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記憶違いの女
10月20日 PM11:04
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気に入った女がいれば必ず連れて行くショットバーがある。
女が確信に近い推測で其処へと向かうと、案の定身体を繋ぎ合わせた男が店から出て来た所だった。
───見知らぬ女を連れて。
手を絡め合わせて隣を歩く女と話す男の表情はとても優しい物で、時折照れたように笑う。自分には向けられたことがない表情が別の女に向けられていると思うだけで更なる嫉妬に身が焦がされる様だった。
すぐにでも引き剥がしてやりたい気持ちが沸き出すが其れを押さえつけて女が一人になるまで気づかれぬ様に後を追う。
都内でも人気で高級なマンションの前に着くと、連れだっていた女は男が入口の中へと消えて行く姿を見送り、姿が見えなくなったのか左手に視線を落とす。
その表情は愛しさに満ち溢れている事が見て取れるほど柔らかなもので。
その瞬間、女の歪んだ怒りが衝動のままに行動へと動かした。
鞄から水を取り出しタオルに染み込ませると、歩き出した女へと猛然と走り出す。
振り返り女の顔を見た相手が叫び声を上げようと口を開いた瞬間に鼻口へとタオルを叩きつけ一時的に呼吸器官を塞ぐと、両腕を背中側で縛り上げて明かりの少ない駐車場へと引きずり込む。
タオルを外し、一気に肺へと流れ込む酸素に噎せる女の口に再度濡らして丸めたタオルを押し込めた。
苦しそうに鼻で呼吸をする女の姿に思わず笑いが込み上げてくるが、其れを喉奥で殺しながら鞄から金槌とナイフを取り出した。
「ーっ!!ぅーっ!!」
声は濡れタオルに塞がれて響くことなく虚しく吸音される。恐怖から流れるであろう涙で化粧も溶けぐしゃぐしゃの顔が被虐心を更に煽る。
貴女さえ居なくなれば
貴女さえ現れなければ
貴女サえ消えテくれレば
アンタ サエ 死ンデ クレレバ
衝動のままに金槌とナイフを振り下ろし続けどの位時間が過ぎただろうか、顔の形は既に歪みきりピクリとも動かなくなったのを確認する。
鬼が宿っていたような行動とは裏腹に、己を邪魔するものが無くなった事に安堵してるのか柔かな笑みが浮かんでいた。
ーあ の 人 が 私 を 待 っ て い る 。
早 く 戻 ら な き ゃ 心 配 す る 。
塵が積まれた集積場へ血に濡れた服を脱ぎ捨てて適当な袋へ捩じ込むと、ボトルに残っていた水で血を洗い流して途中で購入した男の好みそうな真新しい服を纏い、部屋へ歩き出した。
女が確信に近い推測で其処へと向かうと、案の定身体を繋ぎ合わせた男が店から出て来た所だった。
───見知らぬ女を連れて。
手を絡め合わせて隣を歩く女と話す男の表情はとても優しい物で、時折照れたように笑う。自分には向けられたことがない表情が別の女に向けられていると思うだけで更なる嫉妬に身が焦がされる様だった。
すぐにでも引き剥がしてやりたい気持ちが沸き出すが其れを押さえつけて女が一人になるまで気づかれぬ様に後を追う。
都内でも人気で高級なマンションの前に着くと、連れだっていた女は男が入口の中へと消えて行く姿を見送り、姿が見えなくなったのか左手に視線を落とす。
その表情は愛しさに満ち溢れている事が見て取れるほど柔らかなもので。
その瞬間、女の歪んだ怒りが衝動のままに行動へと動かした。
鞄から水を取り出しタオルに染み込ませると、歩き出した女へと猛然と走り出す。
振り返り女の顔を見た相手が叫び声を上げようと口を開いた瞬間に鼻口へとタオルを叩きつけ一時的に呼吸器官を塞ぐと、両腕を背中側で縛り上げて明かりの少ない駐車場へと引きずり込む。
タオルを外し、一気に肺へと流れ込む酸素に噎せる女の口に再度濡らして丸めたタオルを押し込めた。
苦しそうに鼻で呼吸をする女の姿に思わず笑いが込み上げてくるが、其れを喉奥で殺しながら鞄から金槌とナイフを取り出した。
「ーっ!!ぅーっ!!」
声は濡れタオルに塞がれて響くことなく虚しく吸音される。恐怖から流れるであろう涙で化粧も溶けぐしゃぐしゃの顔が被虐心を更に煽る。
貴女さえ居なくなれば
貴女さえ現れなければ
貴女サえ消えテくれレば
アンタ サエ 死ンデ クレレバ
衝動のままに金槌とナイフを振り下ろし続けどの位時間が過ぎただろうか、顔の形は既に歪みきりピクリとも動かなくなったのを確認する。
鬼が宿っていたような行動とは裏腹に、己を邪魔するものが無くなった事に安堵してるのか柔かな笑みが浮かんでいた。
ーあ の 人 が 私 を 待 っ て い る 。
早 く 戻 ら な き ゃ 心 配 す る 。
塵が積まれた集積場へ血に濡れた服を脱ぎ捨てて適当な袋へ捩じ込むと、ボトルに残っていた水で血を洗い流して途中で購入した男の好みそうな真新しい服を纏い、部屋へ歩き出した。
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