32 / 84
第32話 散策中です
しおりを挟む
「お薬は自分で作ってるんですか?」
ルイがガツガツと朝食を食べているセロジネに質問をした。セロジネはギロリとルイを見た。
「そりゃそうだろう。誰が作るんだ?」
「さぁ、専属の人がいるのかと思って…」
「医者が薬を作れなくてどーするよぉ。嬢ちゃんは本当に嬢ちゃんなんだな」
どういう意味だ。
「いつも誰かにやってもらってるんだろう。そういうこった。ガガガ」
変な笑い声…ま、確かにいつも誰かにやって貰っていたな。
「ポーションなんてのもあるが、あんなバカ高ぇもんは貧乏人にゃ買えんからな。貧乏人は手作りの安い薬に頼るしかなのさ」
「ポーションっていくらなんですか?」
「そんなんも知らねーのかい。ポーションは一本三十万ペントくらいするだろうよ」
「え、そんなに?高い…」
「だろ!魔法学院を卒業したようなエリートしか作れないからな。数にも限りある。お貴族様にしか渡らないのさ」
ポーションってそんなにするんだ。かの国で熱を出した時なんかは王子たちから腐るほど差し入れされていたけど…そんなにする物だったとは…一本飲んだら治っていたから残りは本当に腐らせていたな…何ということをしていたのだろう。本当に私はお嬢さんなんだな…
まぁ王子たちは私に早く復帰してもらい便利グッズを作らせたかったからなんだろうけど。
「そういえばさぁ、嬢ちゃんは寝込んでいたから知らないだろうけど、今王都で大変な事が起こっているらしいよぉ。なんでも水の化け物が城を襲ったそうでさぁ。王都では大騒ぎだってさ!昨日王都から逃げ帰って来た子がいてねぇ。嘘いいなよって言ったんだけどさぁ、昨日着いたの王都新聞でその事が載ってたんだよぉ。こわいねぇ」
宿屋の女将が教えてくれた。
「え…その新聞見せてもらえる?」
「ああ、いいよ。これだよ」
ルイは新聞を渡され見てみると、手書きの絵が付いていて詳しく詳細が載っていた。近くにいた八百屋の女将や外注の者たちが逃げ帰って大げさに話をしたのだろうか。手書きの絵には城が壊滅している。
『そんなに派手に壊してないからね』
水滴になっているカミノアが耳元で言う。
「ふふ、そうぉ?」
遠くから城を見ただけだが随分と大騒ぎをしていた。派手に暴れたらしい…
「じゃあ、俺は行くから、またなんかあったら言ってくれ。嬢ちゃん支払いよろしくな」
強面の医者はキレイに朝食を食べて出て行った。王都からこのソレイドホークまで馬車で五日ほど掛かる。王都で新聞が刷られたとしてここまで配達されたのが昨日なら、この新聞がこの街での最新の情報だろう。ルイは七日間寝込んでいたのだから、ルイが関係しているとは誰も思うまい。王都新聞は週一に届けられるらしい。
ルイは朝食を終え、宿をひとまず出て街を散策することにした。山と川に挟まれた街で坂道が多い。まだ真冬という時期ではなかったがすでに雪が積もっていて、ものすごく寒かった。しかし王都とは違い建物は木材で造られていてカラフルで可愛くおしゃれである。
この街にしばらく移住してもいいかもしれない。でもすぐにかの国からの追手が来るだろうか…私を感知できる距離ってどのくらいだろう。
『ここまで離れていたら分からないと思うよ。僕もこの距離からだと声は聞こえないし』
「そうなの?」
『それに僕がいるから大丈夫だよ。かの国が近づいてきたらすぐに分かるから』
「本当?じゃあ慌てることないわね。しばらくゆっくりしよう。なんだかずっと緊張していたし…」
『うん、疲労が溜まって熱が引かないってあの医者が言ってたよ』
「そうなんだ。やっぱり腕はいいのね」
ゆっくりと散歩をしながら散策し、お店に入り昼食を食べたり、冬用の物を買い揃えたりして楽しんだ。しかし、病み上がりなのを忘れてお昼過ぎには疲れてしまった。もうあの宿には引き返せなかった。
ルイは仕方ないのであの宿には戻らず、目に付いた近くの宿に泊まる事にした。キレイな外装で赤い家が目に留まった。そこは素泊まり専門のようで部屋には小さなキッチンが付いていた。もう元気だし自炊をしようと思いそこを借りる事にした。一泊四千五百ペントだ。少々高いがキレイなのでよしとする。
朝食用にパンと卵とベーコンに塩だけ買って部屋に戻った。調理器具は大体揃っている。しばらくここを拠点にしようと決めたルイだった。
