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第70話 なんとかなりました
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ルイの魔力が手から目に見えて伸び、ユリトスを掴んだ。そしてユリトスはそのままルイに引っ張られる。
「くっ!!な、なんでこ、これが、、」
ルイは自身の魔力で作った強化ガラス越しから魔力を伸ばし、ユリトスを吸い寄せた。ユリトスの腕を取ろうと腕を伸ばした瞬間、ユリトスからまた水滴の玉が飛び出し、ルイ目掛けて飛んで来た。
「しっねーーーぇ!!」
しかし、ルイが腕を取る方が早くユリトスは小瓶に収まった。ルイは腕に傷を負ったがかすり傷程度だった。
『ルイ、大丈夫?!』
「ええ、少しケガしちゃっただけよ」
ルイは安堵からへたり込んでしまった。そして小瓶を見る。透明な小瓶はどす黒いあまり見たくないような色に変色していた。
『杯よ、ビアンカよ。その身体から離れなさい』
誰もいなくなった地下室にモダルナの声が響く。
『あんたは元はただの杯だったじゃない、どうしてそんな所で人の身体の中で生きようとしているの?』
杯から炎がチョロチョロと顔を出した。小さな炎だ。姿を現したその炎は少し人の形をしている。そして目が開き、口が三日月のように開いた。
『モナルダじゃあないか、どこにいっていた?』
『それはこっちのセリフよ、ビアンカ。あんた勝手にどこに行っていたのよ』
『知らない、気が付いたらここにいた。ずいぶん昔だ。昔…モナルダと楽しく過ごしていたな。たまにどこからか人間が虹の橋を渡って火を貰いに来ていた』
『そうね…』
小さな炎はモナルダと思い出話を始めた。
『人間は火を貰うと喜んだ。そして果物や葉をくれてモナルダと一緒に食べた』
『あんたは燃やしていただけだけどね』
『でも人間は来なくなった…』
『そうね、自分たちで火を起こす知恵が付いたのよね』
『ずっとモナルダと一緒だった』
『ええ、長くね』
『モナルダが寝てる時…虹の橋ではなくどこからか人間が来た、そして持っていかれた』
『…』
『そして私は杯の中でしか生きられないから、その人間が色々な所を連れて行ってくれる事に喜んだ。でも人間は私を小さな火が灯している普通の杯だと思っていた。私の杯に水を入れた。私の杯に水を入れるなんて、私はなくなってしまうって、そしたら大きくなった。大きくなって人を飲み込んだ。そしたらなんか元気になった、そんな感覚は初めてだった』
『人間を飲み込んだら魔力が倍増したってこと?』
『知らない。でも元気になって強くなった。水を入れた人間はずっと誰かの名前を何度も呼んでいた』
「名前?」
ルイは名前に反応した。
『その国の王の名前を呼んでいたみたい』
近くに王がいたという事か
『だから私もマネをして何度も王の名前を呼んだ。おもしろかった』
杯から名前を呼ばれるなんてその時の王様はさぞ恐怖だっただろうな…
『私はビアンカ』
杯の炎は唐突に、自己紹介をした。
『知ってるわ』
『同じ名前の子が私の杯を見てキレイだと言ったの。誰からビアンカと呼ばれていた。私と同じ名前の子、王の子供だった』
『その子は私を部屋に飾ったの、王は恐怖で部屋から出て来なくなった』
王は自分の名を呼ぶ杯を不気味だと思い廃棄するようにした、でも王の娘がなぜか持ち帰ってしまったといった所か…
『王の娘はみんなからビアンカと呼ばれていた、私と同じ名前、嬉しくて私もビアンカと呼んだ』
『そしたらビアンカが騒いだ。大きな声を出すので私はうるさいと思った。その子の口を塞いだの、そしたらスポンって私が王の娘の体に吸い込まれたの』
『狭くて真っ黒な場所で私は気が付いた。こわくなって魔力を放出した。そしたら身体が熱くなって叫びたくなった、そしたら島が浮いていた』
