もふってちーと!!

でんちむ

文字の大きさ
40 / 43
もふって就職!

◆もふって入学?3

しおりを挟む
 杖を老人に渡すと、それを受け取った老人が杖の感触を確かめながらこちらを見やる。その眼光に一瞬一歩後ずさりしそうになる。

「……あんたたち、いい目をしてるね。中々だよ」

 次の瞬間、老人は柔らかい表情を作って杖をこちらに渡す。

「特別だよ。あたしがいいものを渡してあげよう……と言っても、使えるかどうかはあたしが見極めるものじゃないからね。間違えて死んじまうかもしれないよ」

「……?」

魔杖まじょうっていうのに心当たりがないかい? 過去、幾数千の時間を魔力マナの濃い場所で過ごした杖にはね、意識が宿るんだよ」

 扉の外から見たときの印象とは打って変わって、今では表情をころころと変えている。鋭い眼光で睨みつけてきたと思えば柔らかい表情を作り、柔らかい表情を作ったと思えば今度は妖しく笑う。

 それは、どうにも何を考えているか読み取れない表情で、恐らく舞たちを試しているのだろうとしか考えられない。

 老人はくるりと踵を返し、舞たちに背中を見せるとそのまま店の奥へと進んでいく。その途中、手を上げて付いて来いと言わんばかりのジェスチャーをしたので四人はお互いの顔を見合わせながらついていく。

 店の奥は光が差し込まないために店内よりも更に暗くなっていて足元も覚束ない。まったく見えないというわけではないが、危ないのは確かだ。転ばないように注意しながら歩いて行く。

「……これ、どこまで歩くんですか?」

「もう少しで階段を下りるんだよ。そこから、魔杖まじょうのある部屋に行けるんだ。地下だから少し寒いかもしれないけど、それは我慢しな」

「…はい」

 言われた通り、更に少し歩くと目の前に階段が見えてきた。形状からして螺旋階段だろう。魔杖まじょうのある部屋にたどり着くまでに平衡感覚を失わせようというのだろうか。

 螺旋階段の壁には松明が取り付けられている。そのおかげで先程の廊下よりかは明るく見えるが、どうにも感覚が狂う。徐々に頭がふらついてきて、何故か瞼も重い。それどころか体の節々がミシミシと音を立てている。

「これが、魔杖まじょう魔力マナだよ。相手に効果を及ぼす、ね。どうだい? 辛いだろう?」

「……えぇ、中々に。体が痛いです」

「そうかいそうかい、いやぁ、頑張りな」

 からからと軽快な笑い声をあげる老人。まだ螺旋階段は続いている。その魔杖まじょう魔力マナは、部屋に近づけば近づくほど濃くなるのは当たり前でどんどん負荷が増えていく。

 もうすでに階段を下り始めて十数分は経ったのだろうか、それさえもわからない。平衡感覚と同時に時間間隔も奪われてしまったようだった。

 ずっと同じ景色、同じ景色。そんなものを見ていれば人間は鬱のような精神の低迷状態に陥る。それに加えてなや魔杖まじょうのマイナスの魔力マナの効果。辛くなるのは至極当然の事だった。

 目の前の老人は軽快なフットワークでなおも同じ速度で歩き続ける。それに遅れ始めたのは何十回も螺旋階段を回った後だった。

「……っ。ごめ、も、無理…っ!」

 遂には舞は膝をついて、激しい息切れを起こしている。長い間堪えていたのが祟ったようだった。そんな舞に千明は肩を貸して階段を登り始める。

 幸いにも千明は辛いながらも動けない程ではなかったので担いでそのまま階段を登る。涼華とルイが困ったような表情で千明を見ると千明は言った。

「俺達の事は気にしなくていいよ。行けるなら二人とも行っておいで、俺達は辛いから先に上に行って休んでるから」

 二人は顔を見合わせて頷くと「わかった、気をつけてね」と、千明を労う言葉をかけてから走って階段を降りていく。

 なんとか息を切らしながらも老人に追いつくことができた。後ろをちらりと覗く老人は目を見開いたかのように見えた。だが足は止まらずにむしろ速度を増していく。置いて行かれまいと涼華たちもスピードをあげる。

