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第13話 コネクト
しおりを挟む兄さんの事と、こちらの事情を話しておいて、これからどうするかを考えねばならない時だった。
遠くの方から、轟音が響いた。
理沙は音がした方へと振り向く。
「まさかナイトメア!? 一体、どこから侵入してきたのよ!?」
「理沙さん!」
確かにこんな世界で、そんな物騒なことが起こる原因はだいたいナイトメアがらみなのだろうが。
脇目もふらず走っていく理沙の後ろ姿に佐座目は焦る。
「……っ! 待て、ディエス」
「やれやれ、今日はお客さんが多いみたいだね」
他の誰かならともかく、彼女を放っておくわけにはいかない。佐座目はその姿を当然のように追いかけた。
走っていった理沙に追いつく。隔壁の内側だが、横の壁に穴が開いているのが見えた。おそらくそこから侵入してきたのだろう。その近くにはナイトメアが立っている。
コウモリのような黒いツバサをはやすその姿を見つめる。
体格は個体差はあるもののおよそそして成人二人分だ。
皮膚は頑丈でゴツゴツとした浅黒い色をしていて、これもまた個体差があるのだが、頭部にはツノが生えている、ここにいる個体は一本だ。
そして、そいつは赤い目を光らせて、周囲を見回している。
あたりには武装した人間がいて、連携を取りながら奴を取り囲んでいた。
彼らはどういう部類の人間なのだろうか。
「あんたたち化物はどこまでも……、この……っ」
その動きに合わせて理沙が、どこからか銀色の鞭を取り出し、そして自身の能力を行使する。
同時、ナイトメアが動きを止めた。
理沙の能力、対象の時をわずかに止める能力だ。
だが、彼女の攻撃はお世辞にも効いているとは言えない。
それも当然だ、彼女は組織でも実力はかなり下、落ちこぼれと評される方なのだから。
「理沙さん、下がってください!」
「あんたその姿で、戦えんの!?」
「やってみます!!」
というよりやるしかない。
もたもたしてたら彼女が死んでしまう。
それは困る。というか嫌だ。
「借ります!」
理沙の動きに合わせて援護攻撃をしている周囲の人々。
訓練された身のこなしを見て、エージェントも数人交ざっているようだが皆、異能が使えない様だった。
佐座目はその周囲にいた人の一人から銃を奪う。
できるだろうか。……なんて迷っている暇はない。
能力を発動させる。
「コネクト!」
手にしていたのは銃。
情報が頭に入ってくる。
その道具の説明を使い方を、それらの情報が一瞬で脳裏を駆け巡った。
佐座目の異能は、手に取った物の取り扱い説明書入手と解読だ。
手にした銃を向ける。
使った事のあるものだ。
「理沙さん、離れてください!」
「ちゃんと当てなさいよ!」
巻き込まないように声をかけ、彼女が離脱するのを見届けてから、引き金を引く。
ダンッ ダンッ ダンッ
息付く暇もなく、連続で。
リズミカルに、すべて的確な角度で、タイミングで、急所へと弾を打ち込む。
皮膚の薄い場所、関節の場所、主要な血管のある場所、大切な器官のある場所。
それらを全てただひたすら正確に打ち抜いていく。
ほどなくしてナイトメアは倒れた。
追いついた美玲とアルシェがあっけにとられたような顔をしてみせる。
「これは、お前が……?」
「これは良い拾いものをしたね」
「理沙さん、怪我はしてないですか」
「そんなの見ればわかるじゃない」
佐座目は最小限の手数で脅威を排除したことを誇るでもなく、目の前の少女の安否を気遣った。
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