掃除スキルを見せつけてやります!)
オコメさんのお掃除スピードが上がると、スカートの揺れも激しくなる訳で…………

(みえ………ない………)
アキヨシは、釘付けになっていた。

「お掃除ロボットの行き渡らない所は、フロスをかけていきますね!」
オコメさんが前かがみになると、スカート丈が持ち上がった。しゃがみ込むと、スカートがフワッと捲れ上がりそうになった。

(みえ………ない………)
すっかり会話する余裕はなくなっていた。

(ご主人様が…頷きながらこちらを見ている!これは、オコメのお掃除スキルを認めて下さってる?張り切って次へ─)
そうして彼女は、油断してしまっていたのだった。

床に置き忘れていたフロスを踏んでしまい………体が後ろに傾いた。
「きゃっ………!!」

(あ、これは…………)
その時、研究者アキヨシの頭はフル回転した。

(少女漫画と少年漫画の違いは…………女の子のスカート丈の長さに関わらず、パンツが見えるか見えないかの違いである!!)

《出来れば、少年漫画のラブコメ展開を期待する!》

だけどアキヨシは、間一髪とっさにオコメさんの体を支えてあげたのだった。
「(柔らかい……良い匂いがする……)こっ、これは、お触りしたことには入らないよね?」
焦って変な言い訳を言ってしまったし、多分目も泳いでいた。

「ご、ご主人様!申し訳ありません!私の不注意です!ドジしてしまいました。」
「ははっ、流石ドジっ娘メイドさん………」

チラッっと見た先では、スカートは捲れ上がっていた。だけど見えたのは─
(ドロワーズ!!少女漫画知識が僕の頭を侵食している!)
パンツは見えなかった……そりゃ、下に何か履いてるよね………
(まぁ……これはこれで……中々…)
アキヨシは、どこまでも少年心を持ち合わせていた。

一段落ついて、トントントンっと包丁の小気味の良い音が響いていた。
「へー君、擬人化の子だったの?」
「はい!」
「うちの娘もそうなんだけど……家庭的な君が娘とか羨ましいなあ。(可愛い子が良かった!!)」
本当にアキヨシの娘にならなくて良かったね。と、突っ込む人はこの場には居なかった。

「家庭的だなんて……。娘さんも擬人化の方なんですね!それは、是非お会いしてみたいです。」
「じゃぁ…………住み込む?うちの専属メイドにならない?」
アキヨシはもう自重しなかった。

「それは、ちょっと困りますね…。他の仕事も掛け持ちですし、夜はお家のお手伝いもしたいですし。」
「えー、じゃぁ他のお仕事減らしたら良いじゃん。」
「それは駄目なんです……家族(のコユズちゃんとレトルトちゃん)を見守らなければ!
………はい、初回お試しですが、御夕食お作りしました。是非、娘さんと頂いて下さいね。」
そして、終了時間のアラームが鳴った─

「君の…その格好は心配だから、送っていこうか?」
「大丈夫です!送迎車で送り迎えして貰えるので。」
「えー本当にうちの専属にならない?絶対触ってくる変な客居るよー。」
誰が言ってるんだという話だった。

「それは大丈夫です。いざとなったらこれを使えと支店長さんが………」
と、エプロンのポケットから、直通で通報出来る携帯式非常ボタンと………スタンガンが出てきた。

(あっぶねー………)
何が危なかったのかは知らないけど、アキヨシはそう思った。

外には、送迎車が止まっていた。
「あ、支店長さん!」
アキヨシはそれを聞いて、戦士の出で立ちで交渉へと向かった。

「この子をうちの専属に出来ませんか?(癒しが欲しい!!)」
「駄目よー!他の所にも行って、勉強していって貰わないと!(それにこの子、人気でそうだから!うちで囲っておかないと…)」
邪な考えを持つ大人たちの会話に、またもオコメさんはあたふたしただけだった……

結論。我が家には、週一回ペースでドジっ娘メイドさんに来て貰える事になりました。
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