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Case.03 Game
政都 中央地区α 二月十五日 午後八時四十八分
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腹が立つほど薄水色の空の下、三色の信号は早く家に帰りたい自分を嗤うように延々と車を通し続ける。
ようやく色を変えたそれを確認し、様々な高さの建物達の足元をすり抜け、街行く人には見向きもせずに息を切らせながら走る。
(ハヤトの授業って、終わってるんだよな?)
生まれつき持っている能力が強力で、その影響で外に出られる時間が夜だけの弟は、入学式以降は通信授業を受けているために学校へ行っていない。
どんなに空が晴れていても、様々な色が街中に溢れていても、一緒に見て回り遊ぶこともできない。
眼鏡のまま周りを見回し、壁を透かし見て人の少ない裏路地を見つけて近道を進めば、自分の住んでいるマンションが見えてくる。
半分平日で半分休日の様な今日は、いつもより帰る時間が早いせいか人が多くて邪魔にすら思えてしまう。
家まで間もなくのところ、近くの公園に立つ時計付き照明を見あげてみれば、その二つの針は午後二時半を示していた。
(早く帰ってハヤトのゲーム見たいな)
額や横顔に浮く汗を手の甲で拭い、目と鼻の先にまで近づいたマンションへ走りだす。
玄関ポーチを抜け、エレベーターへカードキーと指紋を読ませて自宅階を連打し、誰も居ない事を確認してドアを閉めれば、機械音と共に上昇を始める。
通常居住階とは異なるためエレベーターは止まることなく昇り、規則的に見える数秒間の窓外の同じ風景を見つめるうちに、自分達の暮らす居住階へと止まる。
早く帰宅出来た事と遊びたい心で逸る気持ちが、キーケースを見つけさせてくれない。
「あったっ…と、たっだいまー!!」
鞄奥から漸く掴み出した鍵を差し込み開けながら、広い廊下へ声を響かせる。
靴を脱ぎ捨て玄関を上がれば、部屋から出てきた弟は目を丸くして迎えてくれた。
「っお、おかえり…!今日早かったな?」
「おぅ!土曜だからな、ちょっと遅いくらいだぞ?あ、昨日のボス倒したのか?」
「うん、いま倒した」
「スゲー!学校のヤツら、まだだれも倒してなかったぞ?よし、続き遊ぶ前に──」
────────────
程良く薄暗い店内に温かみのある照明。
何かを振り混ぜる音、聞き取れない程度の人の細やかな話し声の中、疾風は重い瞼を上げて伊達眼鏡を外して目をこすり掛け直す。
ボックス席の角壁に頭を預けていたせいか、首が怠い気がする。
首を左右に回しつつ、周囲の客達が皆一様に振り向いているその方向へと視線を向ければ、誰かがアルコールドリンクを頼んだのか、シェイカーを振る馬奈木が見える。
カウンターに座るのは数人の女性客だろうか、店主のその姿に喜び携帯端末を向けていた。
「……まだ来てねえ、のか」
間もなく空になりそうなカップへ目を落とし、自分も何か頼もうかと店主の手が空くのを待っていると、カウベルが小気味よい音を立てて来客を知らせた。
「いらっしゃい」
シェイカーをグラスへ傾けた馬奈木が、ゲーム用のガンケースを背負った紫髪の青年に言葉を掛ける。
客の数人は誰かに似ていないかと噂を始めるが、視線に構う事なく自分の席まで歩み寄る。
無言で渡されたケースを受け取り座席横へ立て掛ければ、向かいの席に上衣を掛けた弟は眼鏡下の紫電の目を細めたまま座った。
「お疲れさん」
「……本当に疲れた」
馴染みの店に来た事で気が緩んだのか、唸るように呟いて乱れていた髪へ手櫛を通す。携帯端末をテーブルへ半ば投げ置き、何かを言い淀むように頭を掻く。
様子からして終業から来た疲労や空腹から来る苛立ちではないらしく、ただただ気が荒れているのが見て取れる。
頬杖をつき疾斗が見つめる先を確認すれば、遊具銃が詰められたケースへと向けられていた。
「…そういうことか」
「仕事に選んでいる以上、撮影自体は別に構わない。腹が立つのは私情持ち込んで俺達を指名してきた事、決められた負け戦に有る事無い事書き立てられる事。ただの引き立て役にされるだけの方が数倍マシだ」
「確かに書かれる側は堪ったモンじゃねーわな」
「相手には箔がつくがこっちには何の得もない」
読者の興味を引くために使われる事よりも屈辱だったのだろう。
