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第15話 意外でした
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ルイは来月と言われたので月初めになり、シラー男爵の所に仕事はあるかと行ってみた。
「ごきげんよう、ルイ。丁度良い所だったよ。シャルトル辺境伯がすぐにでも君に会いたいのだそうだ。明日の予定はあるかね?」
「明日ですか?急ですね。ドレスとかまだ買ってないのですが…」
ルイは結局、半月ほど暇をしていたので、ルイとして目立たないように掃除婦をしていた。
「アハハ!可笑しなことを言うね。まるで貴族のお嬢さんのようだ。ドレスは今来てるようなワンピースでいいと思うよ。まだ貴族ではないのだから。貴族のような振舞をすると不敬罪とみなされることもあるからね、気を付けるんだよ」
そうだった、まだ貴族ではないからドレスなんて必要なかった。シラー男爵が片方の眉毛を上げ、ルイに顔を近づける。
「貴族なのかい?」
「元です」
「やはりか、どこの国のかね?」
「それは言えません」
「逃げて来たのかね?」
「そうです」
「追われている?」
「たぶん」
「なにをやった?」
シラー男爵の目が光る。
「なにも…力があり過ぎて利用されて、それで逃げました」
「なるほど、君は逃げて来たのにまた貴族に戻るのかね?」
「そうですね。もう利用されたくないので貴族になって立ち向かいます」
「君をこの国で守るように働きかけよう、君にその価値は十分にある」
「え?でも…」
「利用はしないが、価値はあるよ。付与師としての大いに価値が君にはある。この国にも利益は出るよ。その為に国を明かしてほしいのだがね」
「わかりました。私の国は…」
ピティナスピリツァ王国、かつて精霊が宿る国と云い伝えられ、その王家はその昔精霊と婚姻をしたとされる王国。魔法はその国から始まったとされる国である。
「…なるほど、由緒正しい魔法大国の姫君だと?」
「いえ、全然。ただの貴族です。王女ではありません」
「では、なぜ逃げている?」
「…さっき説明しましたよ?」
「シラー男爵は由緒正しいと言いましたが、今では普通の王族国家に過ぎません。精霊を祭り上げてもいませんし、田舎の方ではそういう風習も残っているようですが、王都近辺は他の国と大差ありません。なかなか外交をしないのでよく知られていないと思いますが、ただの小国家です」
「君はなかなか内部にも詳しいようだね…」
「第五王子の婚約者でした」
「え?」
「でも私の力を知っていたのは第一王子と第二王子だけでした。その王子たちに食い物にされていたのです」
「さっきから王子たちの名前を言わないのだね、国名もそうだが…」
国名も紙に書いたのだ。そしてすぐに燃やした。
「王族の名は私たち下の者は、口に出してはいけないのです。そして、貴族も下の者に言ってはいけません。口にしたものは精霊に殺されると言われています」
「言い伝えってことかね?」
「そうですね」
「言ったらどうなる?」
「殺されます」
「本当は?」
「知りません」
「本当は」という事は信じていないのだろう。当の本人も信じていない。でも怖いので言わない。
「死んだ人はいるの?」
「二百年前に記録されているだけで最近はありません」
「で、その言い伝えは君は信じているの?」
「でも怖いじゃないですか」
「だから王子たちの名前も知りません。結婚して家族になれば愛称くらいは教えて貰えるらしいのですが…」
「…政治的な匂いがするね」
「攻め込んでも大したものはないですよ。捨てた国ですが一応祖国なので争いを仕掛けるなら私はこの国を出ます」
「争いを仕掛けるといってもどこにあるのかも分からないじゃないか」
「え?」
「君の国は幻の国と呼ばれているのは知らないのかい?」
「は?」
「天空の国と呼ばれていたり、地下の楽園と呼ばれていたりするのだが…」
「知りません…」
「どうやってこの国に?」
「秘密です」
魔法の絨毯でとは言えない
幻の国?あの国が…?別に普通の国だったと思うけど…この国と変わらないような…
そういえば、この国には虹の橋がないわね…橋の上にはいつもオウムのようなキレイな鳥がいてたまに世間話をしたり…雲の階段もないような…え?水龍も見ないなぁ…水の都なのに…?暑い夏になれば水のソファーが気持ちいんだけど…え?え?
え?
「君…ひょっとして天上人なんじゃないの?」
「え?違う、違いますよ。違うと思います。違うと思いたい…」
えーーー?
