婚約を破棄された令嬢は舞い降りる❁

第8話 就職しました

「属性を聞いてもいいですか？」
「水です」
　ひとりに付き属性は一つだ。それはどこの国も同じ認識だと聞いている。貴族や王族も同じだ。

　無属性などとキテレツなことは言わない。もう懲りた。

「そうですか。今の所、銀行などの依頼はないですね。掃除婦の仕事がありますよ。一か所のお邸はなくて色々な邸に行ってもらいます。ここの近くの待合馬車で一時間くらいの所に掃除業者宅があります。そちらでしたら、すぐにご紹介できますよ。一時しのぎでもお願いできませんかね。報酬もまあまあいいですよ」
「わかりました」
　水の属性と聞いて掃除くらいは出来るだろうと言う感じかな。銀行など紹介されないことはわかっている。普通は学園卒業時に優秀な人は取り合いになるのだ。私だって一応取り合いになった学生だったのだ。仕方がない。掃除婦をがんばろう。

　明日の朝に商人ギルドの紹介状を持って掃除業者宅に向かう。そこで掃除を依頼された邸を案内され向かうらしい。今日はまた宿を探すことにする。掃除業者宅に近いところにしよう、以外と朝が早い。お金持ちならメイドとかいそうな感じなのに依頼をするんだな。


　朝、業者宅から紹介された邸に向かう。待合馬車で一時間ほどで着いた。ちょっとしたお邸、雰囲気もよく邸の周りもキレイにされている。

「おはようございます。掃除婦です。依頼されてきました」
　しばらくすると、おばさんのようななりのおばさんが庭の方から現れた。
「こっちに来て」
　裏口があったようだ。
「ここは王都の貴族の郊外の屋敷だよ。普段は使っていないからあんまり掃除されていないんだよ。明日から主人が使うと連絡がきてね。キレイにホコリを取って拭き掃除をしとくれ」
　なるほど普段あんまり使っていない邸の依頼なのか。
「わかりました」
　この人は管理人か何かなんだろうか？掃除はしないらしい。

　ルイは一人になり、魔法を使い窓を開ける。そしてホコリを吹き飛ばし外に出す。水滴を散らし風を舞う。床も窓もキレイなり終わった。一部屋づつ見て回り同じことをしていく。部屋が多い分時間はかかるが一時間ほどで終了した。隅々見てもホコリはない。元々散らかっているとか汚れがひどいとかではなく、使っていなかっただけだ。こんな邸ならすぐ終わる。一日の報酬が五万ペントぼろ儲けである。
　しかし早く終わると変なのでしばらく邸内を見学する。色々な絵や骨とう品が無料で見れて役得だ。二時間が過ぎ美術めぐりも飽きてきた。あの管理人に報告に行く。

「ああ、休憩かい？」
「いえ、終わりました。確認をお願いします」
「え？もう終わったのかい？しっかりと確認させてもらうよ？」
「はい、お願いします」

「はぁ～本当にキレイに終わらせているね。早いし大したもんだ。どうやったんだい？」
「秘密です」
「そうだろうね、じゃあ依頼書にサインを書くよ」
「ありがとうございます」
　サインをもらったので帰ろうとしたときに呼び止められた。
「ちょっと待って。せっかくここまで来たんだから他の邸もやって行ってくれないかい？」
「報酬は出るんですか？」
「あ…そうだね…」
「またの依頼をお待ちしています」
　にっこりと笑顔で対応して帰った。

　騙して掃除させようとは思ってはいないだろうが依頼書が無ければ掃除業者からの報酬は出ないだろう。待合馬車でまた一時間揺れながら来た道を戻る。
　
　けっこうこの移動が疲れるな。屋根もないから太陽がジリジリと暑い。焼けてしまう。帽子でも買おうかな。

　掃除業者宅に戻り依頼書を提出する。報酬の五万ペントが住民カードに入金された。
「すいぶん早かったね。あそこの邸はそんなに大変ではないが広いから時間がかかるんだよ。あそこに行く掃除婦は二人で行くことが多いんだ」
　依頼は一人だが二人で行って報酬を半分にしてもいいようだ。
「私は掃除が得意みたいです」
「ふ～ん…明日も今日の時間においでよ。紹介するよ」
「ありがとうございます。では、明日また来ます」
　ずっと掃除婦をするつもりはないが今の所それしか出来ない。無属性だとバレないように気を付けながら掃除婦をやっていこう。
　昨日と同じ業者宅の近くに宿に泊まることにする。

　一日五万とは！十日もすれば五十万だ。わお！