珍しく淡々と吐き出される毒に疾風は頷きつつ、若干残る眠気を冷めきったコーヒーを飲み干す。
「カツサンドとサラダお待ちどうさま。荒れてるね、疾斗くん」
「趣味事で煮え湯呑まされたんだってよ」
「正しくは呑まされた上に後でまた呑む事になってる」
「…それは気分も悪くなるね」
「たかがゲームかも知れないが、されどゲームだ。相手が居てのそれは、気を揉むようなモノにするべきじゃない」
「健全的な考え方だな」
「僕は良いと思うよ。疾斗くんらしい」
目を細めて苦笑する馬奈木に首を傾げた疾斗が食事へ手を合わせる。
外食であまり口に運ぶ事が少ない肉類を食している所を見ると、あまり顔に出ていないだけでストレスは高かったのだろう。
手に取っていたメニューを開き、スコーンとココアを追加で頼めば、店主がゆるりと笑みを浮かべて頷く。
その背を見送り視線を弟へと移すと、携帯画面を眺めて苛立たしげに舌打ちを響かせた。
「どうかしたか?」
「…撮影で一緒だった奴から嫌味が画像付きで来た」
手に持っていた食べかけのカツサンドを一口に放り込み、片手で何事かを打ち込むと携帯端末を伏せてサラダに手を伸ばす。
本人は外に出しているつもりは無いだろうが、眉間には皺が刻まれ、纏う気配に怒りが滲んでいるのを感じる。
人に当たるような事はないのは良いが、疾斗の場合は感情を内側に溜めて呑み込んでしまうことが多い。
感情を昇華させている一つでもあるサバイバルゲームで負を負わされた事で、それが余計な心労になったのだろう。
(本が来るまで機嫌悪いパターンだな、こりゃ…)
「はいお待たせ、スコーンとココア」
運ばれて来たスコーンを受け取り、真ん中から割れば小麦と僅かなアールグレイの香りが鼻腔を擽る。
置かれた付け合わせをバターナイフに掬いつつ、険しい表情を崩せない疾斗に同情の息を吐いて焼菓子を齧る。
傍らに立つ店主へ目を向けて音無しに問えば、軽く肩を竦めて苦笑すると、弟へ視線を向けて小首を傾げた。
「……そういえば昔、ゲームセンターって二人とも行っていたよね?」
「中学高校の頃は里央と三人で行った」
「あぁ。俺は見てるかクレーンで、二人は対戦やってたっけな」
「その対戦って、こういうのかい?」
銀盆を脇に抱え直し、サロンエプロンから四つ折りの紙が開き出され、テーブルに置かれる。
赤地に黒影でデザインされた広告には【Two-man Cell Battle Royaler】と白文字で抜かれている。
周囲に描かれた男女のイラストには、十数年前に見た記憶がある者もいれば馴染みの無い者も居り、中にはどことなく誰かに似ている者も居た。
「ロケテストっていうのをしていて、この広告を持っている人だけ遊べるそうなんだ。常連さんから[声を当てているから見てほしい]って言われてて気にはなるんだけど、ゲーム自体やったことも無いし、行くのも気恥ずかしくてねぇ…」
「つーまーり、替わりに俺らに行ってきてくれ、って事か」
「おつかい分のサービスはさせてもらうよ」
数枚を重ね折られている広告を見やり、あまり興味のない誘いに軽く肩を上げて二口目を口に運ぶ。
スコーンの程良い甘さと付け合わせのホイップクリームの濃厚さが噛み合い、練り込まれた紅茶葉の香りも相まって心が弛む。
疾斗は如何するのかと顔を上げると、止めていたフォークを皿に置いて、見つめていた広告を手に取り、枚数を確認し始めた。
「お、珍しい」
「兄貴どうせ行かないだろ?」
「さすが弟殿、よーく分かってらっしゃる。見るのは良いが自分がやるのはどうにも」
「疾斗くん、良いのかい?」
「ああ。ちょうど事務所の後輩が行きたがってたんだ。チラシが手に入らないと騒いでいたから良かった」
数枚分けた紙束を携帯端末の下へと置き、軽く頭を下げた疾斗が緩く口角を上げれば、余りをエプロンへ戻した馬奈木もほっとした表情で席を離れてゆく。
多少の不機嫌も緩和されたのか、纏っていた怒気が緩んだ疾斗の眉間からは皺も取れていた。
(……よく覚えてたな、俺らがゲーセン通ってたの)
店主の記憶力の良さに感心しながら、夢で幼い弟へゲームの進行を聞いていたことを思い出し、疾風はココアへ口を付ける。
「「……ゲームに縁のある日だな」」
同時に放った言葉に驚いて顔を上げれば、同じ顔で目を見開いた弟も此方を見ていた。
ようやく色を変えたそれを確認し、様々な高さの建物達の足元をすり抜け、街行く人には見向きもせずに息を切らせながら走る。
(ハヤトの授業って、終わってるんだよな?)
