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第82話 **望んだ生活**
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虹の橋を渡った先には身に覚えのある女性がいた。水色のキレイな髪に瞳は蒼い色をしていた。夫譲りの髪の色と祖母譲りの黒い瞳ではなかった。金に困って娼婦館に売りつけようとした娘だった。娘は母である私を気に掛ける素振りも見せなかった。
娘のビアンカより九歳下の息子は私の手を振りほどき、自分の姉に飛びついた。息子には姉とはもう会えないのだと告げていた。
**
城では着々と脱出計画が進行中であった。私が仕えていた第一王子の第一夫人はとりあえず国帰る言う。
「ぜひ、わたくしもご一緒に!」
「ヒスイ、ごめんさない。それはムリよ」
「まあ、それはなぜです。わたくしは第一王子様と第二王子様をご立派に…」
「私の息子にはちゃんとした名前があるの。第一とか第二とか呼ばないでそれから私の事も第一夫人って呼ばれて…もううんざり」
「申し訳ございません。決まりでしたもので…」
「ええ、あなたのせいではないけれど、変な国だったわ。申し訳ないけどそんな常識の人を我が国に迎えるわけには行かないの。それに国に帰れば私も今の立場ではいられないでしょう。あなたの面倒を見る事は出来ないわ」
「それは…」
第一王子の第一夫人は離縁はしないものの国に帰り、夫と今後の事を話し合うという。今は国を存続する事で話が通じないであろうからと、計画自体を秘密にしてほしいと言われている。第一夫人はもう夫とは会えないかもしれないと腹をくくっている。
元夫はというと、もう家名も捨て行方不明になっていた。早く今後の生活を確保しなければ私の不安が息子に遺伝してしまうかもしれない。
「母上、大丈夫ですよ。姉上がいます。また姉上と一緒に暮らしましょう。僕、姉上の所に行ってきます」
「え?ちょっと待ちなさい。今はとても忙しそうにしていたわ。もう少ししてからの方がいいのではないかしら」
「ん~」
リーフレッドは私のいう事を聞かず、ビアンカの所に行ったようだ。
「姉上、おはようございます。母上からご迷惑だからだと今は遠慮しなさいって言われたけどまた会えなくなるかもしれないと思って黙って来ちゃった」
「リーフ!さっきはごめんね。でも元気そうで本当によかったわ。でもあなたも昨日は寝てないのだから眠いでしょう?」
「僕は平気ですが、姉上はお疲れのようですね。母上の言う通りでした。出直します」
「まあ、少しくらいはいいわよ。久しぶりなんだし」
「はい、姉上は今までどうしていたのですか?」
「旅をしていたの、楽しかったわ」
「母上は姉上がお金を持ち逃げをして僕が継ぐはずだった家が潰れたと言っていました。でも姉上は色々僕に魔法を教えてくれていましたから、そんなはずはないと思っていました」
「…お金を持ち逃げなんてしてないわ、元々なかったのよ」
「やはりそうですか」
「姉上はこれからどうするのですか?」
「しばらくは荒れ地で街を支える事になるわね」
「僕も頑張ります」
「嬉しいけど、あなたはお母様の所にいなさい。まだ未成年なんだから」
「…ダメですか?」
「お母様がどうするかは分からないけど平民暮らしは出来そうにないわね」
野営をしている所にリーフレッドが戻って来た。よかった、戻って来てくれた。リーフレッドまで私を捨てるなんて事になったらは私は生きてはいけない。
「どこに行ってたの?」
「ちょっと散歩です」
「色々伝手を頼っていたら、ノーズレクスの城で働いている従妹を捕まえたの。城の仕事をさせてもえるかもしれないわ」
「僕…姉上とご一緒してはダメですか?」
「あなたのような子供が一緒にいても迷惑なだけよ。それともあなたも私を捨てるの?」
「…」
私は仕事について話を聞くために城に訪れた。
「お初にお目にかかります。わたくし、ヒスイと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ああ、あなたの事は聞いているよ。天空の城の住人だったのだって?そこで王家の教育係りをしていたそうだね。あなたのような人を捜していたのだよ。よく来てくれた」
「まあ、そんな、、ほほっ」
「あなたもこの城で働いて貰うからにはどこかで養子縁組をして貴族として仕事をして貰うからね」
「まあ、ありがとうございます」
「いやいや、これから頑張ってほしい」
「もちろんですわ、それでどこの御子息様ですか。お嬢様?」
「いや、我が国の王妃になる人物だよ。しっかり頼むよ」
「え?王妃様ですか?まあわたくし、王妃教育なんて出来るかしら…」
「いや、王妃教育ではなく、貴族としても教育だ。先日、祖国から戻って来たのだけどまだまだ十歳程度の教育しか出来なかったようなのだ。それでこれからは十代の女性が必要な教育を頼むよ」
「はあ、、まあ…それは、、お、おいくつのお嬢様ですか?」
「今年で…二十二歳かな。私の妻のローズだ。我が儘娘で祖国でも手を焼いていたようだよ。でもそこがカワイイのだけどね」
「え?二十二?妻?、、では、あなた様は…」
「でもねぇ今まで世話をしていてくれた従妹殿も逃げ出してしまって困っていたのだ」
「え、逃げ出した?…」
「しかし、あなたも自分の手で将来の王妃が育つと思うと感無量でしょう。ではしっかり頼むよ」
「は、え、、」
王太子は淡々と話を進める。王太子からの直々の申し出にヒスイは断れる状況ではない事を知る。しかも二十二歳の女性が貴族としての嗜みも満足に出来ないとし、しかも将来の王妃様であるという。