私って天女なの?うそーーー!
「ごきげんよう、ルイ。丁度良い所だったよ。シャルトル辺境伯がすぐにでも君に会いたいのだそうだ。明日の予定はあるかね?」
「明日ですか?急ですね。ドレスとかまだ買ってないのですが…」
ルイは結局、半月ほど暇をしていたので、ルイとして目立たないように掃除婦をしていた。
「アハハ!可笑しなことを言うね。まるで貴族のお嬢さんのようだ。ドレスは今来てるようなワンピースでいいと思うよ。まだ貴族ではないのだから。貴族のような振舞をすると不敬罪とみなされることもあるからね、気を付けるんだよ」
そうだった、まだ貴族ではないからドレスなんて必要なかった。シラー男爵が片方の眉毛を上げ、ルイに顔を近づける。
「貴族なのかい?」
「元です」
「やはりか、どこの国のかね?」
「それは言えません」
「逃げて来たのかね?」
「そうです」
「追われている?」
「たぶん」
「なにをやった?」
シラー男爵の目が光る。
「なにも…力があり過ぎて利用されて、それで逃げました」
「なるほど、君は逃げて来たのにまた貴族に戻るのかね?」
「そうですね。もう利用されたくないので貴族になって立ち向かいます」
「君をこの国で守るように働きかけよう、君にその価値は十分にある」
「え?でも…」
「利用はしないが、価値はあるよ。付与師としての大いに価値が君にはある。この国にも利益は出るよ。その為に国を明かしてほしいのだがね」
「わかりました。私の国は…」
ピティナスピリツァ王国、かつて精霊が宿る国と云い伝えられ、その王家はその昔精霊と婚姻をしたとされる王国。魔法はその国から始まったとされる国である。
「…なるほど、由緒正しい魔法大国の姫君だと?」
「いえ、全然。ただの貴族です。王女ではありません」
「では、なぜ逃げている?」
「…さっき説明しましたよ?」
「シラー男爵は由緒正しいと言いましたが、今では普通の王族国家に過ぎません。精霊を祭り上げてもいませんし、田舎の方ではそういう風習も残っているようですが、王都近辺は他の国と大差ありません。なかなか外交をしないのでよく知られていないと思いますが、ただの小国家です」
「君はなかなか内部にも詳しいようだね…」
「第五王子の婚約者でした」
「え?」
「でも私の力を知っていたのは第一王子と第二王子だけでした。その王子たちに食い物にされていたのです」
「さっきから王子たちの名前を言わないのだね、国名もそうだが…」
国名も紙に書いたのだ。そしてすぐに燃やした。
「王族の名は私たち下の者は、口に出してはいけないのです。そして、貴族も下の者に言ってはいけません。口にしたものは精霊に殺されると言われています」
「言い伝えってことかね?」
「そうですね」
「言ったらどうなる?」
「殺されます」
「本当は?」
「知りません」
「本当は」という事は信じていないのだろう。当の本人も信じていない。でも怖いので言わない。
「死んだ人はいるの?」
「二百年前に記録されているだけで最近はありません」
「で、その言い伝えは君は信じているの?」
「でも怖いじゃないですか」
「だから王子たちの名前も知りません。結婚して家族になれば愛称くらいは教えて貰えるらしいのですが…」
「…政治的な匂いがするね」
「攻め込んでも大したものはないですよ。捨てた国ですが一応祖国なので争いを仕掛けるなら私はこの国を出ます」
「争いを仕掛けるといってもどこにあるのかも分からないじゃないか」
「え?」
「君の国は幻の国と呼ばれているのは知らないのかい?」
「は?」
「天空の国と呼ばれていたり、地下の楽園と呼ばれていたりするのだが…」
「知りません…」
「どうやってこの国に?」
「秘密です」
魔法の絨毯でとは言えない
幻の国?あの国が…?別に普通の国だったと思うけど…この国と変わらないような…
そういえば、この国には虹の橋がないわね…橋の上にはいつもオウムのようなキレイな鳥がいてたまに世間話をしたり…雲の階段もないような…え?水龍も見ないなぁ…水の都なのに…?暑い夏になれば水のソファーが気持ちいんだけど…え?え?
え?
「君…ひょっとして天上人なんじゃないの?」
「え?違う、違いますよ。違うと思います。違うと思いたい…」
えーーー?
私って天女なの?うそーーー!
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