ナイトメア ~希望の在りか~

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
11 / 32

第10話 希望なき世界

しおりを挟む


 組織の建物を出て美玲らと共に外を歩く。

 廃墟となった街並みをこうしてじっくり眺めるのはこれが最初かもしれない。
 一応、一日前にも歩いては来たのだがその時は状況が状況だったし混乱していた。

「寂しいですね、人の気配もしない。電力も来てない……」

 目に見える物は少なからず、どこかしか壊れたり欠けたり、ヒビが入ったりしている。
 通りを人の姿はなく、信号機は光を失ったままだ。
 本来、音が光が、人があふれているはずの、そんな景色を見てしまうと、さすがに普段あまり感傷的になることのない僕でも、そうなってしまう。

 周囲の悲惨な様子に顔を曇らせている佐座目に、脇を歩いていたアルシェが語りかける。

「十年前に町の人間が一斉にナイトメア化したからね。美玲が説明しただろうから、君も知っていると思うけど、その影響でこんなだよ。おかげで、趣味の映画鑑賞も碌にできないご覧の世界だ」

 軽く肩をすくめて説明する金髪の男はさほど残念そうに見えない。
 とうに諦めてしまって久しいと、そんな感じだろう。

「日本中にばらまかれたナイトメアウイルスのせいで、無菌室にいるような人間以外のほとんどの者が感染してしまった。過度なストレスを受けなければ発症しないと言われていたそれが、あの時はまるで謀った様に一斉に起こってしまった」
「原因は分かってるんですか?」
「何も」

 一応調査はしたんだけどね、と首を振られる。

「こんな状況では楽に過ごせはしないでしょう。他の人達はどこで暮らしているんですか?」

 町からまったく人の気配がしない事に疑問に思う。
 まさか、古代の恐竜でもあるまいし絶滅してしまったわけでもあるまい。

 それは、そうであってほしいというよりも……。
 地表全土を覆いつくす勢いで増え続けた人間達が、そうそういなくなるとは思えなない、という事だ。

「すぐに分かる、着いたぞ」
「ここは、なるほど」

 暗い顔を並べて暗い話をしていたら目的地に着いたようだ。地下鉄の駅の入口を通って地下へと向かう。
 この世界に来た時にも通った場所だ。
 地下に居住場所を移したというわけか。

 中は薄暗く、美玲が小型のランプシェードを取り出して、内部に灯りをともした。

「ナイトメア化しなかった原因はなんでしょうね」
「それも不明……といいたい。だがこんな環境に驚くほど適応できる人間ばかりが残った、不思議な事だがこれだけは言えるな」
「なるほど、ストレス耐性の値が上限値にある者、しいて言えばエージェントの素質がある人ですか」

 ストレスに異常に耐性のある人間はナイトメア化も緩やかで、ある程度の段階までなら自力で抑え込める可能性がある、という話を聞いたことがある。佐座目はそんな場面見たことないが。
 ちなみに兄の耐性は底辺だ。よくエージェントになれたものだと思う。

「抗体を打ってない一般人が耐えた、か……」

 もし、ウイルスの一斉発症に何らかの理由があるのなら、そこらへんに鍵があるのではないかと思う。勘だが。
 だが何にせよ、今の状況で調べることなど不可能だろうが。

「ここだ」

 たどり着いたのは行き当たりだ。
 目の前には分厚い隔壁がある。その脇で立っている見張りの兵士達に挨拶をして通りすぎ、壁面に取り付けられた四角い装置にあるパネルを一つずつ押し、番号を入力していく。

 隔壁三枚、と入力作業が三回。
 佐座目達は約三回足を止めることになった。
 それくらいしないと、とてもこの世界では生き延びてこられなかったのだろう。

 ともかく佐座目達は約数分かけて、人々の居住域へ踏み入れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...