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第2章

04 同時に

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 とある子供は虐げられていた。

 食べ物を与えてもらえずに、狭い押し入れに押し込められていた。

 外に出る事は叶わない。

 助けを求める事も、どうする事も出来ない状況だった。

 そんな子供にも、義務でチップはつけられていた。

 生まれた時には必ずつけられるそれは、どんな子供にも、例えば学校に行っていない子供でも、病院で生まれたならつけられていたのだった。

 だからその子供は、ずっとそのチップが示す、少し先の未来を眺めていた。

 安全確率を確かめては。

 今日は大丈夫だと。

 幸福確率を確かめては。

 今日も辛いのだと。

 それは安心と絶望を同時に与えるものだった。

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