これから先の人生はヒスイが望んだ貴族としての生活を手に入れた。ローズの世話係りとして。自由のない、我が儘な姫の相手をさせられる人生である。
娘のビアンカより九歳下の息子は私の手を振りほどき、自分の姉に飛びついた。息子には姉とはもう会えないのだと告げていた。
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城では着々と脱出計画が進行中であった。私が仕えていた第一王子の第一夫人はとりあえず国帰る言う。
「ぜひ、わたくしもご一緒に!」
「ヒスイ、ごめんさない。それはムリよ」
「まあ、それはなぜです。わたくしは第一王子様と第二王子様をご立派に…」
「私の息子にはちゃんとした名前があるの。第一とか第二とか呼ばないでそれから私の事も第一夫人って呼ばれて…もううんざり」
「申し訳ございません。決まりでしたもので…」
「ええ、あなたのせいではないけれど、変な国だったわ。申し訳ないけどそんな常識の人を我が国に迎えるわけには行かないの。それに国に帰れば私も今の立場ではいられないでしょう。あなたの面倒を見る事は出来ないわ」
「それは…」
第一王子の第一夫人は離縁はしないものの国に帰り、夫と今後の事を話し合うという。今は国を存続する事で話が通じないであろうからと、計画自体を秘密にしてほしいと言われている。第一夫人はもう夫とは会えないかもしれないと腹をくくっている。
元夫はというと、もう家名も捨て行方不明になっていた。早く今後の生活を確保しなければ私の不安が息子に遺伝してしまうかもしれない。
「母上、大丈夫ですよ。姉上がいます。また姉上と一緒に暮らしましょう。僕、姉上の所に行ってきます」
「え?ちょっと待ちなさい。今はとても忙しそうにしていたわ。もう少ししてからの方がいいのではないかしら」
「ん~」
リーフレッドは私のいう事を聞かず、ビアンカの所に行ったようだ。
「姉上、おはようございます。母上からご迷惑だからだと今は遠慮しなさいって言われたけどまた会えなくなるかもしれないと思って黙って来ちゃった」
「リーフ!さっきはごめんね。でも元気そうで本当によかったわ。でもあなたも昨日は寝てないのだから眠いでしょう?」
「僕は平気ですが、姉上はお疲れのようですね。母上の言う通りでした。出直します」
「まあ、少しくらいはいいわよ。久しぶりなんだし」
「はい、姉上は今までどうしていたのですか?」
「旅をしていたの、楽しかったわ」
「母上は姉上がお金を持ち逃げをして僕が継ぐはずだった家が潰れたと言っていました。でも姉上は色々僕に魔法を教えてくれていましたから、そんなはずはないと思っていました」
「…お金を持ち逃げなんてしてないわ、元々なかったのよ」
「やはりそうですか」
「姉上はこれからどうするのですか?」
「しばらくは荒れ地で街を支える事になるわね」
「僕も頑張ります」
「嬉しいけど、あなたはお母様の所にいなさい。まだ未成年なんだから」
「…ダメですか?」
「お母様がどうするかは分からないけど平民暮らしは出来そうにないわね」
野営をしている所にリーフレッドが戻って来た。よかった、戻って来てくれた。リーフレッドまで私を捨てるなんて事になったらは私は生きてはいけない。
「どこに行ってたの?」
「ちょっと散歩です」
「色々伝手を頼っていたら、ノーズレクスの城で働いている従妹を捕まえたの。城の仕事をさせてもえるかもしれないわ」
「僕…姉上とご一緒してはダメですか?」
「あなたのような子供が一緒にいても迷惑なだけよ。それともあなたも私を捨てるの?」
「…」
私は仕事について話を聞くために城に訪れた。
「お初にお目にかかります。わたくし、ヒスイと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ああ、あなたの事は聞いているよ。天空の城の住人だったのだって?そこで王家の教育係りをしていたそうだね。あなたのような人を捜していたのだよ。よく来てくれた」
「まあ、そんな、、ほほっ」
「あなたもこの城で働いて貰うからにはどこかで養子縁組をして貴族として仕事をして貰うからね」
「まあ、ありがとうございます」
「いやいや、これから頑張ってほしい」
「もちろんですわ、それでどこの御子息様ですか。お嬢様?」
「いや、我が国の王妃になる人物だよ。しっかり頼むよ」
「え?王妃様ですか?まあわたくし、王妃教育なんて出来るかしら…」
「いや、王妃教育ではなく、貴族としても教育だ。先日、祖国から戻って来たのだけどまだまだ十歳程度の教育しか出来なかったようなのだ。それでこれからは十代の女性が必要な教育を頼むよ」
「はあ、、まあ…それは、、お、おいくつのお嬢様ですか?」
「今年で…二十二歳かな。私の妻のローズだ。我が儘娘で祖国でも手を焼いていたようだよ。でもそこがカワイイのだけどね」
「え?二十二?妻?、、では、あなた様は…」
「でもねぇ今まで世話をしていてくれた従妹殿も逃げ出してしまって困っていたのだ」
「え、逃げ出した?…」
「しかし、あなたも自分の手で将来の王妃が育つと思うと感無量でしょう。ではしっかり頼むよ」
「は、え、、」
王太子は淡々と話を進める。王太子からの直々の申し出にヒスイは断れる状況ではない事を知る。しかも二十二歳の女性が貴族としての嗜みも満足に出来ないとし、しかも将来の王妃様であるという。
これから先の人生はヒスイが望んだ貴族としての生活を手に入れた。ローズの世話係りとして。自由のない、我が儘な姫の相手をさせられる人生である。
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