 そんな地味な攻防が長らく続き、気がついたときには最下部へと到着していた。階段が終わり、目の前には短い終わりがすぐに見える一本の道。そこで老人は振り返り二人の顔を見つめる。

「………たいしたもんだね。まさかついて来られるなんて微塵も思わなかったよ」

「それはそれで酷い言い方ですね…」

 あはは…と笑いながら老人の尖った言葉を受け流す。そしてまた前を向いて足を前に出す。それに習って涼華たちも足を前に出す。

 するとひとつの扉の前で老人は足を止めてその扉と対峙する。見た目からしてとても分厚そうな鉄製の扉がその部屋を固く閉ざしていて、簡単に開きそうにない。

「ちょっと待ってな。今からこの扉を開けるからね」

「えっ、あっ、はい!」

「あっ、ありがとうございます」

 二人は老人に頭を下げる。

 扉の目の前に立った老人は手をかざすと呪文を唱えはじめた。詠唱はとても長く、階段をおりるのと同じくらいの時間がかかった。

「……後は本当にあんだたち次第だよ。そこの部屋に封印されている杖は、双子の魔杖まじょうジェミニ。下手に触れれば魂全部持ってかれるからね、気をつけなさいな」

 心配そうにこちらを老人が見つめる。どれだけ行かせたくないのかがよくわかるぐらいに視線を感じる。あれだけのことを言ったのだ、今更心配なら止めればいいというのに。

「とりあえず、開けなきゃ、だよね」

「うん。私が行こうか?」

「いや、私が行くよ」

『じゃあ、二人で』

 一番早く、争いを生まない方法で決めるとすぐに扉に手を伸ばし、力を込める。ノブを回して押し込むとその扉はゆっくりながら鉄と鉄が擦れ合う音を響かせて開いた。

 奥は松明で照らしてもわからないほどに真っ暗で本当に何も見えない。お陰で魔杖まじょうの位置さえも把握出来無いという自体に陥ってしまった。

「…行こうか」

「そうだね!」

 村を襲われてから一人で夜を過ごしてきたルイにはこの闇は恐怖の対象にはならないらしい。涼華はつばを飲み込み、ゆったりと一歩を踏み出した。

 その姿が扉の中へと吸い込まれていく。完全に全体が扉の奥に消えて老人は未だに心配そうな目で見ている。

「無事だといいんだけどね…」

              ◆

「なんだろう、本当に真っ暗で何も見えないね」

「うん…見た目は大丈夫だったけど、いざ中にはいるとこんなに怖いんだね」

 二人は手を繋ぎ、会話を切らすことなく話し続けている。自然と繋いだ手にお互い力が入ってしまうが、それにさえ気づかない。

「……ひっ!」

「へひゃっ!? な、なにっ!? どうしたの!?」

 突然声を上げた涼華に体をはねさせながら驚くルイ。涼華が言うには突然何かに触られたそうだ。だが、見えないにしろあたりには何もないことくらいは確認できる。

「……なにかいるのかな」

「にゃっ! ちょっと、涼華! そんなところ触らないでよ、今何かいるのか確認してるところなんだから!」

「へ? 私何も触ってないよ?」

「だ、だって涼華しかいないでしょ!?」

「そうは言っても、私の手は……」

 今現在、突然触られた感触を感じた涼華は手は繋いだままでもう片方の手はルイの服の袖を摘んでいる。これでは触りようがない。

『……っ!!』

 今度は二人が同時に何かに触られた気がした。同時に体を跳ねさせる。刹那、背後から誰のものかわからない声が響いた。

「……ふふふ、かわいい…ね……」

『っ、きゃああああ!!』

堪えられなくなった二人はそのまま甲高い声で叫び声を上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...