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第10話 希望なき世界
しおりを挟む組織の建物を出て美玲らと共に外を歩く。
廃墟となった街並みをこうしてじっくり眺めるのはこれが最初かもしれない。
一応、一日前にも歩いては来たのだがその時は状況が状況だったし混乱していた。
「寂しいですね、人の気配もしない。電力も来てない……」
目に見える物は少なからず、どこかしか壊れたり欠けたり、ヒビが入ったりしている。
通りを人の姿はなく、信号機は光を失ったままだ。
本来、音が光が、人があふれているはずの、そんな景色を見てしまうと、さすがに普段あまり感傷的になることのない僕でも、そうなってしまう。
周囲の悲惨な様子に顔を曇らせている佐座目に、脇を歩いていたアルシェが語りかける。
「十年前に町の人間が一斉にナイトメア化したからね。美玲が説明しただろうから、君も知っていると思うけど、その影響でこんなだよ。おかげで、趣味の映画鑑賞も碌にできないご覧の世界だ」
軽く肩をすくめて説明する金髪の男はさほど残念そうに見えない。
とうに諦めてしまって久しいと、そんな感じだろう。
「日本中にばらまかれたナイトメアウイルスのせいで、無菌室にいるような人間以外のほとんどの者が感染してしまった。過度なストレスを受けなければ発症しないと言われていたそれが、あの時はまるで謀った様に一斉に起こってしまった」
「原因は分かってるんですか?」
「何も」
一応調査はしたんだけどね、と首を振られる。
「こんな状況では楽に過ごせはしないでしょう。他の人達はどこで暮らしているんですか?」
町からまったく人の気配がしない事に疑問に思う。
まさか、古代の恐竜でもあるまいし絶滅してしまったわけでもあるまい。
それは、そうであってほしいというよりも……。
地表全土を覆いつくす勢いで増え続けた人間達が、そうそういなくなるとは思えなない、という事だ。
「すぐに分かる、着いたぞ」
「ここは、なるほど」
暗い顔を並べて暗い話をしていたら目的地に着いたようだ。地下鉄の駅の入口を通って地下へと向かう。
この世界に来た時にも通った場所だ。
地下に居住場所を移したというわけか。
中は薄暗く、美玲が小型のランプシェードを取り出して、内部に灯りをともした。
「ナイトメア化しなかった原因はなんでしょうね」
「それも不明……といいたい。だがこんな環境に驚くほど適応できる人間ばかりが残った、不思議な事だがこれだけは言えるな」
「なるほど、ストレス耐性の値が上限値にある者、しいて言えばエージェントの素質がある人ですか」
ストレスに異常に耐性のある人間はナイトメア化も緩やかで、ある程度の段階までなら自力で抑え込める可能性がある、という話を聞いたことがある。佐座目はそんな場面見たことないが。
ちなみに兄の耐性は底辺だ。よくエージェントになれたものだと思う。
「抗体を打ってない一般人が耐えた、か……」
もし、ウイルスの一斉発症に何らかの理由があるのなら、そこらへんに鍵があるのではないかと思う。勘だが。
だが何にせよ、今の状況で調べることなど不可能だろうが。
「ここだ」
たどり着いたのは行き当たりだ。
目の前には分厚い隔壁がある。その脇で立っている見張りの兵士達に挨拶をして通りすぎ、壁面に取り付けられた四角い装置にあるパネルを一つずつ押し、番号を入力していく。
隔壁三枚、と入力作業が三回。
佐座目達は約三回足を止めることになった。
それくらいしないと、とてもこの世界では生き延びてこられなかったのだろう。
ともかく佐座目達は約数分かけて、人々の居住域へ踏み入れた。
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