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第44.5話 素敵な同棲生活。ノブ子視点

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私の事、ノブ子って読んで下さい。養父のアキヨシに、そう自己紹介しなさいって言われています。

目覚めるとそこには、元ミミズクのハズキ先輩が私の為の愛の巣を用意してくれていた。
フクロウに求愛されるのは初めてなので、とても嬉しいです。

ハズキが用意した巣は、とても居心地のよい場所だった。
私の部屋程ではないけれど、これは中々良いドット柄ですねえ。お布団の柄が、茶色とベージュの落ち着いたドット柄。
その軽やかな羽毛布団を、私にふわりと被せて彼は言った。
「ここで大人しくしてて……」
影のある先輩素敵……。
だけど、すぐ勉強しに下に降りて行っちゃう。最低でも5時間以上は勉強しなくちゃいけないんだって。疲れてないかって聞いたら、今カコモン?を見直ししてるだけだから大丈夫なんだって。
勉強の出来る彼氏素敵……。

だけどこの時間、とても暇。
壁を見ると、ハンガーに掛けられた、白色の詰襟の制服が掛けてあった。
(白の制服ってまるで、ミトさんが貸してくれた漫画に出てくる忍者王子みたい!)
初めて会ったあの時、私をお姫様抱っこしたしね。
まって!その時、私も白の制服着てた。ということは、これは実質結婚式だったのでは?
ということは、これは事実婚!

幸せ。暖かくなって、眠くなって来た─
ここは、フクロウカフェ?ハズキと私が会話してる。ある日の思い出。
「ハズキってどのフクロウだった?この子に似てる。」
「コノハズクか……名前も似てるしね。身体が細くなって可愛いよね。だけど、俺はこっちだよ。この子はメスだけど。」
「意外な大きさ……」
「俺は小柄だけど、大型種のベンガルワシミミズクだったんだ。それでも人間よりかは小さいか。」
「ハズキ、意外とカッコいい系。」
肉食系な旦那さま素敵……。

そして、彼が動物だった時の抜け羽根を貰った。綿が詰められた綺麗な箱に入れられていた。
「これ大事にしてたやつなのに、本当に貰っていい?」
「いいよ。ノブ子ちゃんに持っていて欲しい。俺の事、忘れないでいて……」
綺麗な箱でプレゼントされる物……これって実質、結婚指輪と同じなのでは?
この羽根スベスベしてる。彼の髪を触ると同じ感触がした。

目が覚めて、目の前にはもう小柄では無くなったハズキが添い寝していたから、夢を見てたんだって気づいたよ。

「ノブ子は星空が好きだったよな。外には出せないけど、プラネタリウムなら見せてあげる……」
2人で見る天井いっぱいのお星さま。時折、流れ星も映し出す。
最高のお家デート。これが、夢の続きだったら嫌だな。だけど、同棲生活は3日で終わってしまうんだった。それなら、夢でもいいかも知れない。

「擬人化する前の前日、ゲージの中から窓の外の流れ星を見て願ったんだ……窓の向こう側へ行けて、触られる立場じゃなくしてくれって……」
フクロウカフェに居るのに、触られるのがキライなハズキ。お客さんにいつも噛みつきそうになるから、ほとんどバックヤードで過ごしてた。
「なのに、君に触られても、噛みつきたい気持ちにはならなかった。不思議だよ─」
そうして、苦しそうな顔をして眠ってしまった。

私は一体何の動物だったんだろう?
ハズキと同じフクロウだったら良かったのに……
居心地の良いこの場所で、子育てしたいな。
沢山たくさん育てるんだ。私とハズキと林さんとミトさんの子どもを育てるんだ。

私の事を気にしてくれるお友達と出会うまでは、自分の正体なんて知っても知らなくてもどっちでも良かった。
だけど、最近自分自身の正体を知りたいと思っている。

皆が望んでいる動物じゃなかったとしても……私の事、そのまま好きで居てくれるかなあ……
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