生まれつき持っている能力が強力で、その影響で外に出られる時間が夜だけの弟は、入学式以降は通信授業を受けているために学校へ行っていない。
どんなに空が晴れていても、様々な色が街中に溢れていても、一緒に見て回り遊ぶこともできない。
眼鏡のまま周りを見回し、壁を透かし見て人の少ない裏路地を見つけて近道を進めば、自分の住んでいるマンションが見えてくる。
半分平日で半分休日の様な今日は、いつもより帰る時間が早いせいか人が多くて邪魔にすら思えてしまう。
家まで間もなくのところ、近くの公園に立つ時計付き照明を見あげてみれば、その二つの針は午後二時半を示していた。
(早く帰ってハヤトのゲーム見たいな)
額や横顔に浮く汗を手の甲で拭い、目と鼻の先にまで近づいたマンションへ走りだす。
玄関ポーチを抜け、エレベーターへカードキーと指紋を読ませて自宅階を連打し、誰も居ない事を確認してドアを閉めれば、機械音と共に上昇を始める。
通常居住階とは異なるためエレベーターは止まることなく昇り、規則的に見える数秒間の窓外の同じ風景を見つめるうちに、自分達の暮らす居住階へと止まる。
早く帰宅出来た事と遊びたい心で逸る気持ちが、キーケースを見つけさせてくれない。
「あったっ…と、たっだいまー!!」
鞄奥から漸く掴み出した鍵を差し込み開けながら、広い廊下へ声を響かせる。
靴を脱ぎ捨て玄関を上がれば、部屋から出てきた弟は目を丸くして迎えてくれた。
「っお、おかえり…!今日早かったな?」
「おぅ!土曜だからな、ちょっと遅いくらいだぞ?あ、昨日のボス倒したのか?」
「うん、いま倒した」
「スゲー!学校のヤツら、まだだれも倒してなかったぞ?よし、続き遊ぶ前に──」
────────────
程良く薄暗い店内に温かみのある照明。
何かを振り混ぜる音、聞き取れない程度の人の細やかな話し声の中、疾風は重い瞼を上げて伊達眼鏡を外して目をこすり掛け直す。
ボックス席の角壁に頭を預けていたせいか、首が怠い気がする。
首を左右に回しつつ、周囲の客達が皆一様に振り向いているその方向へと視線を向ければ、誰かがアルコールドリンクを頼んだのか、シェイカーを振る馬奈木が見える。
カウンターに座るのは数人の女性客だろうか、店主のその姿に喜び携帯端末を向けていた。
「……まだ来てねえ、のか」
間もなく空になりそうなカップへ目を落とし、自分も何か頼もうかと店主の手が空くのを待っていると、カウベルが小気味よい音を立てて来客を知らせた。
「いらっしゃい」
シェイカーをグラスへ傾けた馬奈木が、ゲーム用のガンケースを背負った紫髪の青年に言葉を掛ける。
客の数人は誰かに似ていないかと噂を始めるが、視線に構う事なく自分の席まで歩み寄る。
無言で渡されたケースを受け取り座席横へ立て掛ければ、向かいの席に上衣を掛けた弟は眼鏡下の紫電の目を細めたまま座った。
「お疲れさん」
「……本当に疲れた」
馴染みの店に来た事で気が緩んだのか、唸るように呟いて乱れていた髪へ手櫛を通す。携帯端末をテーブルへ半ば投げ置き、何かを言い淀むように頭を掻く。
様子からして終業から来た疲労や空腹から来る苛立ちではないらしく、ただただ気が荒れているのが見て取れる。
頬杖をつき疾斗が見つめる先を確認すれば、遊具銃が詰められたケースへと向けられていた。
「…そういうことか」
「仕事に選んでいる以上、撮影自体は別に構わない。腹が立つのは私情持ち込んで俺達を指名してきた事、決められた負け戦に有る事無い事書き立てられる事。ただの引き立て役にされるだけの方が数倍マシだ」
「確かに書かれる側は堪ったモンじゃねーわな」
「相手には箔がつくがこっちには何の得もない」
読者の興味を引くために使われる事よりも屈辱だったのだろう。
珍しく淡々と吐き出される毒に疾風は頷きつつ、若干残る眠気を冷めきったコーヒーを飲み干す。
「カツサンドとサラダお待ちどうさま。荒れてるね、疾斗くん」
「趣味事で煮え湯呑まされたんだってよ」
「正しくは呑まされた上に後でまた呑む事になってる」
