もふってちーと!!

でんちむ

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もふって新人生!

◆もふって異世界!

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「おおぉぉ!!!」

 教室で女子生徒と向かい合わせになって叫んでいる男子生徒がいた。
 彼の名前は上河 舞かみかわ まい。見た目も頭の良さも運動神経も普通の高校生。趣味も至って普通。…自称だが。
 向かいの子は木津 千明きづ ちあき。俺っ娘。頭脳明晰で、愛想が良く、可愛いが、ドジっ子。もちろん運動なんてできやしない。だが、学校では最も人気のある女子生徒で、ぶっちゃけてしまえば、この場に一緒に舞がいる事が場違いの様に思えてくるほど可愛いのだ。
 では、そんな千明が、舞と一緒に話していることとはなんだろう。

「すっげぇ!この毛並みマジで半端無いって!」

「でしょー?すっごい格好いいでしょー?」

「おう!!これはヤバイぜ…!!」

「舞ならそういうと思った!!!ほら、これも格好いいでしょ?家のーー







ーー黒猫」


 そう、可愛らしい動物の話である。これが、二人が一緒に居る理由の全貌ではない。まぁ、お察しの通り舞と千明は、幼少の頃からの付き合い。詰まるところは幼馴染だ。だから一緒に居る。それだけだった。

「…ん?もうこんな時間だ!そろそろ帰らなきゃ不味い…家、門限には厳しいからなぁ……」

「あー、そーだな。千明の家の門限って確か七時、だったっけか?」

「せーかい!じゃあ、俺は帰るよっ!舞も気を付けてっ!」

「おう、じゃーなー!襲われんなよー!」

 二人はそれぞれの速さで教室を後にする。足音を立てながら廊下を歩いて行く。ふと、外を見るとグラウンドには運動部が片付けをしていて、校舎よりの道には千明が走っている。

「…今日は妹の誕生日だし、俺も少し急いで帰るか」

 本日は舞の妹、上河 涼華かみかわ りょうかの誕生日だ。涼華は、普通の兄を持ちながらも容姿端麗に生まれ、中学校では人気者らしい。

「ん、誕生日プレゼントも買ってかないとな…確か、花のストラップだか、ブローチだかが欲しいっつってたな。…金あるかな…」

 妹を祝うためにプレゼントを選ぼうと街まで向かうと、とても良い雰囲気を醸し出すアンティークショップを見つけた。そこには、お目当ての花のブローチがずらりと並んでいた。

「どれがいいかわからないな…直接涼華に選ばせるか。そうしよう」

 こうして、家まで大急ぎで帰った舞は妹に「お兄ちゃん、遅い!」と、どやされながらも幸せそうな顔をしていた。

(妹の誕生日だけど、俺も願っていいかな?……願わくば、この幸せな、笑顔溢れる日々が続きますように)



*       翌日       *

 早朝。小鳥のさえずりによって目を覚ますというなんともロマンチックな朝を迎えた舞は、大きく欠伸をしながら、寝癖だらけでボサボサな頭をぐしぐしと掻く。

「…あぁ、今日は出掛けるんだったな」

 そう呟いて時計を流し見る。ほっとため息をつく。どこぞのラノべのテンプレのような寝坊はしなかったようだ。まだ2時間程、余裕がある。

「とりあえず、着替えて、飯食って歯磨きして、んで荷物確認するだけだから…そこまで時間は要らないから大丈夫だな」

 まだ怠さの残る体を引き摺ってクローゼットと正対する。どれを着ようかと迷っているうちにどうやら30分ほど経ってしまっていたようだ。
 ようやく服を選び終え、着替えると階段を駆け下りて朝食を貪り始める。

「いただきます」

 食材への感謝の言葉を述べてから僅か3分。それまで並んでいた焼き鮭、味噌汁、お新香、玉子焼き、御飯は消え去っていた。

「ごちそうさまでした…んで、歯磨きして
、財布とか持って終わりかな……」

 朝食が終わった舞はサッと歯磨きを済ませて、荷物の確認に移る。
 それも直ぐに終わり、予定までの約1時間、リビングでスマホをいじる。

「…可愛い。もふもふしたい。あー、この毛並みが最高。……ん?なにこれ!?この艶々なボディ!かっこいい!ぎゅーってしたいわぁ!!」

 彼のスマホの検索履歴には【猫 可愛い 最高 癒し 格好いい】などのワードが勢揃いだった。
 ずっと独り言を呟いていたら何時の間にか出発の時間になってしまったようだ。舞は自分のスマホをジーンズのポケットに仕舞い、外に出る。外では、妹の涼華と今日は会う予定のなかった幼馴染の千明が待っていた。

「…あれ?千明?なんで?」

「いや、ちょっと散歩に行こうかなってとこで涼華ちゃんにあって、今からお出掛けらしいから着いてくことにした!」

「ふーん、そうなのか?涼華」

「うん、私が一緒に行きませんか?って誘ったの」

「そうか、ならいいか。じゃあ行くぞ」

「「はーい」」

 家を出てから、その店に着くまでの間、涼華と千明はずっとにゃんごろにゃんごろしていた。

「おい、ついたぞ」

 店内は思っていたよりも豪華な装飾が多いが、それでも尚ゆったりとした雰囲気は崩されないようになっている。なんとも不思議な店だ。

「へぇー、いい雰囲気のお店。お兄ちゃんにしてはなかなかだね」

「うわー、きれいだなー……あっ!ねこっ!」

「なにっ!?それはどこだ!!」

 店の隅の方に猫が彫られているブレスレットを見つけた千明は一目散に走っていき、それを舞が追いかける。


「今日って、私の誕生日プレゼントがメインじゃ…」

「悪い!なんでも買ってやるから選んどけ!」

 むぅ、と不貞腐れる涼華。しかし、生まれてきた時からの長い付き合いだからか、すでに商品は手に取ってあった。
 商品を片手に涼華は消えていった兄と兄の幼馴染を探し始めた。

 結果的に、涼華は紫陽花と月下美人のブローチ、舞の猫が彫られたブレスレットを購入した。もちろん全額舞負担である。

「さて、帰るかー」

 三人で店を出て住宅街に入っていく。他愛もない話をしながら、三人はその角を曲がる。

ー刹那、眩い光が辺りを包んだ。

「うおっ!まぶしっ!!」

「きゃっ!」

「ひゃっ!?」





 ……始めに目を覚ましたのは舞だった。

「…どこだ…ここ…?あれ?涼華?千明?」

 そこはに、見渡す限りの森が広がっていた。木々が生い茂り、森の奥は光がみえない程深い。
 しかしこうなってしまっては仕方がないと舞は先ず自身の持ち物を確認する。

「んっと、スマホに、財布、んで財布の中にあったカッター。そんで胸。んー…………ん?胸!?なんでや!」

 舞の胸元には確かな女性の象徴が存在した。しかし舞にとっては今はそれは些細な事だった。

「…まぁ、いい。命が無くなるよりマシだ。まずは、森を抜けないとな。地図もなければコンパスもない。ならやることは一つだな」

 舞は立ち上がりカッターを握りしめながら森の中へと入っていった。
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