体に吸い込まれた、それであのビアンカ像が出来たのね。王は吸収されて消えてしまったのに…そういえばすごい地震が発生していたと本に載っていた。その時の地震はこのビアンカの魔力放出が原因なのか、すごいパワーだ。
『気が付いたら私とその王の娘と一緒になっていた』
淡々と過去にあった事をビアンカは話した。
『あなたのパワーは元々すごかったからそれが人間と交わった事で倍増になったのかしら?よくわからないけど国ごと浮いてしまうほどになっていた』
モナルダがそういう事かと納得をしている。
『王の娘のビアンカとは魔力が合って、すごく強くなった。だから萎えてくると自然と次に合う人間が出て来た。それを指名した。そしたら人間がその時が来たら連れてくるようになった』
『…』
『次はその子?』
ビアンカはルイを見る。
『この子はダメよ』
『最近パワーをよく使う、もうパワーが抜ける、その子をちょうだい』
『ダメよ』
『なぜ?』
ビアンカが少し首を傾げる。
『もう人を食らうのをやめなさい、これからは私とまた地上で暮らしましょう。あなたは元々すごいパワーがあるのよ。人間は必要ないの』
『またモナルダは一緒に居てくれる?』
『いるわ、あなたをほったらかしにしてゴメンナサイ、私がビアンカを守れなかったせいね』
『…』
『この島を砂漠のどこかへゆっくりと降ろせる?』
『もう人間はダメ?』
『ダメよ。地上に人間より美味しい物があるかもしれないわ、一緒に捜しましょう』
『…モナルダが言うなら仕方ない、地上に降ろす…』
モナルダに言われルイは地下から離れた。
『あなたがいたら食べたくなるかも…ルイは橋を渡って、砂漠で待ってて』
「モナルダ、あなたももう私の家族よ、戻って来てね」
『ありがとう、ルイ。ルイの言う通りだった』
「え?」
『ビアンカを捜せばよかったのよね、そうすれば…』
「モナルダはなにも悪くないから」
『ビアンカも家族にしてくれる?』
「もちろんよ、私を食べなければね」
『私がさせないわ』
『僕も家族?』
黒猫に戻ったカミノアがルイの足元に軽く頭突きをする。
「ふふ、もちろんよ」
『ルイ、ムーンも家族にしてくれるかのぉ』
ムーンは蛇だった…
「た、たぶん、大丈夫よ」
「くっ!!な、なんでこ、これが、、」
ルイは自身の魔力で作った強化ガラス越しから魔力を伸ばし、ユリトスを吸い寄せた。ユリトスの腕を取ろうと腕を伸ばした瞬間、ユリトスからまた水滴の玉が飛び出し、ルイ目掛けて飛んで来た。
「しっねーーーぇ!!」
しかし、ルイが腕を取る方が早くユリトスは小瓶に収まった。ルイは腕に傷を負ったがかすり傷程度だった。
『ルイ、大丈夫?!』
「ええ、少しケガしちゃっただけよ」
ルイは安堵からへたり込んでしまった。そして小瓶を見る。透明な小瓶はどす黒いあまり見たくないような色に変色していた。
『杯よ、ビアンカよ。その身体から離れなさい』
誰もいなくなった地下室にモダルナの声が響く。
『あんたは元はただの杯だったじゃない、どうしてそんな所で人の身体の中で生きようとしているの?』
杯から炎がチョロチョロと顔を出した。小さな炎だ。姿を現したその炎は少し人の形をしている。そして目が開き、口が三日月のように開いた。
『モナルダじゃあないか、どこにいっていた?』
『それはこっちのセリフよ、ビアンカ。あんた勝手にどこに行っていたのよ』
『知らない、気が付いたらここにいた。ずいぶん昔だ。昔…モナルダと楽しく過ごしていたな。たまにどこからか人間が虹の橋を渡って火を貰いに来ていた』
『そうね…』
小さな炎はモナルダと思い出話を始めた。
『人間は火を貰うと喜んだ。そして果物や葉をくれてモナルダと一緒に食べた』
『あんたは燃やしていただけだけどね』
『でも人間は来なくなった…』
『そうね、自分たちで火を起こす知恵が付いたのよね』
『ずっとモナルダと一緒だった』
『ええ、長くね』
『モナルダが寝てる時…虹の橋ではなくどこからか人間が来た、そして持っていかれた』
『…』