ルイがガツガツと朝食を食べているセロジネに質問をした。セロジネはギロリとルイを見た。
「そりゃそうだろう。誰が作るんだ?」
「さぁ、専属の人がいるのかと思って…」
「医者が薬を作れなくてどーするよぉ。嬢ちゃんは本当に嬢ちゃんなんだな」
どういう意味だ。
「いつも誰かにやってもらってるんだろう。そういうこった。ガガガ」
変な笑い声…ま、確かにいつも誰かにやって貰っていたな。
「ポーションなんてのもあるが、あんなバカ高ぇもんは貧乏人にゃ買えんからな。貧乏人は手作りの安い薬に頼るしかなのさ」
「ポーションっていくらなんですか?」
「そんなんも知らねーのかい。ポーションは一本三十万ペントくらいするだろうよ」
「え、そんなに?高い…」
「だろ!魔法学院を卒業したようなエリートしか作れないからな。数にも限りある。お貴族様にしか渡らないのさ」
ポーションってそんなにするんだ。かの国で熱を出した時なんかは王子たちから腐るほど差し入れされていたけど…そんなにする物だったとは…一本飲んだら治っていたから残りは本当に腐らせていたな…何ということをしていたのだろう。本当に私はお嬢さんなんだな…
まぁ王子たちは私に早く復帰してもらい便利グッズを作らせたかったからなんだろうけど。
「そういえばさぁ、嬢ちゃんは寝込んでいたから知らないだろうけど、今王都で大変な事が起こっているらしいよぉ。なんでも水の化け物が城を襲ったそうでさぁ。王都では大騒ぎだってさ!昨日王都から逃げ帰って来た子がいてねぇ。嘘いいなよって言ったんだけどさぁ、昨日着いたの王都新聞でその事が載ってたんだよぉ。こわいねぇ」
宿屋の女将が教えてくれた。
「え…その新聞見せてもらえる?」
「ああ、いいよ。これだよ」
ルイは新聞を渡され見てみると、手書きの絵が付いていて詳しく詳細が載っていた。近くにいた八百屋の女将や外注の者たちが逃げ帰って大げさに話をしたのだろうか。手書きの絵には城が壊滅している。
『そんなに派手に壊してないからね』
水滴になっているカミノアが耳元で言う。
「ふふ、そうぉ?」
遠くから城を見ただけだが随分と大騒ぎをしていた。派手に暴れたらしい…
「じゃあ、俺は行くから、またなんかあったら言ってくれ。嬢ちゃん支払いよろしくな」
強面の医者はキレイに朝食を食べて出て行った。王都からこのソレイドホークまで馬車で五日ほど掛かる。王都で新聞が刷られたとしてここまで配達されたのが昨日なら、この新聞がこの街での最新の情報だろう。ルイは七日間寝込んでいたのだから、ルイが関係しているとは誰も思うまい。王都新聞は週一に届けられるらしい。
ルイは朝食を終え、宿をひとまず出て街を散策することにした。山と川に挟まれた街で坂道が多い。まだ真冬という時期ではなかったがすでに雪が積もっていて、ものすごく寒かった。しかし王都とは違い建物は木材で造られていてカラフルで可愛くおしゃれである。
この街にしばらく移住してもいいかもしれない。でもすぐにかの国からの追手が来るだろうか…私を感知できる距離ってどのくらいだろう。
『ここまで離れていたら分からないと思うよ。僕もこの距離からだと声は聞こえないし』
「そうなの?」
『それに僕がいるから大丈夫だよ。かの国が近づいてきたらすぐに分かるから』
「本当?じゃあ慌てることないわね。しばらくゆっくりしよう。なんだかずっと緊張していたし…」
『うん、疲労が溜まって熱が引かないってあの医者が言ってたよ』
「そうなんだ。やっぱり腕はいいのね」
ゆっくりと散歩をしながら散策し、お店に入り昼食を食べたり、冬用の物を買い揃えたりして楽しんだ。しかし、病み上がりなのを忘れてお昼過ぎには疲れてしまった。もうあの宿には引き返せなかった。
ルイは仕方ないのであの宿には戻らず、目に付いた近くの宿に泊まる事にした。キレイな外装で赤い家が目に留まった。そこは素泊まり専門のようで部屋には小さなキッチンが付いていた。もう元気だし自炊をしようと思いそこを借りる事にした。一泊四千五百ペントだ。少々高いがキレイなのでよしとする。
朝食用にパンと卵とベーコンに塩だけ買って部屋に戻った。調理器具は大体揃っている。しばらくここを拠点にしようと決めたルイだった。
61
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる