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第73話 **ロロイカのターン**

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「やあ、ビアンカ。元気そうだね」
「こんにちは、ロロイカ」
 ロロイカはノーズレスクにある城の一室に住まわせて貰っていた。放心状態も数日で元に戻り、今では話が出来るまで回復している。

「ロロイカ…か、自分の名前なのにあまり馴染みがないんだよね」
「精霊から殺されますものね」
「はは、そうそう。あれは結局何だったんだろうね」
「精霊の件はやっぱりただの言い伝えに過ぎなかったって事でしょうね」

 ルイは杯から名を呼ばれた者は気味悪がって気が触れたり、死んでいく中で「上位の者は下位の者から名を呼ばれると精霊に殺される」と長い歴史の中で間違った解釈がなされたのではないかと推測する。

「体調はどうですか?」
「ああ、もう平気だよ。地下ではなにがあったの?僕は地下に行ってからの事をあまり覚えていないんだ。気が付いたらノーズレスクいたって感じだよ」
 ロロイカは自分の父を追い詰めて死なせてしまったという記憶を消しているようだ。それがロロイカの為ならばそのままの方がいいだろう。

「あそこでの件はもう忘れてください。ロロイカには責任はないとなりましたし」

 ロロイカは一部の記憶がない事に申し訳ないような、情けないような表情を見せた。

「父上も兄上もまだ行方不明なの?」
「そのようです」
「兄上はどこかで生きていると思うけど…捜さなくて大丈夫かな…仕返しに来ない?」
「それは大丈夫です。捨てましたから」
「え?」
「内緒です」
「こわい…君に逆らったらこわいね。…君を利用して悪かった。僕は父や兄上の言いなりだったんだね」
「王族なんてそんなもんでしょう。国を守るためにそうするしかなかった…という歪んた正義なのでしょう」
「面倒だからやり方を変えなかったって事だよね。自分が苦しむ訳じゃないからね」
「…」

「王妃とユリトスの奥様たちは奥様の実家にいます。こちらで引き取る事はしません。ロロイカの奥様もご実家です。どうしますか?」
「僕が世話になるわけにはいかないよ。母は僕が引き取るよ。クラルテはどうしている?」
「誰ですか?」
「第四王子だよ」
「ああ、そうでした。タールタクト(仮)に渡ってから会っていません」
 なぜか名を忘れたフリをするルイ

「僕もタールタクト(仮)に行こうと思うのだが…」
「タールタクト(仮)に渡れば平民ですよ。みんなと一緒に一から働いてもらいます。もう楽は出来ません」
「もちろん覚悟はしている。内部会計や資産の出し方は勉強している。兄上の補佐をずっとしていたからね。クラルテが中心になるのかな?補佐をするよ。僕は補佐ならうまくやれると思うんだ。あ、でも泥にまみれて農業をやれと言われればもちろんそうするよ」

「適材適所という言葉がありますし、好きにしてください。しばらくはただ働きですけど、私も神獣たちの様子が気になりますから落ち着いたらそちらに行きます」

「ただ働きはもちろん覚悟をしている。マピオンは?ああ、第五王子だけど、あいつはまた違ったバカだから…君に迷惑を掛けないかな?そん時は僕に言ってくれ」

「ありがとうございます。マピオンは城の元メイドの奥様の実家でしごかれていると聞いています。その内逃げ出すかもしれません。助けが必要な時はご連絡します」


 ルイはそれから数日ほど、かの国の残骸処理で残った。ノーズレスクやサウーザへのお礼として、覚えているレシピの写し、水の粉などを渡した。

 城の残骸から高価な美術品やお金も発見されたが、サウーザが引き取りタールタクト(仮)や砂漠の資金源にすると言っている。どこまで本気か分からないが、落ちて来たのはサウーザの門外とは言えサウーザの敷地内なのだ。没収されても仕方がないののかもしれない。
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