『そして私は杯の中でしか生きられないから、その人間が色々な所を連れて行ってくれる事に喜んだ。でも人間は私を小さな火が灯している普通の杯だと思っていた。私の杯に水を入れた。私の杯に水を入れるなんて、私はなくなってしまうって、そしたら大きくなった。大きくなって人を飲み込んだ。そしたらなんか元気になった、そんな感覚は初めてだった』
『人間を飲み込んだら魔力が倍増したってこと?』
『知らない。でも元気になって強くなった。水を入れた人間はずっと誰かの名前を何度も呼んでいた』
「名前?」
ルイは名前に反応した。
『その国の王の名前を呼んでいたみたい』
近くに王がいたという事か
『だから私もマネをして何度も王の名前を呼んだ。おもしろかった』
杯から名前を呼ばれるなんてその時の王様はさぞ恐怖だっただろうな…
『私はビアンカ』
杯の炎は唐突に、自己紹介をした。
『知ってるわ』
『同じ名前の子が私の杯を見てキレイだと言ったの。誰からビアンカと呼ばれていた。私と同じ名前の子、王の子供だった』
『その子は私を部屋に飾ったの、王は恐怖で部屋から出て来なくなった』
王は自分の名を呼ぶ杯を不気味だと思い廃棄するようにした、でも王の娘がなぜか持ち帰ってしまったといった所か…
『王の娘はみんなからビアンカと呼ばれていた、私と同じ名前、嬉しくて私もビアンカと呼んだ』
『そしたらビアンカが騒いだ。大きな声を出すので私はうるさいと思った。その子の口を塞いだの、そしたらスポンって私が王の娘の体に吸い込まれたの』
『狭くて真っ黒な場所で私は気が付いた。こわくなって魔力を放出した。そしたら身体が熱くなって叫びたくなった、そしたら島が浮いていた』
体に吸い込まれた、それであのビアンカ像が出来たのね。王は吸収されて消えてしまったのに…そういえばすごい地震が発生していたと本に載っていた。その時の地震はこのビアンカの魔力放出が原因なのか、すごいパワーだ。
『気が付いたら私とその王の娘と一緒になっていた』
淡々と過去にあった事をビアンカは話した。
『あなたのパワーは元々すごかったからそれが人間と交わった事で倍増になったのかしら?よくわからないけど国ごと浮いてしまうほどになっていた』
モナルダがそういう事かと納得をしている。
『王の娘のビアンカとは魔力が合って、すごく強くなった。だから萎えてくると自然と次に合う人間が出て来た。それを指名した。そしたら人間がその時が来たら連れてくるようになった』
『…』
『次はその子?』
ビアンカはルイを見る。
『この子はダメよ』
『最近パワーをよく使う、もうパワーが抜ける、その子をちょうだい』
『ダメよ』
『なぜ?』
ビアンカが少し首を傾げる。
『もう人を食らうのをやめなさい、これからは私とまた地上で暮らしましょう。あなたは元々すごいパワーがあるのよ。人間は必要ないの』
『またモナルダは一緒に居てくれる?』
『いるわ、あなたをほったらかしにしてゴメンナサイ、私がビアンカを守れなかったせいね』
『…』
『この島を砂漠のどこかへゆっくりと降ろせる?』
『もう人間はダメ?』
『ダメよ。地上に人間より美味しい物があるかもしれないわ、一緒に捜しましょう』
『…モナルダが言うなら仕方ない、地上に降ろす…』
モナルダに言われルイは地下から離れた。
『あなたがいたら食べたくなるかも…ルイは橋を渡って、砂漠で待ってて』
「モナルダ、あなたももう私の家族よ、戻って来てね」
『ありがとう、ルイ。ルイの言う通りだった』
「え?」
『ビアンカを捜せばよかったのよね、そうすれば…』
「モナルダはなにも悪くないから」
『ビアンカも家族にしてくれる?』
「もちろんよ、私を食べなければね」
『私がさせないわ』
『僕も家族?』
黒猫に戻ったカミノアがルイの足元に軽く頭突きをする。
「ふふ、もちろんよ」
『ルイ、ムーンも家族にしてくれるかのぉ』
ムーンは蛇だった…
「た、たぶん、大丈夫よ」
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