「…それは気分も悪くなるね」
「たかがゲームかも知れないが、されどゲームだ。相手が居てのそれは、気を揉むようなモノにするべきじゃない」
「健全的な考え方だな」
「僕は良いと思うよ。疾斗くんらしい」
目を細めて苦笑する馬奈木に首を傾げた疾斗が食事へ手を合わせる。
外食であまり口に運ぶ事が少ない肉類を食している所を見ると、あまり顔に出ていないだけでストレスは高かったのだろう。
手に取っていたメニューを開き、スコーンとココアを追加で頼めば、店主がゆるりと笑みを浮かべて頷く。
その背を見送り視線を弟へと移すと、携帯画面を眺めて苛立たしげに舌打ちを響かせた。
「どうかしたか?」
「…撮影で一緒だった奴から嫌味が画像付きで来た」
手に持っていた食べかけのカツサンドを一口に放り込み、片手で何事かを打ち込むと携帯端末を伏せてサラダに手を伸ばす。
本人は外に出しているつもりは無いだろうが、眉間には皺が刻まれ、纏う気配に怒りが滲んでいるのを感じる。
人に当たるような事はないのは良いが、疾斗の場合は感情を内側に溜めて呑み込んでしまうことが多い。
感情を昇華させている一つでもあるサバイバルゲームで負を負わされた事で、それが余計な心労になったのだろう。
(本が来るまで機嫌悪いパターンだな、こりゃ…)
「はいお待たせ、スコーンとココア」
運ばれて来たスコーンを受け取り、真ん中から割れば小麦と僅かなアールグレイの香りが鼻腔を擽る。
置かれた付け合わせをバターナイフに掬いつつ、険しい表情を崩せない疾斗に同情の息を吐いて焼菓子を齧る。
傍らに立つ店主へ目を向けて音無しに問えば、軽く肩を竦めて苦笑すると、弟へ視線を向けて小首を傾げた。
「……そういえば昔、ゲームセンターって二人とも行っていたよね?」
「中学高校の頃は里央と三人で行った」
「あぁ。俺は見てるかクレーンで、二人は対戦やってたっけな」
「その対戦って、こういうのかい?」
銀盆を脇に抱え直し、サロンエプロンから四つ折りの紙が開き出され、テーブルに置かれる。
赤地に黒影でデザインされた広告には【Two-man Cell Battle Royaler】と白文字で抜かれている。
周囲に描かれた男女のイラストには、十数年前に見た記憶がある者もいれば馴染みの無い者も居り、中にはどことなく誰かに似ている者も居た。
「ロケテストっていうのをしていて、この広告を持っている人だけ遊べるそうなんだ。常連さんから[声を当てているから見てほしい]って言われてて気にはなるんだけど、ゲーム自体やったことも無いし、行くのも気恥ずかしくてねぇ…」
「つーまーり、替わりに俺らに行ってきてくれ、って事か」
「おつかい分のサービスはさせてもらうよ」
数枚を重ね折られている広告を見やり、あまり興味のない誘いに軽く肩を上げて二口目を口に運ぶ。
スコーンの程良い甘さと付け合わせのホイップクリームの濃厚さが噛み合い、練り込まれた紅茶葉の香りも相まって心が弛む。
疾斗は如何するのかと顔を上げると、止めていたフォークを皿に置いて、見つめていた広告を手に取り、枚数を確認し始めた。
「お、珍しい」
「兄貴どうせ行かないだろ?」
「さすが弟殿、よーく分かってらっしゃる。見るのは良いが自分がやるのはどうにも」
「疾斗くん、良いのかい?」
「ああ。ちょうど事務所の後輩が行きたがってたんだ。チラシが手に入らないと騒いでいたから良かった」
数枚分けた紙束を携帯端末の下へと置き、軽く頭を下げた疾斗が緩く口角を上げれば、余りをエプロンへ戻した馬奈木もほっとした表情で席を離れてゆく。
多少の不機嫌も緩和されたのか、纏っていた怒気が緩んだ疾斗の眉間からは皺も取れていた。
(……よく覚えてたな、俺らがゲーセン通ってたの)
店主の記憶力の良さに感心しながら、夢で幼い弟へゲームの進行を聞いていたことを思い出し、疾風はココアへ口を付ける。
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